スタジオモニターヘッドホン SONY MDR-CD900STのレビュー。世界中のミュージシャンのレコーディングを支えてきた名機です

SONYの定番スタジオモニターヘッドホン「MDR-CD900ST」のレビューです。

こんな用途に向いている

マイクを使ったレコーディング

SONY MDR-CD900ST(※以下「900ST」と呼びます)が最もよく利用されるシーンは、なんといってもレコーディング現場だ。

歌や生楽器(グランドピアノ、アコースティックギター、バイオリン等)は、基本的にマイクで録音することになる。その際、自分が鳴らしている音や、オケの音を聴くためには、ヘッドホンを使う必要がある。そんなニーズを満たすため、この900STがよく使われるのだ。

プロのレコーディング現場だけではなく、アマチュアの趣味の宅録でさえ、この900STが使われるケースは多い。それだけ超定番の製品なのだ。

900STがすごいのは、競合するようなヘッドホンが他にないということ。「レコーディング用のモニターヘッドホンのオススメは?」と聞かれて、900ST以外の製品を挙げるのは、なかなか難しいことだ。

「スタジオモニターヘッドホン」というカテゴリでなければ、たいてい複数の製品が挙がってくるようなものだが、ことRECのモニター用となると、900STの独壇場となってしまうのだ。この状態が1990年代から、2020年代に至る今までずっと続いている。

というわけで、もしあなたがマイクを使って歌や楽器を録音することを考えている場合、迷わずに900STを買ってしまってOKだ。プロスタジオからアマチュアの宅録環境に至るまで、どこに行っても置いてあるヘッドホン。音に慣れておいて損はない。

こんな用途には向かないかも

あまりにも定番ヘッドホンになってしまった900ST。しばし、「どんな作業でもこなせてしまう万能ヘッドホン」だと、過大評価されてしまうことがある。

しかし、実際のところは、さほど900STには向いていない作業というのも多い。先に結論を言ってしまうと、「レコーディングのモニター用途」を目的としているのでなければ、900STよりも他のヘッドホンを選んだほうがいい。

いいかえると、マイクで歌や楽器を一切録音しない人にとっては、900STは必要ない

ここでは、特に900STを使う必要がない作業をピックアップしてみる。

音楽鑑賞

900STは音楽鑑賞にはそれほど向いていない。音が硬質なので、長時間聴いていると疲れるからだ。音楽鑑賞用にヘッドホンを導入するなら、次の記事で紹介しているような、AKG K701のような開放型ヘッドホンのほうがいい。

【レビュー】AKG K701はコスパ最強の高音質ヘッドホンです(他製品との音質比較あり)

ミックス作業

900STはミックス作業にもそれほど向いていない。装着感・音質の両面で、「900STで長時間音を聴いていると疲れる」というのが一つの理由。もう一つは、100Hz以下、ローエンド付近の帯域があまりよく聴こえないからだ。

近年のミックス作業においては、低域を上手くコントロールすることの重要性が高まっている。900STを選ぶ理由は、特にないだろう。

ミックス作業をする場合、やはりモニタースピーカーを使うべき。どうしてもヘッドホンが必要な場合であっても、AKG K701や、低域が分かりやすいAKG K712などを使ったほうがいい。少なくとも900STよりは、満足度の高いミックス作業が可能となるはずだ。

900STの良いところ

音がしっかりしている

900STは音を正確に再生してくれる。不要な低域の増幅もなく、マイクが拾った音を正確に耳に届けてくれる。再生音の解像度も高い。プロの現場で使われているだけあって、サウンド面での物足りなさはない。

軽い

900STの重量は、約200g。レコーディングで2~3時間程度装着していても、重くて疲れるようなことはない。

自分で修理できる

900STは業務用ヘッドホンだ。自分で修理できるようになっている。

実際僕が所有している900STも、途中でイヤーパッドとドライバーユニットを一度ずつ交換し、10年以上現役で使い続けることができている。接触不良が起きたこともあるけど、その都度ケーブルを切って、自分ではんだ付けをやり直して修理している。

※上記画像は、僕が実際に900STのドライバーユニットを交換したときの様子。リード線をつなぐべき箇所をキチンと画像に残してメモしておいたので、交換作業は問題なく完了することが出来た。

次のような、900STを構成する各パーツは、店で購入することができる。

  • イヤーパッド
  • ドライバーユニット(振動して音が鳴る部分)
  • ヘッドバンド
  • ハウジング(耳のプラスチック部分)

したがって、パーツが製造され続けている限り、理論上は、私たちは900STを永久に使い続けることができる。このようなメンテナンス性能の高さも、900STの魅力のひとつだろう。

ちなみに、普通の楽器屋だと修理パーツはなかなか置いていないかもしれないが、サウンドハウスでは取り扱っている。

サウンドハウスで「900ST パーツ」で検索した結果

こんなモノまで売ってるの?という品揃えの豊富さには、驚かされるばかりです。

仕様についてメモ

プラグの形状

900STはステレオ標準プラグ仕様になっている。イヤホンのようなミニプラグではなく、太いタイプのプラグだ。

つまり、そのままでは携帯音楽プレーヤー等に接続して聴くことはできない。変換プラグを挟むという手もあるが、プラグは太くて重いし、ミニプラグに変換する前提だと、取り回しはイマイチかもしれない。

やはり、基本的にはオーディオインターフェイスなどに接続して使うことを想定されていると考えていいだろう。

ケーブルの長さ

ケーブルの長さは、約2.5m。個人的には、ヘッドホンアンプから少し離れたところで録音する場合、少し短く感じるかなという気もする。それでも許容範囲だ。