坂本真綾「トライアングラー」のコード進行を徹底分析 ~半音転調は突然に~

「トライアングラー」は坂本真綾の15枚目のシングル曲だ。TVアニメ「マクロスF」のオープニングテーマにもなっている。

作曲・編曲は菅野よう子氏が手がけている。キャッチーなメロディと歌詞が印象的な曲だが、じっくり分析してみると、要所に仕掛けが散りばめられていることがわかる。

「トライアングラー」 Music Clip – YouTube

今回はこの曲のコード進行を分析してみる。

  • コードは耳コピで採譜しています

コード進行

サビ(Key = Am → Bbm)

| Am |  | C/G |  |
| FM7 |  | Gsus4 |  |
| Bbm | Db/Ab | GbM7 | Dbadd9/F |
| Ebm7(9) | Fm7 |

頭サビで曲がスタートする。

サビはVImから1段ずつ降りていくタイプの、いたってノーマルなコード進行だ。しかし、9小節目のサビ繰り返しの部分から、突然半音上(Key = Bbm)に転調する。この意表を突いた転調が、この曲の一番の特徴といえるだろう。

さらに、これだけでは終わらない。Key = Bbmとなった後の部分では、メロディは1小節目~と同じなのにもかかわらず、コードチェンジのタイミングが速くなっているのだ。

※コードチェンジの頻度は、8小節目までは2小節ごとだが、9小節目以降は1小節ごとになっている。

トゥーファイブ化したり、代理コードにしたりと、コードの機能を変えずにリハーモナイズすることはよくある。しかし、このようにコードチェンジの頻度を増やすことでリピート部分に変化をつけるタイプの仕掛けは珍しい。

シンプルなメロディの繰り返しであっても、こういった工夫を凝らすことで、メロディに奥行きや深みを持たせることができる。そんなことを教えてくれるセクションだ。

イントロ(Key = Bb)

| Bb Bbsus4 Bb  | Bbm7 Eb/Bb |
| Bb Bbsus4 Bb  | Bbm7 Eb/Bb |

イントロでは、それまでの「Key = Bbm」から「Key = Bb」へと、同主調に転調する。このイントロ部分は、ルートのBb音をペダルポイント的に固定しつつ、「コードの明るさを決定づける3度の音」を動かすことで、展開を作っているのが特徴だ。

途中でBbm7(Im7)が挟まれていることにも注目したい(これは非ダイアトニックコード)。あえて転調前の調性感を匂わせることで、「Key = Bb ~ Key = Bbmを行き来する」という後の展開を予感させているのかもしれない。

Aメロ(Key = Bb)

| Bbadd9 |  | Db/Gb | Abadd9omit3 |
| Bbadd9 |  | Db/Gb | Abadd9omit3 |
| Gm | Dm/F | EbM7 | F |
| Gm | Dm/F | EbM7 | DbM7 |
| Cm7(9) |  | G D F C | G |

前半8小節は、シンプルに表すと「I → VIb → VIIb」という進行になる。非ダイアトニックコードを駆使した、浮遊感のあるコード進行だ。3度を抜いたり9thのテンションを付加したりしているのも、浮遊感を出すのに一役買っている。

9小節目以降はVImから始まるマイナー調の進行。ごく普通の進行だが、16小節目でDbM7(IIIbM7)を挟んでいることに注目。これがちょっとしたスパイスになっていて、一味違う雰囲気を演出している。

終わりの19~20小節目は、各パートがルート音をユニゾンするようなキメになっている。ここは和音ではなくルート音のみとなるので注意。

Bメロ(Key = Bb)

| Cm7/F |  | Dm7/G |  |
| Cm7/F |  | Dm7/G |  |
| Cm7/F |  |
| Gm | F#aug | Bb/F | C7(9) |
| EbM7(9) | Abadd9 | F7sus4 | G7sus4 |

(Degrees)
| IIm7 on V |  | IIIm7 on VI |  |
| IIm7 on V |  | IIIm7 on VI |  |
| IIm7 on V |  |
| VIm | V#aug | I on V | II7 |
| IVM7 | VIIb | V7sus4 | VI7sus4 |

本来は「V → VIm7」となるところを、「IIm7 on V → IIIm7 on VI」とリハーモナイズさせている。「IIm7 on V」型のコードが続くことによって、浮遊感が出ているのがわかるはず。

このひとかたまりを2回半演奏した後は、VImからの下降系クリシェ。セクションの終わり2小節では、7sus4のコードを連続させる形で、次のセクションで転調させるためのきっかけを作っている。

間奏・前半(Key = Bb)

| Abadd9 | Gbadd9 | Dbadd9 | Badd9 |
| Abadd9 | Gbadd9 | Dbadd9 | Badd9 |

(Degrees)
| VIIb | VIb | IIIb | IIb |
| VIIb | VIb | IIIb | IIb |

2サビ後の間奏部分の前半。静かなところだ。

「キーはイントロと同じくBbだが、非ダイアトニックコードを登場させている」と解釈するのが自然だろう。いずれのコードも、準固有和音や、サブドミナントマイナーの代理コードとして説明が可能だ。

間奏・後半(Key = Bbm)

(※すべてomit3)
| Eb F Gb F | Eb F   |
| Eb F Gb F | Eb F Ab Gb |
| Eb F Gb F | Eb F   |
| Eb F Gb F | Eb F Bb Ab |

2サビ後の間奏部分の後半。

コードはすべて3度の音を抜いており、リフ的なセクションになっている。キーについては、使われている音から推察すると、Key = Bbmと解釈できそうだ。

Dメロ

| G7sus4 |  |  |  |
| G7sus4 |  |  |  |

英語のボーカルが入ってくる部分だ。※便宜上Dメロとしている。

次のセクション(サビ)につなげるために、G7sus4を8小節鳴らしている。直前のコードがAb(omit3)なので、このG7sus4というコードに自然につながっているのだ。

※なぜなら、AbはG7に対するドミナントの役割になるからだ(半音上から解決するパターン)。

3サビ前半(Key = Am)

| Am |  |  |  |
| Am |  | C/G  |  |
| Am |  | C/G |  |
| FM7 |  | Gsus4 |  |

ラストサビの頭に挟まれる、少し静かなセクション。コーラスワークが印象的だ。

なお、当セクションの後は普通にサビを演奏するが、ラストのブレイクでは尺が1小節だけ増える。それに合わせて、歌のラストフレーズの開始タイミングが変わるので注意。

エンディング(Key = Bb)

| Bb Bbsus4 Bb  | Bbm7 Eb/Bb |
| Bb Bbsus4 Bb  | Bbm7 Eb/Bb |
| Bb Bbsus4 Bb  | Bbm7 Eb/Bb |
| Bb Bbsus4 Bb  | Bbm7 Eb/Bb |
| EbM7(9) Dm7/G Cm7(9,11) |

エンディングはイントロとだいたい同じ。イントロと同じ進行を2倍の尺に伸ばし、最後にコード3つをキメて終了。

最後のコード3つは、トップノートの「D→C→Bb」というラインに合わせて「EbM7(9) → Dm7/G → Cm7(9,11)」という進行になっている。ここはディグリーで表すと「IVM7 → IIIm7 on VI → IIm7」となる(ルートだけを追うと4-6-2)。「IIm7 on V」型にリハーモナイズしたり、テンションを付加したりすることで、浮遊感を出しつつ曲の最後を締めくくっている。

まとめ

コード進行のポイントをまとめてみる。

  • 突然の半音上への転調@サビ後半
  • Bメロの「V → VIm」を「IIm7 on V」型コードでリハモ
  • 間奏前半の非ダイアトニックコードの応酬
  • 曲の最後の「4-6-2」with リハモ

キャッチーで分かりやすいメロディとは対照的に、アレンジ面では情報量も多く、展開も盛りだくさん。聴き応えのある一曲だ。

マクロスF VOCAL COLLECTION「娘たま♀」