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【レビュー】RME Fireface UCX IIは全ユーザーが待ち望んだ最高のオーディオインターフェイスです

2021年8月、RME Fireface UCX IIが満を持して発売された。RMEとしては実に9年ぶりのハーフラック製品だ。誰もが待ち望んでいたであろうRMEのオーディオインターフェイスが、ついに登場してくれたのだ。

Fireface UCX(2012年製)ユーザーや、それ以前のFireface UC(2009年製)ユーザー、ひょっとするとFireface 400(2006年製)ユーザーに至るまで、多くの人々がこの日を待ち望んでいたのではないだろうか。

Fireface UCX IIの良いところ7つ

1. Steady Clock FSがもたらす高音質

従来より音質に定評のあるRME製品だが、Fireface UCX IIは一味違う。ハーフラック以上のオーディオインターフェイスの中では、初めてSteady Clock FSが搭載されたからだ。

オーディオインターフェイスで音を美しく表現するためには、クロックの精度が重要。一方で、RME製品のクロックが刷新されたのは、ここ10年くらいでは1度きり(*)だ。10年の間にRME製品はいくつも発売されているにも関わらず、だ。

*2018年のSteady Clock FS発表時のみ。

クロックがひとつの進化を遂げたこの段階で、RMEのインターフェイスを購入することは、きっと賢明な選択だ。長い目で見てコスパの高い投資となってくれる可能性が高い。

2. 必要十分な入出力端子

過不足のない十分な入出力数を持っていることは、Fireface UCX IIの魅力のひとつだ。Fireface UCX IIのアナログ入出力数を見てみよう。

  • アナログ入力:8つ
  • アナログ出力:6つ(ヘッドホン端子除く)

アナログ機材を使う人から、そうでない人まで、様々な人々の制作環境を十分にカバーできる入出力数だといえる。

仮に将来機材が増えて、入出力端子が不足してしまった場合でも、Fireface UCX IIにはデジタル端子が搭載されている。別途ADAT端子付きのAD/DAコンバーターでも購入すれば、簡単に入出力数を増やすこともできる。

3. DSPエフェクトによる録音時の快適なモニター音

Fireface UCX IIには、DSPエフェクトが搭載されている。ダイナミックレンジの大きい歌やベース、アコギといったパートをレコーディングをする人にとっては、非常に強力な機能だ。なぜって、適切なEQやコンプが掛けられたモニター音は、レコーディング時の奏者のパフォーマンスを確実に向上させてくれるからだ。自分の出す音がある程度、一定の音量で聴こえてくれたほうが、演奏はしやすいのだ。

このDSPエフェクトのメリットはなんといっても、レイテンシー無しに、モニター音だけにコンプやEQを掛けられるということだ。おかげで、

  • シンガー(演奏者)のモニター音にはEQやコンプが掛かる ⇒ 歌いやすく(弾きやすく)なる
  • だけど、実際に録音される音にはEQやコンプは掛からない

という状態を作ることができる。

設定画面で「EQ+D for Record」のチェックを外せば、聴こえてくる音にはエフェクトが掛かるが、録音される音にはエフェクトが掛からないようにできる。

レコーディングクオリティのコンプを持っていない人には、大変嬉しい機能ではないだろうか。

仮にDAW上でプラグインを掛けてモニタリングするやり方だと、どうしても数ms程度のレイテンシーが発生してしまう。このせいで歌いづらくなったり、音の録音位置が意図したタイミングではなくなったりしてしまう。一方でTotalMix FXのDSPエフェクトは、バッファサイズに関係なく、エフェクトを掛けた音を遅延なしに聴くことが可能だ。

このDSPエフェクトは、以前からFireface UCX等をお使いの方にはおなじみの機能だと思う。しかし、それ以前のRME製品には付いていなかったり、2020年発売のBabyface Pro FSでもなぜかコンプだけが付いていなかったりする。UCX IIには無事に搭載されたので、安心してレコーディングで活用することができる。

4. 最高レベルの安定性

Fireface UCX IIをはじめとしたRMEのインターフェイスは、動作が非常に安定している。

もっとも、これは今さら言うまでもないことかもしれない。かつてWindows環境においてDAWの動作が不安定だったときから、RME製品の安定性には定評があったのだから。

5. 低いレイテンシー

RMEのインターフェイスは、レイテンシーが低い。

キーボードを演奏してから、実際にソフトシンセの音が出るまでのブランクは、一瞬であってほしい。レイテンシーが低ければ、そのブランクを限りなく短くできる。

6. TotalMix FXがもたらす自由自在なルーティング

RMEのインターフェイスには、TotalMix FXというミキサーソフトが搭載されている。

  1. RMEのインターフェイスに入力される音声信号
  2. RMEのインターフェイスから出力される音声信号
  3. PCの内部の音声信号

これら3つの音声信号を、自由自在にルーティングさせられるのが特徴。他社製品では類を見ないほどの、高い性能を誇る。

7. DIGICheckで音を視覚的に分析可能

RMEのインターフェイスでは、DIGICheckというメーターソフトを使うことができる。4-Bar Level Meter(RMSメーター)で音圧レベルを確認したり、Totalyserで楽曲の帯域バランスやステレオイメージを確認することができる。

前述のTotalMix FXと併用すれば、DAWの音声だけでなく、YouTubeやSpotifyの音声も併せてメーターに表示させることも可能。

DIGICheckはハードウェアに組み込まれているため、DAWを起動しなくても使えるのが魅力だ。



本体の画像

前面

Fireface UCX IIの前面はこのようなデザインになっている。銀地に一部青塗りという、Fireface 802(2014年製)以降のRMEインターフェイスのデザインを踏襲したデザインとなっている。

左側にはマイクプリのついた端子2つと、ライン/インスト入力が可能な端子2つが並んでいる。右側の青塗り部分には、ヘッドホン端子・ディスプレイ上で操作するためのスイッチ・ディスプレイ・ロータリーエンコーダーが見える。

ロータリーエンコーダーを押すと、電源がONになる。電源をOFFにするときはロータリーエンコーダーを長押しする必要がある。

背面

ハーフラックのボディに、無駄なく入出力端子が詰め込まれている。MIDI端子がブレイクアウトケーブルでなくなったのが、個人的には嬉しい。

ディスプレイについて

UCX IIに出入りする音声信号が、カラーディスプレイ上に表示されるようになっている。クロックソースや、接続されている端子の状況等の情報も表示される。

音質について

僕はこれまで楽曲制作において、長らく同社のFireface UCを使ってきた。そこで、UCとUCX IIの音質比較をしてみたい。

結果を簡潔にまとめると、次のとおりだ。

  • 再生音質の変化:音の細部まで聴こえるようになり、低域から高域までワイドレンジに聴こえるようになった。特に低域の太さが向上した。
  • 録音音質の変化:低域がハッキリと太い音で録音できるようになった。全体の解像度も若干上がった。

録音・再生ともに、明らかに音質がアップしたと感じている。AD/DAコンバーターやクロックの品質が向上したのが、主な理由だろう。

なお、Fireface UCX IIとBabyface Pro FSとの音質差が気になっている人がいるかもしれないので、それについても触れておきたい。実際に比較したのは再生音のみだが、Fireface UCX IIの方が、Babyface Pro FSよりも良い音だと率直に感じている。

詳しい音質比較については、別の記事で行うこととする。

RME製品3つの音質比較:Fireface UCX II vs. Fireface UC vs. Babyface Pro FS


開封の儀




UCX IIが入っている化粧箱。RMEらしい、おなじみのデザインだ。







箱を開けると保証書が出てきた。







ビニール袋に包まれたUCX IIとご対面。







UCX II本体の下には、アダプターとケーブル類が隠れていた。







内容物一覧。左から順番に、アダプター用メガネケーブル、ACアダプター、USBケーブル、ゴム足、デジタル端子用のブレイクアウトケーブル、角型デジタルケーブル。







メインの箱に積み重ねられる形で、白くて薄い箱もある。







白くて薄い箱の中には、日本語マニュアル冊子やDIGICheckのマニュアル冊子が入っている。日本限定の付属品なのかもしれない。



その他覚え書き

アダプターはロック仕様

アダプターをFireface UCX II本体に差し込むときは、次の手順で行うと良い。

  1. アダプターのプラグ部分の切り掛けを、本体の差し込み口と合わせる。
  2. プラグを差し込んで、回転させる。

これでロックが掛かり、ケーブルが簡単に抜けなくなる。位置を合わせずにテキトーに差すと、奥まで差し込めなかったり、ロックできなかったりするのでご注意を。

旧世代のラックマウントアダプターは使えない

これまでハーフラックサイズのRME製品を、ラックにマウントして利用してきた人は、少し注意が必要。旧世代のラックマウントアダプターである、RM19(もう売っていない)は、UCX IIでは使えないからだ。モデルチェンジ後の「RM19II」を使う必要がある。

ワクワクしながらUCX IIを迎え入れたのに、いざラックマウントしようとしたら、ネジの位置が合わなくてしょんぼり。サウンドハウスからRM19IIが到着するまで、2~3日はラックに直置き。そんなことにならないよう、事前に準備しておきたい(経験者談)。




Fireface UCX IIはこんな人にオススメ

  • 高音質なインターフェイスが欲しい人
  • 動作が安定しているインターフェイスが欲しい人
  • だけどBabyface Pro FSじゃ入出力数が足りない人

これらの条件に当てはまる人は、UCX IIを買えば間違いない。逆に、ハード機材やアウトボードを一切使わない人は、Babyface Pro FSで十分(音質に大きな差は無いので)。

多くのユーザーにとっては、UCX IIが最もしっくりくるインターフェイスなんじゃないかと、僕は予想している。