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MOJO 2: Horn Sectionとは
MOJO 2: Horn Sectionは、Vir2というデベロッパーが作っているブラス音源だ。豊富なサンプルと良質な録音のおかげで、高品質なサウンドを出せる。
デモ音源
MOJO 2を使った簡単なデモ音源を作ってみた。Funk系のトラックだ。ブラスセクションは、トランペット・テナーサックス・トロンボーンの3パートから構成されている。
- ブラス:Vir2 MOJO 2: Horn Section
- ドラム:NI Battery 4
- ベース:u-he Diva
- エレピ:Spectrasonics Keyscape
- ギター:Spectrasonics Omnisphere 2
という編成だ。
※余談だけど、Omnisphere 2のギター音色が意外と使えるなと思った。さすがはHans Zimmer Guitars由来のサンプル。
MOJO 2の良いところ6つ
1. 音がとても良い
僕はこれまで、Sample Modeling/Audio Modelingの音源、NI Session Horns Pro、Fable Sounds Broadway Bigband Litesなどの音源を使ってきた。そんな環境に今回MOJO 2が加わったわけだが、純粋に音の品質だけを評価する場合、MOJO 2はこれまでで最も高品質なブラス音源であると感じた。
長らくSample Modeling/Audio Modelingの音源を使うことが多かったが、セクションで鳴らすと、「物理モデリング特有の不自然さ」が気になることもあった。上手く打ち込んで、さらに上手くミックスしないと、音がジャリジャリになってしまう……そういうストレスがあった。
MOJO 2は本物のサンプルを鳴らす、いわゆるサンプル・プレイバックタイプの音源。録音の状態も良く、聴き心地の良い出音をしている。Close・Near・Roomの3マイクでサンプルが収録されていることも、高品質な出音に貢献している印象だ。
2. ユニゾン/ダブルで鳴らせる
MOJO 2で便利なのが、Ensembleという機能。これは同一楽器の人数を増やせる機能だ。まるでシンセのボイス数を上げてDetuneを行うかのごとく、ユニゾンで音を鳴らすことが可能。
この機能のおかげで、各トラックをステレオ化&ダブルトラックにして、LRに振って鳴らすようなことも簡単にできる。この機能は相当便利。Sample ModelingやNI Session Horns Proだと、ダブルで鳴らすのはそこまで簡単ではないのだ。
今回のデモ音源では各パートをダブルで鳴らしているが、最大10人までのユニゾンが可能。これは結構すごい。例えばオーケストラっぽいサウンドを狙って、あえてホルンを6人くらいでユニゾンさせて、一つのラインを演奏させるようなこともできてしまう。
このMOJO 2、基本的にはジャズやファンク等の音楽での利用を想定していると思う。だけど、このユニゾン機能のおかげで、MOJO 2をオーケストラのブラス音源として利用する可能性も見えてくる。
3. セクションで鳴らしたときの一体感が良い
音に表情がきちんとあって、サンプルのピッチに適度に揺らぎがある。その結果、トランペット・サックス・トロンボーン等で一斉に演奏したときの、音の広がりは極めて豊かだ。
NI Session Horns Proも同じサンプル・プレイバック方式だが、MOJO 2の方が格段に豊かな響きをしていると感じる。
4. ベロシティレイヤー間のつながりが自然
今回のデモでも登場する、「フォルテピアノからのクレッシェンド」的なフレーズ。生の楽器を想定してみれば、「音量」だけではなく「音質」も一緒に変わっていくことはイメージできるはず。そのため、打ち込みで再現するにあたっては、音量だけでなく、音質も徐々に変化させていくのが理想的。
MOJO 2なら、そのような表現も可能。Control Dynamicsを「CC」に設定し、MIDI CC11等にアサインする。それからエクスプレッションを描いてやれば再現可能だ。
MOJO 2は4レイヤーで構成されている音源だが、各ベロシティレイヤーのつながりは自然で、どこでレイヤーが変わったのか気づきにくい。pからfまでのクレッシェンドも、問題なくこなせそう。
5. デフォルトのパッチが使いやすい
MOJO 2のデフォルトのパッチは、使いやすくて良い。
- デフォルトでも、キースイッチに各奏法がアサイン済みになっている
- キースイッチはC0(中央ド=C3で換算)から始まる標準的な割り当て。任意に変更も可能
- 各楽器でキースイッチが統一されている
- 余計なエフェクトが掛かっていない
- 音量レベルが大きすぎたりしない
ちゃんと使う人のことを考えてパッチが組まれているようで、好印象だ。
6. 音源の設計が比較的柔軟
Kontaktという汎用エンジンを使った音源ではあるが、各奏法は割と柔軟なエディットが可能。
- 発音後に音量が変わり得る「Sustain」の奏法は、CCでダイナミクスをコントロールする
- 「Staccato」の奏法は、ベロシティでダイナミクスをコントロールする
こういった使い分けも可能だ。
惜しいところ3つ
1. 音のハリは控えめ
ジャズや大人っぽいビッグバンドを想定しているのか、MOJO 2は比較的、音が柔らかめ。Sample ModelingやKick Ass Brassみたいな「バリーン!」という感じの派手さは無い。
実際、公式デモにもある、某グラミー賞受賞歌手が参加した有名曲のカバーを聴いても、音のハリはもう一息な感じ。
元気な曲を作る場合、MOJO 2をベースにして、にぎやか系の音源を(トップのトランペットだけでもいいので)レイヤーしてやるのが良いかなと思う。
2. 一部サンプルで耳に痛い成分アリ
トロンボーンをスタッカートで鳴らしたときに、10kHzあたりにある金属音が少し気になった。今回のデモでも、トロンボーンは12kHzをピーキングで広めに5dBほどカットしてある。
もっとも、適切にEQ処理すればなんとかなるレベル。Sample Modelingに比べれば、ミックスはやりやすい音源だと思う。
3. シリアル発行の流れが面倒
MOJO 2はシリアル発行の流れが少し煩雑。わらしべ長者みたいなことをさせられるので、落ち着いて作業を進めよう。次のような流れで、最終的な製品シリアルが発行されることになる。
- 購入したショップからActivation codeが送られてくる。
- Best Serviceのサイトにアクセスし、ポータルにログイン。Registrationから、Activation codeを入力して製品登録する。「Serial Number / License Code」が発行される。
- 「BFA_Installation_read_first.pdf」の指示を参考に、bigfishaudioのポータルサイトにログインし、「REDEEM CODE」のページにアクセスする。
- (氏名とEmailの欄が入力済みになっている状態で)「Redemption Code」の欄に、Best Serivceのポータルサイトで取得したシリアルを入力する
- このbigfishaudioのポータルにて、ようやく製品シリアルと、DLリンクが発行される。
※最後に発行された製品シリアルは、NI Native Access上で入力することになる。
覚え書き
トランペットの最高音はE♭6
トランペットの最高音は、E♭6となっている(中央ド=C4換算)。「C6までしか鳴らせないやんけ!」と話す外国人の動画を見たことがあるが、アップデートで改良されたのかもしれない。
初回導入時にはBatch re-saveを推奨
たとえば「Alto Sax 2.0.nki」というパッチのロード時間は、Batch re-saveの有無で次のように変わる。
- Batch re-save前:11.68秒
- Batch re-save後:1.43秒
というわけで、Batch re-saveをしたほうが、圧倒的にロード時間が短くなるようだ。
ライブラリのサイズは約66.5GB
どこにも正確な情報が書いていないのだが、ライブラリのサイズ(=フォルダがストレージを消費する量)は、だいたい66.5GBだ。サンプルはnkc形式で圧縮されている。
おわりに
購入前に国内外のネットのレビューを熟読したときは、良い評価と同じくらい、良くない評価も多い印象だった。だけど、実際に購入して使ってみると、巷の評判よりも遥かに良い音源だと感じた。
2021年の夏に2.0と称してアップデートが行われたのも、もしかするとクオリティの向上に一役買っているのかもしれない。
※MOJOが2になったという意味ではなく、MOJO 2がアップデートでVer 2.0になったいう意味。分かりづらいですね。
Sample ModelingやAudio Modelingのブラス音源も良いが、MOJO 2はそれとはまた別のベクトルの、高品質なブラス音源だといえそうだ。ソロ演奏ではSample Modeling/Audio Modelingが依然ベストだと思うけど、今回のデモのようにセクションで鳴らす場合は、MOJO 2がファーストコールになりそう。