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【レビュー】Vienna MIR Pro 3Dはドライなストリングスに必須!映画音楽クオリティの最強リバーブです

Vienna MIR Pro 3Dは、コンボリューションリバーブの技術を応用した、立体的な空間設計が可能なリバーブ・ツールだ。従来のリバーブプラグインを超えた、リアルな残響設定が可能。

この記事では、実際の使用感を踏まえ、具体的なメリットや活用法、RoomPackの選び方などを徹底解説していく。デモ音源を交えながら、そのすごさが伝わるよう工夫してみたので、ぜひ最後まで読んでみてください。



VIENNA MIR PRO 3D | SONICWIRE(国内代理店サイト)

デモ音源

Vienna MIR Pro 3Dはリアルな残響を得られるスゴいプラグインだ。しかし、VSLの公式サイトにアップされているデモ音源だと、Vienna MIR Pro 3Dをオフにした状態を聴くことができない。

そのため、イマイチこのプラグインのポテンシャルの高さが理解されていないのでは……?と思ってしまった。

そこで今回、ドライな(=残響成分の少ない)ストリングス音源であるNative Instruments Session Strings Pro 2(※紹介記事)を用いて、簡単なデモ音源を作ってみた。

※作曲は筆者が行っています。

デモ音源は、バージョン違いの4種類を用意した。

  1. DAW上でパンニングしたもの。リバーブは無し
  2. DAWでパンニングして、センドでリバーブを掛けたもの
  3. Vienna MIR Pro 3D上でパンニングと残響付けを行ったもの
  4. 音源3の状態から「Dry/Wet Handling」の設定を「SCORING 」→「POP」に変えたもの

さて、これら4つの音源の解説と試聴をしていく。ストリングスの演奏内容はすべて同じで、1stバイオリン・2ndバイオリン・ビオラ・チェロという4声で構成されている。ラウンドロビンによる差異をなくすため、すべてオーディオ化してからプラグインを掛けている。

まずはDAWでパンニングしただけの「音源1」を用意してみた。


ホールで聴いているような響きには、およそほど遠い音だ。まだリバーブも掛けていないし、こんなものだろう。

上記音源に対して、センドでリバーブを掛けるとこうなる(音源2)。


さっきよりも良い感じになっている。ちなみに使っているリバーブはLiquidSonics IllusionとCinematic Roomsだ(※軽い紹介記事)。このように、DAW上でパンニングした状態で、センドでリバーブを掛けるというのが、ドライなストリングスにおける音作りの一般的な流れだ。

では、このSSP2というストリングス音源にVienna MIR Pro 3Dを掛けると、一体どうなるか?

世界的に有名なスコアリング・ステージである「Berlin Teldex Studio Aufnahmesaal - Wide」を選択し、一般的なストリングス・セクションの席順になるように、左から順番にVn1、Vn2、Va、Vcと並べてみる。

「Dry/Wet Handling」は「SCORING 」に設定(※設定項目の詳細は後述)。

さて、Vienna MIR Pro 3Dを使ってパンニングと残響付けを行うと、このような音になる(★音源3)。


※先ほどのセンドのリバーブはオフにしている。残響成分もMIR Pro 3Dのみが担っている形だ。

DAWでパンニングと残響付けを行うのと比べて、遥かに自然な定位感と奥行きが得られていることが分かるはずだ。

BGMや劇伴音楽においてストリングスを鳴らす場合、このくらい音に距離感があったほうが適切だ。ポップスのオケだともっとドライなほうが良い場合もあるが、その場合は、Dry/Wet Handlingを「POP」にに変えてやればいい。

「Dry/Wet Handling」を「POP 」に変えるとこうなる(音源4)。


「ドライ音+センドのリバーブ」という手法を使った音源2と比べても、音の定位感はより自然だと感じる。

サウンドの評価

音源2のようにDAWでパンニングしただけだと、いくらLiquidSonicsの上質なリバーブを掛けても、Vn1の音が左から聴こえてきて、定位感をハッキリと感じてしまいやすい(これはこれでアリだけど)。普通にミキサー上でパンニングした音、という感じだ。

一方でVienna MIR Pro 3Dを使って、定位と残響付けを作った音源3では、まるでコンサートに足を運んでホールでストリングスの音を聴いている感覚を味わえるだろう。



Vienna MIR Pro 3Dのスゴいところ

1. 極めて自然な空間定位

Vienna MIR Pro 3Dと似たようなプラグインには、2CAudio Precedenceparallax-audio Virtual Sound Stage 2.0などがある。

僕はPrecedenceを数年間愛用していた。購入前後で気になっていたのは、やはりMIR Pro 3Dとの品質差だ。

結論としては、Vienna MIR Pro 3Dが生み出す定位や残響の品質は、段違いに素晴らしいものだと感じている。Precedenceはおそらくアルゴリズミックに残響を生成していると思われる。一方でVienna MIR Pro 3Dは、実際のホールやステージの響きをキャプチャーしたIRを使っている。そのため、弦楽器や管楽器の響きを作る上では特に効果的なのだと思われる。

Precedenceも良いプラグインでしたが、開発の都合でアップデートがストップしてしまったので、将来性に期待できないのが惜しいところです。

2. グラフィカルに定位/奥行きを設定可能

Vienna MIR Pro 3DはDAW上ではプラグインとして表示されるが、Vienna MIR Pro 3Dをインサートするやいなや、別途専用のウィンドウが開く。そして、そちらのVienna MIR Pro 3Dの専用ウィンドウで設定を行っていくことになる。

Vienna MIR Pro 3Dの専用ウィンドウ上で、楽器を3D空間に配置していくことができる。使用時は、指揮者に見立てたマイクに対する「定位」と「距離」を設定していくことになる(一応「高さ」も設定可能)。マウスで楽器のアイコンをドラッグするだけで、平面上を自由に移動させることができる。位置に応じて、定位や残響の付き方が変化してくれる。

余談だけど、各ポジションのプレイヤーが全員メインマイクの方向を向くような設定「Auto-Aim At Main Mic」もある。

なかなか便利な機能で、僕も今回のデモ音源を作るときに、この機能を使っている。

3. ポップ/劇伴/クラシック向けの残響を一発で指定可能

「Dry/Wet Handling」という項目において設定を切り替えることで、残響の分量を一発で切り替えることができる。

設定は3つ用意されている。

  1. CLASSICAL:フルオーケストラのような遠い音像
  2. SCORING:映画音楽のような、適度に距離のある音像
  3. POP:ポピュラー音楽のような、近めの音像

パンニングを変えることなく、音の奥行きだけを一発で調整できるので、便利。

Dry/Wetの分量は、別途「Global Dry/Wet Offset」のスライダーをいじることで微調整が可能。

設定を細かく調整したいときでも安心だ。

4. 著名なスコアリング・ステージの残響が得られる

詳細は後述するが、MIR Pro 3Dで残響を得るために必要な「RoomPack」のうち、RoomPack 2を購入すると、ドイツのベルリンにある世界的に有名な録音スタジオ「Teldex Studio」の残響を得ることができる。

市販のオーケストラ音源の中には、収録がこのスタジオで行われたものもあるほどだ(Orchestral Tools製品など)。

どれを買えばいいの?

Vienna MIR Pro 3Dのフル版 or (24)、どっち?

Vienna MIR Pro 3Dには2つのバージョンがある。

  1. Vienna MIR Pro 3D:チャンネル数無制限のフル版
  2. Vienna MIR Pro 3D (24):ステレオ24chまでの機能制限版

個人的には、Vienna MIR Pro 3D (24)で十分だと考える。

4声のストリングスセクションに掛けるだけなら4チャンネルしか消費しないんだし、フルオケを作るのでもない限り、チャンネル数を持て余すことになるだろう。

仮にフルオケを作るにしたって、一部をバスでまとめるなどすれば、24Chでやりくりすることは十分可能。もしチャンネルが足りなくて困ったら、そのときにアップグレードすればいい。

RoomPackはどれがいいの?

解説が遅れてしまったが、実はVienna MIR Pro 3Dはソフト単体では使えない。RoomPackというIRのデータ集と合わせて使うことで、初めて残響を得ることができる。RoomPackの中には、ホールの響きを持つもの、有名なスコアリングステージの響きを持つものなど色々あり、ラインナップは複数存在する。

※RoomPackの一覧は次のページで紹介されている:MIR 3D RoomPack Bundle - Vienna Symphonic Library

では、どれを選べばいいの?という話。特別なこだわりがない限り、RoomPack 2の「Studios & Stages」を選べばOK。ポピュラー音楽/劇伴音楽での使用に適した、スコアリング・ステージや、スタジオの響きが入っているからだ。

最も需要があると思われるTeldex Studioの響きが収録されているもRoomPack 2だ。ちなみにビッグバンドの録音に使われたという「ORF Studio」の響きも入っている。※ブラスセクションの残響を付けるときには、僕はコレを使っている。

「残響が多すぎて風呂になるのは困るけど、リアルな空間が欲しい」というニーズを満たす上で、RoomPack 2はうってつけ。VSLの中の人も、「1つ選ぶならRoomPack 2がオススメ」と話しているのを見かけた。2を選んでおけば間違いないと思う。

なお、当製品を導入する際の仕組みについて、ここで話しておこう。実は、Vienna MIR Pro 3Dの本体を購入するときに、RoomPackが1つタダでもらえるというシステムになっている

One MIR 3D RoomPack of your choice free!

出典:https://www.vsl.co.at/products/software/vienna-mir-pro-3d

RoomPackのうち最も高価なのは2なので、そういう意味でも最初にゲットすべきは2かなと思う。

ちなみに、次点ではRoomPack 1が良さそう。オーケストラ音楽にふさわしい、ホールの響きが得られるからだ。



まとめ

2010年前後のストリングス音源といえば、VSL(Vienna Symphonic Library)やLASSなど、ドライなサウンドがラインナップの中心だった。当時は「ドライな音源にリバーブを掛けて、頑張って何とかしましょうね」という時代だった。

その後SpitfireやCinematic Studio Seriesといったメーカーのオーケストラ系音源が台頭し、「残響音を含めてライブラリを録音する」という手法が主流になっていった。

だけどこのVienna MIR Pro 3Dがあれば、ViennaやLASS、NI Session Strings Pro 2のようなドライなストリングス音源であっても、映画音楽のストリングスのように、豊かな残響を持つフワッとしたサウンドに仕上げることが出てきてしまうわけだ。

もしあなたが「有名なドライ系ストリングス音源を持っているけど、なぜかプロの人みたいなサウンドにならない……」と悩んでいるのであれば、ブラックフライデーのセールの直前にでもVienna MIR Pro 3Dのデモを試してみて、購入を検討するのがいいだろう。

デモを試す方法

Vienna MIR Pro 3Dは、購入前に試すことが可能。その手順だが、

  1. VSLのサイトにアクセスする。アカウントがなければ作っておく。
  2. Vienna MIR Pro 3DとRoomPackのページでFree Trialを押して、それぞれのデモ版(無料)をカートに入れて、購入する。
  3. iLokにデモライセンスを登録して、製品を試用する。

このようにして、Vienna MIR Pro 3Dを試用することが可能だ。

Vienna MIR Pro 3D