※2022年11月15日(火)記事にSpotifyの埋め込みプレイヤーを追加
洋楽・邦楽問わず、ここ最近では流行歌の間奏でギターソロを耳にすることが少ない。そもそも最近の音楽ではギターソロが求められていない。そんな事情も理解できる。
しかし、ギターソロはギタリストのロマンだ。忘れてはいけない大切な音楽的要素だと思う。
今回は歌もの楽曲の中から、ギターソロがかっこいい曲を17曲紹介する。洋楽10曲、邦楽7曲を厳選した。どれも多少は知名度があり、"名曲"と呼ばれているものも少なくない。
この記事をきっかけに、名曲の間奏で炸裂するギターソロの素晴らしさを知ってもられば嬉しい限りだ。
目次
洋楽編
1. Highway Star/Deep Purple
バンドのギタリスト、リッチー・ブラックモアによるギターソロだ(3:46~)。
あらゆる曲の中でも屈指の名ギターソロだろう。起承転結がはっきりしていてストーリー性があり、フレーズもわかりやすい。チョーキング、速弾き、ツインリードのハモりなど、ロックのリードギターを象徴するテクニックがふんだんに盛り込まれている。
速弾きのフレーズはシンプルで初心者にも挑戦しやすいレベルだが、16分で正確に弦をピッキングできるだけのテクニックも必要。「頑張れば手が届くが、決して簡単ではない」。そんな絶妙な難易度のギターソロだ。
なお、速弾きの最中で出てくる「開放弦を絡めながらフルピッキングするフレーズ」は、同バンドの「Burn」(Spotifyリンク)という曲のギターソロでも同様の奏法が出てくる。この奏法は、リッチーのシグネチャー・フレーズといった印象も感じさせる。
余談だが、後述の「Silent Jealousy/X」でも同様の奏法が出てくる。hideがこの曲に直接影響を受けているのかはわからないが、後世のギタリストのフレージングの礎になっているという意味でも、この曲のギターソロが音楽史に残したものは大きいといえるだろう。
2. Can’t Stop Lovin’ You/Van Halen
バンドのギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレンによるギターソロだ(2:39~)。
コードトーンを結ぶキャッチーなフレーズから始まり、流麗な高速レガート、ダイナミックなボリューム奏法と続く。その後をボリューム全開に戻し、コード分解フレーズを決めるような展開になっている。
一瞬だけレガートの速弾きを入れた後で、ボリューム奏法でしっとり聴かせるなど、フレーズの構築センスが素晴らしい。緩急に富んだ見事なギターソロといえるだろう。
エディのギターソロはフレーズの緩急が豊かな分、ちょっと速い程度のフレーズであっても非常に"スピード感"があるように聴こえるのが特徴だ。
この曲に限らず、フレーズの対比が相対的なスピード感に繋がっているのは、彼のギターソロの特徴といえるかもしれない。速弾き一辺倒のギタリストには出せない緩急あふれるソロには、一聴の価値があるはずだ。
3. Jump/Van Halen
こちらもVan Halenのヒット曲だ(ギターソロは2:18~)。ドラム&ベースの変則的なリズムと相まって、かなりトリッキーに聴こえるソロとなっている。
ペンタトニック主体のフレージングでありながら、ピッキング・ハーモニクスや彼の十八番であるライトハンド奏法など、短い尺の中で見せ場がたくさんある。
コード分解フレーズのときにブリッジミュートを入れたり、フレーズの終わりをしゃくり上げたりと、細かい部分の表現力が豊かなのも見逃せない。
4. Dreams/Van Halen
この曲がVan Halenからはラスト。Van Halenは良いギターソロが多いので、つい3曲も選んでしまった。※ギターソロは2:41~
導入部からブリッジミュート音とナチュラルハーモニクスの組み合わせでフレーズを作っているのがハイセンスだ。ハーモニクスの終わりはアーミングでワイルドに決めている。
ソロに入ってからの部分では、チョーキングとタッッピング・ハーモニクスの合わせ技がカッコいい。その後ペンタでわかりやすくフレーズを作りながらも、突如ライトハンド奏法を繰り出し、一気にスピード感が増す。このあたりは実にエディらしい表現といえる。
タッピングした右手をハイフレットへグリスアップさせてフレーズを歌わせているのも見逃せないポイントだ。その後は低音域のトレモロピッキングから上昇していき、最後は高音のチョーキングで締めるという流れ。
このソロも起承転結がわかりやすく、ドラマチックで秀逸なソロといえるだろう。
5. Daddy, Brother, Lover, Little Boy/Mr. Big
バンドのギタリスト、ポール・ギルバートによるギターソロだ(2:15~)。
基本的な音使いは、Eマイナースケールを16分音符で演奏するというシンプルなもの。ストレッチや弦飛びも登場するため運指の難易度は非常に高いが、地道に練習すれば弾きこなないほとではない。多くのギターキッズが挑戦したであろうギターソロだ。
速弾きのセクションが終わった後は、ドリルを使った演奏が出てくる。これはピックを数枚貼り合わせたものをドリルの先端に貼り付け、それで弦を弾いて高速トレモロピッキングを実現するという非常にユニークな奏法だ。サブタイトルの「The Electric Drill Song」の由来でもある。
スケールを上下するだけのソロだけだと、ともすれば機械的になってしまいがちだが、このソロは曲が持つ疾走感や雰囲気とも良くあっていて、カッコよく仕上がっている。ドリル奏法の独自性も、曲を象徴づけるポイントだ。
6. Bohemian Rhapsody/Queen
バンドのギタリスト、ブライアン・メイによるギターソロ(2:40~)。
泣きのギターソロが曲を上手く引き立てている。ゆったりとしたチョーキングから速弾きのフレーズへの移り変わりは、フレーズに感情がこもっているかのようで見事。
ちなみにこの速弾きの下降フレーズだが、似たものが「I Was Born To Love You」(※Queenバージョンのほう)のギターソロでも登場する。ブライアン・メイのシグネチャー・フレーズといっても良いかもしれない。
7. The Game of Love/Santana Feat. Michelle Branch
カルロス・サンタナによるギターソロ(2:20~)。彼らしい太く伸びやかなトーンが心地よい。
難しいテクニックを使わず、ギターを歌わせることに専念しており、気軽に聴けるソロだ。速いフレーズもプリングで滑らかに仕上げている。コーラス(サビ)部分などで、歌の隙間にオブリ的に入ってくるリード・フレーズも良い味を出している。
8. A Whole New World/Regina Belle & Peabo Bryson
曲はディズニー映画「アラジン」の主題歌。ギターソロはLAのスタジオミュージシャン、マイケル・ランドウによるものだ(2:19~)。
ギターソロの導入部分では歌のメロディをモチーフにし、曲に溶け込むように、滑らかにスタートしている。その後のフレーズもスライドを駆使して上手く歌わせている。
最後はペダル奏法(※1つの音を基点にフレーズを展開させる奏法)と、22Fの一音チョーキングで締め。このペダル奏法のフレーズからは、LAのスタジオギタリストの雰囲気を感じさせる。
ラックのアンプ(CAE 3+SE?)を使っていると思われる、ハイファイで伸びやかな音色が心地よい。
9. Rosanna/TOTO
バンドのギタリスト、スティーブ・ルカサーによるソロだ(3:13~)。
スタジオミュージシャンとして数多くの実績を残しているルカサー。TOTOのこの名曲でも、起承転結のついた優れたソロを披露してくれている。フレーズの分かりやすさとテクニカルさのバランスが絶妙な、歌もののお手本とも言えるようなギターソロだ。
このギターソロで印象的なのが次の奏法。「1音チョーキングした状態で、小指で隣のフレットを押さえて半音上の音を鳴らす」。2回も出てくるあって、普段からルカサーはこのフレーズをよく使うのだ。これは彼のシグネチャー・フレーズと言ってもいいだろう。
エンディング部分のアドリブソロも必聴だ。
10. Back on The Road / Earth, Wind and Fire
こちらもスティーブ・ルカサーによるギターソロ(ルカサーはゲスト・ギタリストとして参加)。※ギターソロは1:58~
4つ打ちの軽快なリズムに乗せて、テクニカルなフレーズを炸裂させている。速弾きの部分はペダル奏法。やはりLAのスタジオギタリストらしいフレーズの構築がされている印象だ。
曲のエンディングはサビ繰り返し&フェードアウトという形だが、そこでもルカサーらしいフレーズ満載のソロが聴ける。
邦楽編
1. 夏を抱きしめて/TUBE
バンドのギタリスト、春畑道哉氏によるソロだ(2:27~)。
TUBEの曲では、間奏でかっこいいギターソロが聴けることが多いが、その中でもオススメなのがこの曲。スウィープピッキングを交えた速弾きフレーズなど、テクニック的にも美味しい要素を持ちつつ、フレーズが非常にメロディアスで優れているのが特徴だ。
またコード進行はセカンダリー・ドミナントを上手く駆使したドラマチックな展開になっており、彼の優れた作曲家としての一面も感じさせる。
2. 愛を語るより口づけをかわそう/WANDS
※サブスクでの配信は無し:2022年11月現在
メンバーのギタリスト、柴崎浩氏によるギターソロだ(3:04~)。
WANDSのギターソロで僕がオススメするのがこの曲。基本的にはペンタ主体でロックに聴かせつつも、要所でスウィープやクロマチックフレーズなどを交えるなど、アカデミックさも感じさせてくれるソロだ。
ソロの終わりの部分では、元の調に戻すため転調が起こっているのだが、そこでも上手くスケールチェンジをしてフレーズを構築している。2つの調の共通音を上手く使いつつ、転調をスムーズに聞かせるフレージングがされているのが見事。
WANDSのポップな音楽と柴崎氏のギタースタイルは、非常に親和性が高いように感じる。ギタープレイを聴いていると、LAのスタジオミュージシャンの系譜を感じさせるような、確かなテクニックとセンスを兼ね備えていることがわかる。
3. Dear My Friend/Every Little Thing
メンバーのギタリスト、伊藤一朗氏(通称「いっくん」)によるギターソロだ(2:39~)。
この曲のソロではスウィープピッキングや、フルピッキングの速弾きなどテクニカルなフレーズが盛り沢山だ。キャラに似合わず(?)、高度なギターテクニックを持っているいっくん。完コピには高い水準のピッキングテクニックが要るだろう。
4. Silent Jealousy/X
バンドのギタリスト、HIDE(とPATA)によるギターソロだ(4:30~)。
この曲は終始マイナーキーで進んでいくのだが、ギターソロでは一転メジャーキーになり、ドラマチックな雰囲気へと様変わりする。このあたりはHIDEのセンスがなせる技だろうか。
ツインリード、開放弦を交えたフルピッキング、タッピングなどロックギターの王道テクニックが満載のギターソロだ。
5. 負けないで/ZARD
ギターソロは2:22~。演奏者は不明だが、深く歪んだ音色や振幅の深いビブラートから、ハードロックやメタル寄りなスタイルのギタリストが想像できる。
ペンタポジションでのチョーキングや、スケールに沿った速弾きフレーズなど、伝統的なハードロックスタイルを感じさせるギターソロとなっている。
この時代のビーイング系の音楽は、HR/HM系スタイルな美味しいギターソロが多い。今回の記事で紹介したアーティストの他にも、DEEN、FIELD OF VIEWなどのグループは要チェックだ。
6. Together/EXILE
DIMENSIONの増崎孝司氏によるギターソロだ(2:35~)。増崎氏はスタジオミュージシャンとしても活躍している。
曲調に合った良いメロディを奏でながらも、要所でテクニカルなフレーズを聴かせてくれている。音使いやフレーズのリズムからジャズの素養を感じさせるのは、さすがはフュージョンのバンドのギタリストといったところか。
エンディング部分でもギターソロが聴ける。フェードアウトまでネタが尽きること無く、延々とアドリブのソロを聴かせてくれる。氏の技量をうかがい知ることができる一曲だ。
7. Brotherhood/B’z
メンバーのギタリスト、松本孝弘氏によるギターソロだ(3:25~)。B'zのギターソロでは、個人的にこの曲が一番気に入っている。
起承転結がはっきりしており、ドラマ性があり曲に良く合ったソロだ。テクニック的にも、ハーモナイズド・チョーキングやオクターブ奏法、ペンタの速弾きなどロックの王道テクニックが目白押し。
ブルージーな要素と、日本人らしい「侘び寂び」のようなものが表れた、彼らしいギターソロだ。