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API 500モジュールって何?
API 500モジュールとは、特定の規格を満たす、小型のハードウェア機材のことだ。製品ラインナップとしては、マイクプリ・EQ・コンプ等が存在する。通常のラックマウントできるサイズの機材よりも、だいぶ小さいのが特徴。
API 500モジュールはもともと、音響メーカーのAPIが考案・開発したハードウェア規格だ。当初はAPI独自の規格だったが、2006年に「VPR Alliance」が発足して以降、様々なメーカーからこの「API 500規格」のハードウェア機材が発売されている。
2006 API initiates the VPR Alliance, which encourages other companies to develop compatible modules for the 500 Series
API 500モジュールを導入する2つのメリット
1. コンパクト
API 500モジュールの魅力は、なんと言ってもコンパクトで省スペースなところだ。
- 部屋にラックを置くスペースがない or ラックのスロットが全て埋まってしまった
- だけどハードウェア機材を使いたい
という状況にある人にとっては、API 500モジュールの導入は、即効性のある解決策となるはずだ。
具体的なサイズについて
API500モジュールは、電源シャーシに入れて使うことになる。API 500モジュールの電源シャーシの中で、最も人気が高いと思われる、Rupert Neve Designs R6の寸法は次のようになっている。
寸法
幅 x 奥 x 高 = 約 33 x 19 x 14 cm(3U)
「高さ3U」という言葉から、僕は当初、かなり大きな物体が届くのではないかと懸念していた。だけどそれは間違い。確かにR6の高さは3U分なのだが、幅と奥行が短いので、想像以上にコンパクトだと感じている。
- 幅:33cm ⇒ 通常の1U機材の、60~70%程度の幅
- 奥行き:19cm ⇒ 通常の1U機材の、半分程度の奥行き
ラックマウントせずとも、机の上に気軽にポンと置けるのがいい。
2. 音質もラック機材と同等
正直、導入前は「ボディが小さいから、音もそれなりだろう」という偏見を持っていた。だけど、実際に試してみたところ、普通のアウトボード機材と同等のクオリティであると感じた。
課題点2つ
1. 価格が安いわけではない
API 500モジュールの製品1台の価格は、安いものでも5~10万円程度はする。
※音の良いアウトボードは得てして高いパーツが使われているため、多少高いのは仕方ない部分もある。
2. 初回導入時に電源分のコストが掛かる
API 500モジュールを利用するためには、はじめに専用電源を買わなければならない。電源には、5~10万円程度の予算を見ておく必要がある。
もっとも、普通のアウトボードでも専用の別売電源が必要なこともあるわけで、そういった面倒から解放されるというのは、むしろメリットとも言えるかもしれないが。
ちなみに電源は、個人的にはRupert Neve Designs R6がおすすめ。製品の詳細は、以下の記事で紹介している。
【レビュー】Rupert Neve Designs R6はAPI 500モジュール電源の決定版。おすすめ製品です
API500モジュールの取り付け/取り外しについて
モジュールを取り付けるコツ
API 500モジュールを電源シャーシに取り付けるのは、思った以上に難しいと感じた。そこで取り付けのコツについて書いてみる。まずはモジュールの先端を、R6等シャーシ電源のスロットに、少しだけ入れる。ここから奥へと挿入していくわけだが、その際、
- モジュール天板の水平のライン ⇒ シャーシの水平ラインと平行になるように
- モジュール天板の垂直のライン ⇒ シャーシの垂直ラインと平行になるように
維持するのがポイント。
これら2つの「平行状態」を守った状態で、ゆっくりと挿入していくのがポイント。斜めにならないように気をつけながら、ゆっくり焦らずに差し込んでいくのが重要だ。
正しく挿入できていると、モジュールとシャーシの間に3~4mm程度の空きができた状態で、それ以上進まなくなる。
その状態で、少し力を入れて、モジュールを押し込める。すると、「ガシャン!」という音とともにモジュールがシャーシに差し込まれる。差し込まれたモジュールは、仮にネジで固定していなくても、動かなくなる。
新品だと、差し込み口がけっこう固い。1kg重くらいは力を入れないと、「ガシャン!」と上手く差し込まれないと思う。
もし、「モジュールが奥まで差し込まれているはずなのに、全然固定されている感じがしない」という場合は、正しく挿入できていないことになる。差し込みをやり直そう。
モジュールを取り外すコツ
モジュールを取り外すのも意外と難しい。まず、モジュールのツマミ等を持った状態で、無理に引っ張らないようにすること。さもないと、ツマミのカバーだけがスポッと抜けてしまうだろう。
モジュールを取り外すのに役立つ、ちょっとしたテクニックを紹介する。あらかじめケーブルを全て抜いておこう。それからモジュールの電源シャーシを、作業がしやすい場所に動させる。そしてツマミの先が天井を向くように、寝かせた状態で机の上に置こう。このほうがモジュールを取り外しやすい。
使用済みのギターピック(ミディアム程度の厚み)を用意する。2枚くらいあれば便利。モジュール上部とシャーシのすき間に、ピックを差し込む。1枚入ったら、もう1枚も差し込む。テコの原理でグリグリとこじ開けてすき間を広げる。
モジュール下部とシャーシの間も、同様にピックを2枚くらい使ってこじ開けて、すき間を広げる。
ある程度すき間が空いたら、後は指先の肉がすき間に入るようになるので、両手を使って引っ張り出せばOK。ピックはセルロイド製なので、モジュールやシャーシに傷が付きづらくて良いと思う。
おすすめのAPI 500モジュール
まず、マイクプリアンプは録音する上で、なくてはならない存在。持っていなければ優先的に導入したい。
続いて導入価値が高いのが、EQ。EQはアウトボードに頼る価値が高いアイテムの一つだと思う。コンプはプラグインでも良い感じになるけど、ハードウェアEQが持つ音の良さは、未だにプラグインでは出せないと感じるので。
おすすめのマイクプリ
Rupert Neve Designs Portico 511
API500モジュールかつNeve系のマイクプリ……という前提で製品を選ぶときに、真っ先に候補となるマイクプリだ。
Vintech Audio 573
Neve系マイクプリを作っているメーカーの中では、Vintechも信頼できるメーカーの一つだ。
おすすめのEQ
Rupert Neve Designs 551
伝統的なNeve系EQのキャラクターを持ちつつも、Rupert Neve Designsらしい現代的な質感を持っている。同社の設計思想を体現するかのような、優れた出音を持つEQだ。
API 550b
APIといえばコレ!というEQ。Neve系のEQとは違う、クッキリとしたクリアな元気の良い音が欲しいときに使いたい。