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soothe2とは
oeksound soothe2は、「帯域のなかで突発的に飛び出たピーク」を検出し、抑制してくれるプラグインだ。
何がそんなにすごいの?
通常、不快なピークを処理するためには、EQでカット処理を行う必要がある。
具体的には、ピーク部分を削るように、鋭いカーブのEQを適用する。俗にいう「サージカルEQ」を実施する。
soothe2では、こういったサージカルEQの作業を自動的に行うことが出来る。
もちろん、飛び出た特定の周波数を自動的に削るという作業は、従来のダイナミックEQでも実現可能だ。しかしsoothe2は、従来のダイナミックEQにはない、3つのユニークな長所を持っている。
- 周波数を指定しなくても、カットすべき周波数ポイントを自動的に検出してくれる。
- カット可能なバンド数は無制限となっている。※例えば「だいたい300Hzあたり」にカットが掛かるように設定すれば、280Hzのピーク・302Hzのピーク・294Hzのピーク等々、すべてを削ってくれる。
- 音質が自然になるように、カットポイントの整数倍の帯域もカットしてくれる。※仮に220Hzにカットが掛かる場合、その倍音成分である440Hz・880Hz等も同時に軽くカットしてくれる。
soothe2が持つこれらの3つの特長は、これまで非常に面倒だったピーク処理を、格段に楽なものにしてくれる。
よくある困った状況の例
ミックス作業をしていると、時間軸に応じて突発的なピークが発生してしまい、その対処に苦労するというケースはよくある。
例として、宅録のアコギ(リードギター)のEQ処理をイメージしてみてほしい。
- サビの「ドレミファソ」という低音域のフレーズで、「ミ」の部分だけ、低域が膨らんで「モワッ」としている。※俗にいう「ピークが発生している」状態。
- そこで、「ミ」の基音である165Hzを、細いQのEQで7dBほどカットした。これで「ドレミファソ」のフレーズは、自然に聴こえるようになった。
- だけど、曲中の他の大部分の箇所は、特に低域の膨らみは無い。先ほどの「165Hzを7dBカットしたEQ」のせいで、全体的に音が細く聴こえてしまうようになった。
このように、曲中のある一箇所のみにピークが発生している場合、トラック全体にサージカルEQを施すと音が細くなってしまうことがある。これがサージカルEQの問題点だ。
もっとも今回の例のように、1箇所だけサージカルEQを適用する程度なら、音質劣化は気にならないケースが大半だろう。だけど、カットポイントが増えていくと、どうしても音は細くなって行ってしまうのだ。
従来の対策方法とその課題点
このような音質劣化を避けるため、従来は、次のいずれかの手法を用いるのが通例だった。
- 「ダイナミックEQ」を使う
- 問題のある箇所のみを別のトラックに移して、サージカルEQを施す
しかし、いずれの手法にも一長一短がある。
ダイナミックEQは、検出の精度が微妙だったり、カットが掛かるタイミング次第では音が不自然になったりすることがある。また、カットすべきバンド数が増えると、EQ画面の視認性も悪くなって行く。
「トラック分け&サージカルEQ」は、最も自然な音質を維持できる処理方法だ。しかし、どうしてもトラック数が増えてしまいがち。ピークを削りたい箇所が曲中に50箇所にある場合、トラックも50個に分ける必要が出てきてしまう。
soothe2なら、これら従来の手法が持っている課題点を、見事にクリアすることが可能だ。
実際に使ってみた感想:ここ数年で一番の衝撃
僕はsoothe2を購入する直前、アコギのストロークが印象的な、ギターインストの曲を作っていた。曲は無事に完成したのだが、ミックス作業は難航していた。時間軸の中で突発的に登場する、ピークのカットの処理をどうすべきか悩んでいたのだ。
はじめはサージカルEQでカットしたり、EQにオートメーションを描いたりして、何時間もかけて処理していた。だけど面倒だし、EQをたくさん掛けることで、音も劣化して行きがちだった。
そんな中、soothe2に出会った。「便利なプラグインもあるものだなぁ」と思いながら、さほど期待せずにデモを試してみる。すると、想像以上にスゴいクオリティであることが分かった。
- 設定が簡単
- なのに人力でEQを緻密に設定するよりも音がずっと自然
ここ2~3年で試したプラグインの中で、間違いなく一番の衝撃だった。ちょっとこのクオリティは、soothe2無しで作るのは無理。どう考えても。腕の良いエンジニアが時間を掛けまくれば、もしかしたら可能なのかもしれないけど。
勢い余って、直近で作ったアコギ楽曲を2曲、ミックスし直してしまった。soothe2を使ったミックスのほうが、2mixの質感・音圧・ギター自体のトーン、いずれも圧倒的に良い。サージカルEQで大量に処理した、今までの数時間は何だったんだ……と苦笑してしまったほどだ。
海外のプロエンジニアも評価している
soothe2の公式サイトには、WeezerやPanic at the Discoといった著名なアーティストを手掛けているエンジニアのコメントが寄せられている。
Scott Chesak(Panic At The Disco, Weezer, The All-American Rejects)
Acoustic pianos often create unwanted resonances that are difficult to tame. I used to spend hours fine tuning surgical EQs to even out the frequencies.
とのことだ。
宅録環境の場合、部屋の音響的なトリートメントが不完全なため、突発的なピークも出やすい。だけど、プロスタジオにおけるレコーディングでさえ、言及されているようなピーク問題は発生するということだ。
僕もはじめは録音や演奏、あるいは部屋が悪いのかと考えていた。だけどScott氏のこのコメントを読んで、安心して宅録素材と向き合えるようになった。
おわりに
僕はアコギのピーク対策に買ったが、soothe2は生演奏/生楽器のトラック全般に対して、便利に活用して行けると思う。
最も活躍が期待されるのが、宅録のボーカル素材のピーク処理の場面ではないだろうか。プロスタジオではなく、自宅で録音されたボーカルを取り扱うプロジェクトは、昔と比べてずっと増えている。宅録素材はどうしてもピークが出てしまいがちなので、soothe2を導入することで、ミックス作業が捗るようになる可能性も高い。
soothe2は、プラグインエフェクトであることを考えると、少し高価な部類の製品かもしれない。だけど、「soothe2無しで作業をすることで奪われる時間」のことを想えば、むしろ値段は安すぎると感じるほどだ。
ピーク処理に悩んでいる人がいれば、ぜひ一度デモを試してみることをオススメします。