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DAWに最適な液晶ディスプレイはどれか?オススメは断然WQHDの32インチです【DTM】

1日の大半を音楽制作に費やす僕が、DAW作業に最適な液晶ディスプレイについて書きます。作業効率に関わってくる部分なので、適切に選びたいところですね。

考えるべきこと

1枚置き vs 2~3枚置き

DAWで作業をする場合、作業領域が広いほうが嬉しいことも多い。そこで、まずはディスプレイを1枚の環境にするか、それともデュアル(or トリプル)ディスプレイにするかを考える必要がある。

1枚のディスプレイで作業をする場合、単純にディスプレイの解像度が高ければ作業領域が広くなる。

ディスプレイを2枚以上使う場合は、それだけで広い作業領域を得ることができる。

解像度と画面サイズ

ディスプレイの解像度を考える。現在最も普及している解像度はフルHD(1920x1080)だ。また、フルHDの解像度に適した画面サイズは、24インチ程度だろう。

※実際、24インチのフルHDのディスプレイは最もラインナップが豊富。

そこで、この「フルHDの24インチ」のディスプレイを基準に、DTMで使うディスプレイを考えていくとよい。



結論:WQHDの32インチが最適

先に結論を言ってしまおう。WQHD(2560x1440)の32インチを1枚で使うのが断然オススメ(厳密には31.5インチのことが多いが)。

MIDIの打ち込みやエディット、プラグイン操作、録音、ミックス、譜面の確認など、多くの作業で快適に使うことができるからだ。

以下、その根拠について書いていく。

WQHDの32インチが最高な6つの理由

1. ディスプレイは1枚で完結させたほうが快適

個人的に、デュアルディスプレイはオススメしない。ディスプレイに繋ぎ目が出てしまうので、見ていて快適じゃないからだ。

それにデュアルディスプレイにする場合、一般的な16:9のワイドディスプレイを使う前提だと、どのように設置しても不都合が出てくる。

  • 左右に並べる → 幅を取りすぎ → モニタースピーカーの設置場所に困る
  • 上下に並べる → 上のディスプレイは見上げる必要が出てくる → 首が疲れる

ディスプレイ1枚では実現できないような広い表示領域が必要な場合は別だが、基本的には「高解像度ディスプレイの1枚置き」を前提に考えていくのがよい。

2. 解像度が高いと作業効率が断然高くなる

  • トラック一覧
  • ピアノロール
  • プラグイン

DAW作業では、このようなウィンドウを切り替えていく必要がある。また、複数のウィンドウを同時に表示したくなるケースも多い。したがって、ディスプレイの解像度が高ければ作業効率が上がるのは明白だ。

各々のウィンドウについても、解像度が高いことの恩恵は多い。以下で詳細を掘り下げていく。

トラック一覧画面で便利

解像度が高ければ一度に多くのトラックを俯瞰できるため、より音楽の全体構造をを把握しやすい。また、解像度が高ければスクロールや拡大/縮小といった操作の頻度を減らすことができる。キー操作の回数が減れば疲労も軽減できるし、効率的な作業にもつながっていく。

ピアノロール画面で便利

例えばストリングスの打ち込み作業を行う場合、MIDI CCを細かく描いたり、複数のパートを同時に表示させたりすることが多い。「1stバイオリン~チェロまでの4パートのMIDIノートを同時に表示させつつ、そのうちの1パートのMIDI CCやベロシティを表示させる」みたいなことも、WQHD程度の解像度があれば快適に行うことができる 。

WQHDの解像度にて、ピアノロールを全画面表示した状態の画像(をトリミングしたもの)

特に「縦の解像度が高い」というのは非常に助かるポイントだ。ストリングスは4~5オクターブ程度の音域に渡って音が配置されるし、おまけにCCを表示させる分、縦の解像度を消費してしまう。フルHDだとどうしても縦が足りないと感じることが多いが、WQHDだと余裕がある。

ストリングスに限らず、複数パートのMIDIを同時に表示させることが多い人にとっては、ディスプレイの解像度の高さが作業効率に大きく影響してくるだろう(一度に俯瞰できるのと、何度もスクロールしなきゃ確認できないのとでは大違い)。フルオーケストラの打ち込みをするような人にとっては、なおさら重要な要素となるはずだ。

プラグイン画面で便利

最近のプラグインの中には、ウィンドウが大きいものも多い。プラグインが進化している分、表示させるべき項目も増えているからだろう。

Omnisphere 2みたいにGUIの中に複数のカラムがあったりすると、ウィンドウも大きくなりがち。狭い解像度のディスプレイでは、1つのプラグインが画面の大部分を占めてしまうようなこともある。そうなってくると、やはりプラグインの切り替え操作を多く行う必要が出てくるので、その分作業効率は落ちてしまう。

他にも、Melodyneでピッチ補正をするときなどは、縦・横ともに解像度が高いと作業が非常にはかどる。

  • 縦幅が広いと → ピッチの微調整がやりやすい。
  • 横幅が広いと → リズムの微調整がやりやすい。また、より長い範囲を見渡せる分、スクロール操作の回数を減らせる。

歌入りのデモを作るような作曲家にとっては、メリットも大きいだろう。

3. ドットピッチ(≒文字の大きさ)が適切

WQHDの解像度の場合、ディスプレイを快適に見ることができる画面サイズの目安は、およそ32インチ程度となる。理由は、ドットピッチが適切な大きさになっているからだ。

MEMO
「ドットピッチ」とは、液晶の1つのドットの大きさのことだ。ドットピッチが小さいと、画面が高精細になる反面、文字が小さく読みづらくなることもある。

WQHDの32インチディスプレイの場合、ドットピッチは0.277mm。これは普及モデルであるフルHDの24インチと同じドットピッチなので、ディスプレイを視認する上で適切な大きさだといえるだろう。

もちろん、適切なドットピッチは人によって変わってくるだろうし、WQHDの27インチ程度で十分だと感じる人もいるかもしれない。ただ、NI KONTAKTのように文字が小さいプラグインも多い。やはりDAW環境では、ドットピッチはある程度大きいほうがいいと僕は考えている。

4. A4サイズのPDF譜面も快適に読める

WQHDの32インチのディスプレイなら、A4譜面の表示も問題ない。見開きで2ページ分、きちんと表示できる。僕は以前、26インチのWUXGA(縦の解像度は1200ピクセル)ディスプレイを使っていたが、当時はA4の譜面ファイルを表示させた場合の視認性はイマイチだと感じていた。

WQHDの32インチディスプレイを導入してからは、紙の譜面と比べても見劣りすることなく、ディスプレイ上で譜面を確認できるようになった。おかげで譜面を印刷する頻度も減り、ペーパーレス化の促進という嬉しい副産物も生まれた。

5. モニター環境への影響もそこまで大きくない

音楽制作の環境にディスプレイがあると、スピーカーからの音を反射したり、共鳴したりしてしまう。これは音響的には好ましくない。音響的なことを考えた場合、ディスプレイは小さいほうがいい。むしろディスプレイなんて無いほうがいい。

だけどそういうわけには行かないので、妥協点を探すことになるのだ。32インチ程度であれば、スピーカーからの出音に悪影響を及ぼすほどではないし、作業領域が広くなるメリットのほうが圧倒的に大きい。僕はそのように感じている。

6. ビデオカードを買い足さなくても使える

よほどパソコンが古くない限り、マザーボードのオンボードグラフィック機能はWQHDの解像度に対応しているはず。僕が以前使っていた2013年製のPCでさえ、オンボードグラフィックによるWQHDの表示は、問題なくできていた。フレームレートも60fpsで出ていたので、遅延の心配もない。

※ちなみに当時のPC、CPUは「Intel Core i7 4770」、マザーボードは「ASUS H87-PRO」という構成だった。




4Kディスプレイにしない3つの理由

1. 人間が快適に見渡せる画面サイズには限界がある

僕は普段、70~80cm程度の距離でディスプレイを見ている。32インチのディスプレイは、首を動かさず、目の移動だけで全領域を視認できる限界のサイズだと感じる。

仮に4K(3840x2160)のディスプレイを使う場合、画面サイズが32インチ程度では文字が小さすぎる。そのため、画面サイズを40インチ~と、かなり大きくする必要が出てくる(詳細は後述)。だから普通に机の上でパソコンを使う場合、快適に利用するのは難しいと僕は考えている。

解像度的にも、WQHDの作業領域は快適に使うための上限という印象もある。WQHDのディスプレイに移行してからは、正直マウスのカーソルを見失うことが多くなった。これ以上解像度を上げると、カーソルを見失う回数も増えそう。

2. スケーリングの問題がある

「4Kディスプレイで文字が小さく感じるなら、文字が見やすくなる程度に拡大して使えばいいのでは?」と思う人もいるかもしれない。確かにMacではスケーリング*機能が優秀なので、4Kディスプレイでも拡大表示をすれば高精細な表示を得られるというメリットはある。

しかし、4Kの解像度を持て余すことになるので、音楽制作の用途に限っていえば作業効率的な恩恵は無い。また、Windowsではそもそもスケーリングの機能があまり実用的ではない。


(参考)Windowsの4Kスケーリング環境を検証する

結局、ドットバイドット*で表示させるのが現実的になってしまう。ドットバイドット表示が前提の場合、4Kの解像度で表示するためには、よほど大きいサイズの画面にしない限りは文字が小さくなって見づらくなる。

具体的な数字を挙げる。普及モデルであるフルHDの24インチのドットピッチは0.277mm。4Kディスプレイで同じドットピッチを得るためには、画面サイズを48インチ(!)まで大きくする必要があるのだ。前述の「快適に見渡せるサイズの限界」の話を考えると、僕の感覚では、やはり4Kの解像度でディスプレイを利用するのは現実的ではない。

用語の説明

  • スケーリング:
    「ディスプレイが持つ解像度」よりも低い解像度で、画面を拡大表示させること。データ上の1ドットを、ディスプレイ上の複数のドットで担当することになるため、文字がきれいになったりするメリットがある。しかし、アプリが対応していない場合、逆に文字にジャギー(ギザギザ)が出たりして、表示が汚くなることもある。
  • ドットバイドット:
    データ上の1ドットを、ディスプレイ上の1ドットに、一対一に対応させること。


3. コストが高くなってしまう

WQHDの32インチなら3万円台から手に入るが、4Kのディスプレイだと、安くても4万円台後半。純粋にディスプレイ自体の値段が高い。

また、4Kの解像度で表示させる場合、遅延のない状態(60fps)で表示させるためには、前述の通りビデオカードを増設する必要が出てくることも多い。

ディスプレイとビデオカード、両方でコストが増えてしまう。なので現状、コストパフォーマンス的にはイマイチだといえる。

WQHDの32インチディスプレイの紹介

最後に、WQHDの32インチ(正確には31.5インチ)ディスプレイをいくつか紹介する。

32インチという大きめのディスプレイになるので、視野角(ディスプレイを斜めから見たときに正常に表示できる度合い)は重視したいポイント。視野角の広さに定評がある、「IPS(ADS)パネル」を採用しているものを選びたいところだ。

今回紹介するディスプレイの多くは、どれも似たようなスペックをしている(31.5インチ、WQHD、ノングレア、IPS(ADS)パネル)。こういったスペックのディスプレイが手頃な価格で売っているのを見ると、本当に恵まれた時代になったと感じる。

I-O DATA EX-LDQ322DB

画面の端から端まで問題なく視認することができ、視野角に問題はない。パネルはADSパネル(アイオーデータの採用するIPS形式に準じたパネル)を採用している。僕はかなり輝度を下げて使っているが、長時間見ていてもそれほど疲れは感じない。国産メーカーにこだわりたい人にも良さそうだ。

iiyama XB3270QS-B2

2020年、iiyamaもついに、WQHDの31.5インチディスプレイをリリース(2018年頃に探したときは無かったのに)。以前長らく同社のWUXGAディスプレイを使っていた僕としては、嬉しいニュースだ。同社のディスプレイは品質と価格のバランスが優れている。今後も市場を活性化してくれることに期待したい。

LG 32QN600-B

LGからもお手頃価格なWQHDの32インチディスプレイが販売されている。コスパの高さが素晴らしい。

ViewSonic VX3276-2K-MHD-72

価格.comで圧倒的な人気を誇った、「VX3276-2K-MHD-7」の後継機種だ。前機種のような圧倒的な安さは緩和され、他製品の価格帯に準じる形とはなってしまったが、依然コスパの高いディスプレイであるのは間違いない。

ViewSonic VX3276-2K-MHD-72

Acer EB321HQUDbmidphx

ディスプレイ市場で名を馳せるAcerが贈る、32インチクラスのWQHDディスプレイだ。スペック・値段・レビュー評価、いずれも安定しており、導入しやすそうなモデル。