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【2021年】Kindle Unlimitedで読んで良かったおすすめの本4冊を紹介

2021年にKindle Unlimitedを利用して読んだ本の中で、特に良かった4冊を紹介する。4冊とも音楽に関する本だ。

注意
記事執筆時点では4冊ともKindle Unlimitedの対象ですが、これらの対象書籍は予告なく変更されることがあります。

おすすめの本4冊

『3つのケーススタディでよくわかるオーケストレーション技法』

侘美 秀俊(著)

実践的なオーケストレーションのやり方を伝授してくれる良書だ。

僕が以前購入した書籍『DTMで学ぶオーケストレーション入門』も良い本だったが、そちらは楽曲分析や楽器の特性の紹介等が中心。音源も付いていなかったし、座学で理解を含めるという内容だった。

一方でこの本は、かなり実践的な内容になっている。和声とメロディのシンプルな状態から、実際にオーケストラの楽器を使って肉付けをしていく様を、順序立てて解説してくれている。

  1. ピアノ譜/コンデンススコアを用意
  2. 木管/金管/弦セクションの各パートへの割り当てを考える(トランスクライビング)
  3. 対旋律を作ったり、フレーズを調整したりする

というオーケストレーションの大まかな流れについて、各プロセスを詳しく掘り下げて行き、楽曲が完成形に至るまでを解説してくれている。

この本は230ページ程度だが、チャプターは全部で3つで、取り上げる楽曲も3曲。1曲ずつきちんと掘り下げるつくりになっているということが、本の構成からも分かってもらえるはずだ。

楽曲も、「ジュ・トゥ・ヴー(エリック・サティ)」や「枯葉(ジャズのスタンダード曲)」といった、有名曲が題材にされている。取っつきやすくて良い。

譜例に対応した音源も付いてくる。おまけにフルスコアのPDFファイルまで貰えちゃう。かなり太っ腹だと思う。

あと、これは参考になるなぁと思ったのが「実際に楽器の特性を理解している人じゃなきゃ分からないような、オーケストレーションのテクニック」をたまに教えてくれるところ。例えば、ある曲では

  • ここは開放弦を含むフレーズで、ダブルストップが容易だから、Vn1だけで2声担当させてみよう

というような意思決定が行われている。DAWの打ち込みだけでオーケストラ音楽を作っている人だと、なかなか至りにくい発想ではないだろうか。

  1. 分かりやすい
  2. 解説が丁寧
  3. 図解も親切

と3拍子揃った解説がされていて、誰にでもオススメできる本。できることなら、オーケストレーション初心者の頃に出会いたかった……と少し後悔してしまうくらいの良い本だ。

『ギター演奏の常識が覆る!99%の人が弾けていない「本当のグルーヴ・カッティング」』

竹内 一弘(著)

エレキギターという楽器は、ロック音楽の発展とともに、その地位を向上させてきたという歴史的背景がある。ロック音楽が持つ激しさ・力強さという要素から、つい私達は、エレキギターを演奏するときにはピッキングも力強く行うべきだと思いこんでしまいがちだ。

この本は、そのような偏見に囚われた思考を覆してくれる。著者は、「ギターは強くピッキングするべきではない、軽やかにピッキングするべきだ」と断言している。

ギターは強くピッキングするとヒステリックで詰まったニュアンスのトーンなります。もっと言えば、全ての弦楽器は軽く弦をはじくことで良い音が出るものです

出典:P.9

仮にこれが、著者独自の見解なのであれば、「ホントに正しいの?」という気もしてくるだろう。しかし、この説の根拠は、誰もが認めるカッティングの名手「ナイル・ロジャース」の演奏や発言を分析した結果だという。そのため説得力がある。

実際この「弱くピッキングするべき」という説を提唱している人は、探してみれば案外少なくない。バークリー音大で教鞭を執っているT氏もそうだし、凄腕のメタルギタリストたちの演奏を見ても、見るからに軽くピッキングしている人は確かに多い。

僕自身、かつては自分でエレキギターを演奏する際に、満足の行くトーンが得られないこともあった。振り返ってみると、力強くピッキングすることに囚われていたように思う。軽やかにピッキングするようになってからは、良い音で録音できることも増えてきたが、そのピッキングスタイルが適切なのか自信を持てずにいた。

そんな中でこの本と出会い、軽いピッキングも間違いではないという確信を持つことができた。今では自信を持って、エレキギターの良いトーンを追求することができている。

『レコーディング/ミキシングの全知識』

杉山 勇司(著)

数々の日本のアーティストの名盤において、確かな実績を残してきた著者が、直々にレコーディングやミキシングのノウハウを伝授してくれる貴重な一冊だ。

レコーディングやミキシングの工程は、とりわけ独学でやってきているような人間の場合、「これって正しいの?」と不安になることも多い。

この本では、

  • レコーディングの心得
  • 機材(マイク・エフェクター・モニタースピーカー等)の知識
  • 楽器や歌の録音方法(使用マイク・マイキング等)
  • ミキシングの進め方

といった各プロセスにおける正しい作法を、確かな実力を持つ著者がじっくりと教えてくれる。

特に「ミキシングにおける、マスキングの活用方法」(あえてカットせずに残す)は、大変参考になる考え方だった。この話を聞けたことで、自分の中のミックス作業における、ひとつの指針を得ることができた。

『ヒット曲の料理人』

船山 基紀(著)

「仮面舞踏会/少年隊」「シンデレラガール/King & Prince」「勝手にしやがれ/沢田研二」等、数々の名曲のアレンジを手掛けてきた、日本を代表する編曲家の著書だ。

  • 有名曲で使われている楽器やレコーディングの詳細
  • 著者のアレンジに対する向き合い方・考え方
  • 「打ち込み」の導入に伴うレコーディング環境の変化
  • 打ち込みでも様になる楽器/生演奏じゃなきゃ厳しい楽器
  • 現代における編曲家の立ち位置

等の内容について、半世紀近くに渡って第一線で活躍してきた著者が語ってくれている。

とりわけ、著者が体験してきた「日本のポップス史におけるレコーディング環境の変遷」についての話は、特に貴重だと感じた。かつてはスタジオに所狭しと楽器を並べ、テープレコーダーで録音し、レコードに音楽を残していた。今では全行程を1人の人間がコンピューター内部で行うことも可能。

このようにテクノロジーの進化に伴って私達が獲得したもの・失ったものを知ることは、現代の音楽制作に向き合っていく上でも大いに役立つことだろう。

日本でプロの音楽家を志す人であれば、ぜひ読んでおきたい一冊だ。



おわりに:年末は読書をしよう

音楽系の書籍は良書にもかかわらず、Kindle Unlimitedの対象となっていることが結構ある。掘り出し物も多いので、定期的にサービスに加入するのがオススメだ。

僕は年末の暇な時期には、必ず加入するようにしています。