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【レビュー】久石譲オフィシャルスコア『メロディフォニー』(Melodyphony)はオーケストレーションの教科書!必携の一冊です

久石譲オフィシャルスコア『メロディフォニー』(Melodyphony)についてレビューする。

  • オーケストラ編曲に興味がある
  • 久石譲の音楽が多少なりとも好き

この2つに当てはまる人は、もう迷わずに今すぐスコアを買ってしまってOK!そのくらいオススメの一冊だ。

スコアに対応したアルバム「Melodyphony」はCD販売されているだけでなく、Spotify等でも配信されており、スコアを見ながら気軽に音楽鑑賞(スコアリーディング)することが可能だ。

久石譲 - Melodyphony(Spotify)

スコアの特徴

久石譲本人が監修した貴重なスコア

これは2011年6月に発売された、久石譲の名曲を集めたベストアルバム「Melodyphony」に対応したオフィシャルスコアだ。本人が編曲・監修しており、内容はこの上なく正確だ。

9曲とも久石譲が編曲、監修しています。膨大な数の楽譜が、様々な出版社から出版されている久石作品ですが、作曲家自身によるオフィシャルな楽譜はごくわずかです。また、久石の映画音楽の楽譜がオーケストラ・スコアの形で公表されることは、これまでほとんどありませんでした。

出典:久石譲オフィシャルスコア『メロディフォニー』6月6日発売|ショット・ミュージック

私たち一般リスナーが、このような正確な楽譜を手に入れられる機会は、非常に少ない。とても貴重な楽譜だといえる。

世の中の楽譜の多くは間違いだらけ

実は、市販の楽譜やスコアの多くは不正確だ。というのも、それらは耳コピで採譜されている。耳で音を聴き取ることには限界があるので、売っている楽譜の多くは、当たり前のように間違いを含んでいるのだ。

たとえば久石譲「Summer」のピアノ譜面だって、本人監修の楽譜を除けば、どれも耳コピで作られた、「内容が正確だという保証はどこにも無い」譜面なのだ。

ちなみに、ポップス・ロックの楽譜だとこれは顕著だ。「オフィシャル・バンドスコア」などと書かれていても、それは耳コピによって作られており、間違いを含むことがほとんどなのだ。

実際にバンドスコアを買って演奏したことのある人には、おそらく共感してもらえる話でしょう。

この楽譜は信頼できる!

そもそもオーケストラのスコアは、クラシック音楽を除いて販売されることが少ない。また、非公式なオーケストラスコアの場合、別途編曲者が立てられていることも多い。

一方で、この『メロディフォニー』のスコアは、作曲者本人が監修した正確なスコアとなっている。当然別の人が編曲しているようなこともなく、スコアには「久石譲」の名前以外、書かれていない。

おまけに、前述の通り、

作曲家自身によるオフィシャルな楽譜

と明言されており、内容の正確さは折り紙付きといっていい。僕がこのMelodyphonyのスコアリーディングに費やした時間は相当なものだが、市販のバンドスコアによくあるような「音と楽譜の内容が違う」と感じる箇所は、どこにも見当たらなかった。

この『メロディフォニー』は、作曲者の意図が完璧に反映された、限りなく正確なスコアだといえる。これだけでも非常に貴重なことだ。

値段が安いのに内容が充実

通常オーケストラのスコアは高価だ。それもそのはず、木管楽器・金管楽器・打楽器・弦楽器といった、十数パートの演奏が全て掲載されることになるわけで、コスト的には当然高くついてしまう。

参考までに、他の有名な曲のオーケストラのスコアの値段を見てみたい。

  • スター・ウォーズ組曲:5曲入りで約1万5千円(『Suite for Orchestra』)
  • E.T.のテーマ:1曲入りで約1万円

このように、どれも高価だ。

一方で当スコアは、

  • 久石譲オフィシャルスコア『メロディフォニー』:9曲入りで5,500円(税込)

珠玉の名曲たちが掲載されたスコアが、この価格で手に入るのはスゴいこと。ここまで気前よく提供してくれる久石譲先生には感謝するしかない。



主な収録曲を紹介

Water Traveller(1曲目)

壮大でゆったりとした、大編成のオーケストレーションが聴ける一曲だ。シンプルで分かりやすいメロディに対して、正統派なオーケストレーションが施されている。オーケストレーションを勉強するには、うってつけの曲。

Oriental Wind(2曲目)

伊右衛門のCM曲。アジアを感じさせるようなペンタトニックのメロディが印象的な一曲。中間部のユニゾンパートにおける、エモーショナルで躍動感のあるオーケストラの演奏は必聴だ。

Kiki’s Delivery Service(3曲目)

「魔女の宅急便」の曲。ピアノとストリングスによるオーケストラ編曲がされている。マイナーキーの前半と、明るく軽快な後半の対比が印象的。サウンドを厚く聞かせるための「ディビジ」の使い方などが勉強になる。

Summer(6曲目)

久石譲の曲の中でも最も有名な曲の一つだ。木管楽器+ストリングス+ピアノによるオーケストラ編曲がされている。

朗らかなメロディの上で、曲を引き立てるオーケストレーションが施されている。この曲もオーケストレーションを学ぶための入門教材として役に立つ。

One Summer’s Day(8曲目)

「千と千尋の神隠し」で流れる、どこか不思議で奇妙な要素も感じさせる、哀愁漂う美しい曲。ピアノ+ストリングス+ホルンによるオーケストラ編曲が行われている。

My Neighbour TOTORO(9曲目)

「となりのトトロ」の曲。誰もが知っている名曲を、フルオーケストラの編成でゴージャスに聴かせてくれる。アルバムのラストにふさわしい、楽しげで壮大で、感動的な一曲だ。

ポップスのオーケストレーションの教科書的存在

『メロディフォニー』には、となりのトトロ・魔女の宅急便・千と千尋の神隠しといった、ジブリアニメの曲も収録されている。つい口ずさんでしまうような、分かりやすいメロディを持つ曲が多く収録されている。

音楽性としては、ポップスに分類される曲が多いだろう。そんな曲を、どのようにオーケストラアレンジしていくべきか?普段ポップスを作っているけど、オーケストラ編曲にも挑戦したい……そんな人には間違いなくオススメできる一冊だ。



おわりに

このスコアだけは全人類買うべき!と言いたくなるほどの逸品だ。僕はこれを読んでオーケストレーションへの苦手意識がなくなりました。

久石譲オフィシャルスコア『メロディフォニー』