はじめに断っておくが、僕はもともと高音が得意ではなく、長年カラオケでは高い声が出せずに苦労していた。そんな僕が、2冊の本を読んで独学でボイストレーニングをした結果、半年後には地声(正確にはミドルボイス)で出せる音域が、ファ#~ラまで、1音半も広がった。
具体的な曲名を挙げると、SMAPの「世界に一つだけの花」が限界の状態から、レミオロメンの「粉雪」を歌えるようになるまでに、音域が広がったことになる。その後もトレーニングを続け、今では上のドくらいまでは地声で発声することができるようになった。
多くのヒット曲は、最高音がソ~ラ程度になっている。もし地声でラまで出せるようになれば、歌える曲のバリエーションが桁違いに増える。人によって歌唱力の差はあれど、歌を上手く歌うためには「曲の音域が自分の声域にあっているか」が重要になってくる。つまり、高い声が出せるようになれば、上手く歌える曲の数が増えることにもなるのだ。
高い声が出せずに悩んでいる人は、ぜひ読んでみて欲しい。
目次
高音発声の基礎知識
声帯を調節するための筋力が必要
高い声を出すために必要なのが、声帯を伸展させたり、閉鎖させたりするための筋力だ。これらの筋力が不足していると、いくら頑張っても高い声を出すことは出来ない。僕自身もそうだった。
上手くコツをつかんですぐに高い声が出せる人もいるが、そういう人は元から高音発声に必要なだけの筋力があっただけだ。才能が無いとあきらめる前に、まずはこのことを知っておいて欲しい。声帯を調節するための筋肉を鍛えることが、高音発声のカギになってくる。
ミドルボイスの習得がポイント
プロの歌手の力強い高音は地声のように聴こえるが、大なり小なり裏声成分が含まれている。高音に行くにつれて裏声成分の量を増やしていくのが高い声を出すためのコツだ。
地声の声区は3つに分かれており、低い音域から順に、それぞれ次のように呼ぶ。
- チェストボイス(低音域)
- ミドルボイス(中~高音域)
- ヘッドボイス(高音域)
ソ~ラ程度の高音は、ミドルボイスの範囲に含まれているため、一般的なロックやポップスの曲を歌うことを考えた場合、必然的にミドルボイスの習得を目指してトレーニングすることになる。
声帯の伸展を鍛える
ここからは、具体的なトレーニング方法について記述していく。
大抵の男性は、日常的に裏声を出す習慣がないため、特に、声帯を伸展させるための筋力(輪状甲状筋)が発達していないことが多い。言い換えると、裏声を出してトレーニングすることで、声帯を伸展させるための筋力は鍛えることができる。
そのための良い練習方法がYUBAメソッドだ。
ボイストレーナーの弓場徹氏による著書『奇跡のボイストレーニングBOOK』の付属CDでは、練習の多くが裏声を出すような内容になっている。これによって、声帯を伸展させるための筋力を鍛えることができる。
裏声を出す練習は効果が絶大で、後述のロジャー本だけでは上手く行かなかった僕も、YUBAメソッドを併用するようになってからは、すんなりミドルボイスを見つけることができた。
声帯の閉鎖を鍛える
地声のような力強い声で高音を出すためには、声帯を閉鎖することが必要だ。そのためには、声帯を閉鎖するための筋力が必要。閉鎖筋を鍛えるのにおすすめしたいのが、ボイストレーナーのロジャー・ラヴ氏の著書、『ハリウッド・スタイル 実力派ヴォーカリスト養成術』(通称ロジャー本)。
この本の付属CDでは、ひたすら「Goog(グッグ)」という言葉で発声練習を行う。裏声は使わず、ひたすら地声で練習する内容になっており、閉鎖筋を鍛えるのに非常に効果的。
前述の「チェストボイス/ミドルボイス/ヘッドボイス」の声区分けについても、具体的に記述されている。実際にポップスやロックの曲で使うのは地声がほとんど。「地声のような力強い高音」を習得するにはこの本が良い。
前述のYUBAメソッドでは、裏声をベースにした状態から地声に近づけていくという方法を推奨しているが、僕にはこれでミドルボイスを見つけることはできなかった。ミドルボイスは僕にとっては、あくまで地声の延長線上という位置づけだ。
かといって、ロジャー本だけで十分というわけでもない。ロジャー本では裏声の練習が一切出てこない(それどころか、裏声に逃げないように推奨されている)ため、声帯の伸展を鍛えるには、この本だけでは不十分だと僕は考えている。
YUBA本とロジャー本、どちらが欠けても高音発声を習得することはできなかったと思うので、これらの2冊を併用して練習することをおすすめしたい。
僕が独自に行った練習方法
僕が独自に考えて行っていた練習方法も紹介する。
- 裏声の状態で高め(ファ前後)の音を発声する
- そのまま地声に変えていく(できるだけスムーズに)
- そのまま裏声に戻す
- 高さを変えて、1~3を繰り返す
ミドルボイスを出せない人が、この練習をきっかけに出せるようになることもある。実際僕は、この練習をしている最中に初めて力強い高音を出せたのだが、そのときにミドルボイスの習得を確信した。
またこの練習を行うことで、高音発声時にどこの筋肉が働くのかを体感することができる。必要な筋肉がわかれば、そこだけを働かせればよいので、発声時の無駄な力みを抑えることにもつながっていく。
さらに、裏声~地声~裏声となめらかに移行できるようになると、今度は裏声成分の量を調節することができるようになり、声質をコントロールすることもできるようになる。
- ATSUSHIのような裏声成分の多いミドルボイス
- hydeのような地声成分の強いミドルボイス
例として、上記のようなボーカリストの声に似せて発声することも可能だ。歌の上手い人は、表現の一環として曲中で声質を変化させることもある。裏声成分の量を調節する練習は、高音発声のみならず、歌うときの表現力向上にも有効だと僕は考えている。
上手く行かなければ無理せずボイトレに行こう
「1年くらい頑張ってるけど、いっこうに高音発声の感覚がつかめない……」そんな場合は、間違った方法(例:「喉を締めて声を出そうとする」等)で練習をしている可能性もある。間違ったフォームで練習を続けていると、後からそのクセを取るのは結構大変だ。
僕も喉絞めクセを取るため、一度フォームをリセットして0からやり直した経験がある。今思えばかなりの回り道をしてしまったように感じている。
イマイチ伸び悩んでいるなあという人は、無理せずに独学で粘らずにボイトレを受けてみるのも手だ。無料体験レッスンを開講しているボイトレ教室も多いので、気軽に体験しに行くといい。
おわりに
一般的な筋力トレーニングと同じように、高音発声のための筋力を鍛えるのにも多少は時間がかかる。すぐに結果が出なくても、焦らず気長に練習を続けて欲しい。高い声が出せるようになれば、一気に歌うことが楽しくなる。