【レビュー】YAMAHA CG182SFはコスパ最高のフラメンコギター。初ガットギターはコレで決まり

安いのに音が良いギターに出会ってしまった。これはちょっとスゴいぞと思ったので、記事を書いてみます。

YAMAHA CG182SFとは?

YAMAHA CG182SFは、ヤマハから発売されているフラメンコギター(ガットギター)だ。ユーザーが求めやすい価格帯の製品でありながら、抜群のクオリティ誇る一本だ。

デモ音源

参考までに、簡単なスパニッシュ風のデモ楽曲を作ってみた。Lchの指弾きのバッキングとRchのリード、いずれもYAMAHA CG182SFだ。

  • マイク:Neumann KM184
  • オーディオインターフェイス:RME Fireface UCX II

という機材で録音している。以前の記事で、「アコギ録音にはKM184がベスト」的なことを書いたが、ガットギターの録音においても、KM184はうってつけだと感じた。

フラメンコギター(ガットギター)とは?

フラメンコギターは、ガットギター(ナイロンギター)の一種だ。そこで、先にガットギターについて説明しておこう。

普通のアコースティックギターには、鉄製の弦が張られている。ストロークすると、「シャリーン」という音が出てくれる。

一方で、ガットギターにはナイロン製の弦が張られている。ストロークすると、「ポローン」という、温かみのある音が出てくれる。

ガットギターはクラシックギター的な楽曲の他にも、ボサノバやフラメンコといった音楽でよく使われる。ポップスでも、スパニッシュ/ブラジリアンの要素を持つ音楽の場合、ガットギターはしばし登場する。

具体例としては、

といった作品で聴こえてくるギターが、ガットギターだ。

フラメンコギターとクラシックギターの違い

では、フラメンコギターとクラシックギターでは、一体何が違うのか?結論としては、使われている木材が違うため、音の傾向が少し違うというのが、主な相違点だ。それ以外の要素は、だいたい一緒。

以下に各々の違いをまとめてみたので、ご参考までに。

フラメンコギター

フラメンコギターには次のような特徴がある。

  • ボディトップの木材は、たいてい「スプルース」
  • サイド&バックの木材は「シープレス」。これにより音が明るくなる
  • クラシックギターよりも明るい音質
  • 弦高はクラシックギターよりも低め(アコギよりは高い)
  • ボディに「ゴルペ板」が張ってある。※ボディを叩くような演奏から、木材を保護するため

クラシックギター

クラシックギターには次のような特徴がある。

  • ボディトップの木材は「シダー」または「スプルース」
  • サイド&バックの木材は「ローズウッド」や「マホガニー」
  • 深みのある音質。独奏に向いている
  • 弦高はフラメンコギターよりも高め

YAMAHA CG182SFの良いところ

フラメンコギターの解説が終わったところで、話をYAMAHA CG182SFに戻す。ここではこのギターの良いところを紹介してみたい。

1. 安いのに音が良い

CG182SFは、通販で購入すれば、5万円を切る価格で入手できるギターだ。初めてガットギターを買う人にとっても、求めやすい商品。

値段の次に気になるのが、音質だろう。当初僕は、「値段が安いんだから音もそれなりだろう」などと考えていた。しかし、その考えは見事に打ち砕かれることになる。

楽器屋に行って、3本のギターを試奏した。どれもヤマハ製だ。

  • YAMAHA NCX3(定価115,500円:オール単板のエレガット)
  • YAMAHA GC22S(定価110,000円:オール単板のクラシックギター)
  • YAMAHA CG182SF(定価55,000円:今回のフラメンコギター)

これら3つを試奏して比較したところ、最も印象が良かったのはCG182SFだったのだ。一番安いのに。

この結果には正直驚いた。CG182SFはトップのみ単板になっている(=1枚の板から作られている)けど、サイドとバックは合板だ。音のクオリティでは、オール単板のギターにはかなうわけないと思っていたのだ。

だけど、自分の求める音を模索するにあたって、

  • オケの中でもちゃんと抜けてくれる
  • ローミッドがモッサリしない

というポイントを重視した結果、「CG182SFが最も良い」という結論に達した。このフラメンコギターCG182SFは音が明るく、高域の抜けが良い。ドラムやベースが入っているオケの中で鳴らすのであれば、低域がモタ付かない分、他のギターよりも適任だと感じた。

ひとことでいうと、「ポップス・ボサノバ・ラテン系の音楽で使うなら、CG182SFの方がいいよ!」という話だ。

もっとも、純粋なクラシックギター曲(例えば「 アルハンブラの思い出」等)の独奏を行うのであれば、おそらくは11万円のクラシックギターのほうが良い結果になると思う。全て単板で作られていることによる、深みのある響きも、また魅力的だと感じた。

CG182SFはプロの曲で使えるか?

プロのギタリストの方がどういう感想を抱くかは分からないが、クリエイター目線で考えるならば、商用の楽曲制作でも余裕で使えると感じた。僕は1~2万円程度のガットギター音源(VST音源)も所有しているが、CG182SFを自分で演奏したほうが、断然クオリティの高いギタートラックが得られると感じている。

ピッキングの強さ・ピックのアングル・ピッキングする位置・弦に触れたときのパーカッシブな音。生演奏の持つこれらの要素は、打ち込みだと完全には再現するのが難しい。現状は生と打ち込みの間に、大きなクオリティの差があると感じている。

なお、ギターを録音で使う場合、マイクやマイクプリも重要。録音を考えている人は、そちらも併せて検討すると良い。

アコギを録音するマイクはどれがいいのか?徹底比較&考察

2. 作りがしっかりしている

CG182SFは安価ながら、作りがしっかりしているギターだ。さすがはヤマハだと感じさせてくれる一本。ギター本体の作りについて、気づいたことをまとめてみる。

オクターブピッチは完璧

CG182SFは、オクターブピッチが完璧だ(少なくとも僕の個体は)。1弦から6弦、いずれも、12フレットのハーモニクス音と実音にズレがない。

アコースティックギターやガットギターは、エレキギターとは違って、オクターブ調整が簡単にはできない。オクターブピッチがズレていると結構面倒なのだが、特に心配はいらなさそうだ。

デッドポイントも無い

デッドポイントは特に無い。どの弦、どのフレットでも、バランスの良い音を奏でられる印象だ。

弾きやすい弦高

12フレット位置での弦高は、6弦が約3.2mm、1弦が約2.5mmだ。

同じヤマハのギターでも、クラシックギターよりフラメンコギターのほうが弦高が低く、演奏しやすい。これは試奏して比較してみると分かるだろう。

ネックの反りもちょうど良い

1フレットと最終フレットを押さえた状態で、12フレットにおけるフレットと弦の間隔を計測すると、6弦で0.6~0.7mm程度。これはわずかに順反りの状態だといえる。しかし、ガットギターは一般的に、わずかな順反りがベストだと考えられているので問題ない。演奏も快適に行えている。

※なお、ヤマハの公式サイトを見ても、「やや順反り」が適正な状態だと考えられているようだ。

ネックは、完全な直線状態よりも若干順反り気味の状態のほうがよいとされています。

出典:【ギター全般】ネックの反り調整について - ヤマハ

フレットの仕上げも問題なし

レビュー記事によると、「フレットの仕上げがイマイチ」などの評価もあるようだが、僕が入手した個体では、特に問題はなさそう。少なくとも、ネックをつかんだ状態で素早くグリッサンドのように動かしても、手を切るようなことはない。

3. 通販で購入しやすい

  • YAMAHAのギターなので、個体差が少ない
  • 色々なショップが取り扱っている
  • そこまで高価ではない

これら複数の理由により、CG182SFは通販で気軽に購入することができる。Amazonでも買えるし、サウンドハウスでも買える。

このCG182SF、楽器屋だと置いてある店が少ない。ヤマハの実店舗に行けば置いてあるけど、近所にお店が無いよという人もいるはず。通販で購入できるというのは、嬉しいポイントだ。

なぜ安いのに音が良いのか?考察してみる

YAMAHA CG182SFの値段の安さと、音のクオリティの高さのギャップには、少し驚いている。ここではコストパフォーマンスの高さの理由を考察してみたい。

考察1:工場で作られているから

そもそも、高価なギターはなぜ値段が高いのかを考えてみる。あらゆるモノづくりにおいて、最も高く付くのは人件費だ。高いギターは、ギター職人の手によって、時間を掛けて調整されている。「職人さんに時間を割いてもらった時間的コスト」が、ギター本体の価格に反映されているのだ。

一方で、このCG182SFは工場で作られている。ソースはフラメンコギター奏者の沖仁氏×設計者の対談記事。

このギターは工場で作られているんですよね? 音のクオリティは手工ギターに近いレベルに達していると感じます。

出典:ヤマハ | 沖仁氏×ヤマハギター設計者 対談 - アーティスト

工場で大量生産すれば、製品の価格は低く抑えることができる。これは納得の行く論理だ。

さらに、このCG182SFには、サウンドホール内のシールに「Made in China」の記載がある。

「中国製」と聞いて、良い印象を持たない世代の方もいるかもしれないが、「中国製だから低品質」というのはもはや昔の話。

製造拠点を中国に移すことにより、製造を問題なくこなしつつ、人件費も抑えることができる。こういったヤマハの企業努力(製造上の工夫)が、ギター本体の品質の高さに反映されているのではないだろうか。

考察2:ピックアップが付いていないから

CG182SFには、ピックアップが付いていない。ピックアップは、仮に単体で買うとすると、1万円くらいはする。CG182SFではピックアップのコストが浮いた分、純粋にギター本体の音の良さにつながっている可能性がある。

そもそもアコースティックな楽器は、基本的にマイクで拾ったほうが、良い音で録音できる。録音を中心にギターを使う人にとっては、ピックアップが付いていないというCG182SFの仕様は、ある意味都合がよいのだ。

ただし、ライブで演奏を考えている人は注意。ピックアップ無しのギターに後からピックアップを付けるのは、ガットギターの場合は面倒だ。購入前には気をつけよう。

まとめ

実売5万円を切る価格で、このクオリティのガットギターが手に入るのはすごいことだ。国産のギターなので、為替の影響で値上げが起きにくいというのも、地味にありがたいポイント。

バーチャルインストゥルメントの世界では英語圏のメーカーの躍進が目立つ昨今だが、本物の楽器に関しては、依然として国内メーカーの強さが光る。