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Windows 11へDAW環境を移行してみた:感想と注意点

はじめに

2025年10月14日でサポートが終了するWindows 10。皆さんはもうWindows 11へ移行しただろうか。

筆者は先日、ついにWindows 11へ乗り換えた。音楽制作者にとってパソコンは、膨大なソフトウェアが入っているデバイス。できることなら面倒なクリーンインストールなどしたくない。

当初はMicrosoft Rewardsを貯めてWindows 10を「延命」することも考えた。しかし、いずれは必ずWindows 11へ移行する日が来る。仕事が落ち着いたこのタイミングで、5年前に自作した音楽制作用デスクトップPCにWindows 11をクリーンインストールすることにした。

せっかくなので、その移行記録をここに残しておきたい。

Windows 11を導入した流れ

筆者が行ったクリーンインストールの手順を、簡単に記しておく。

1. OSのイメージバックアップ

クリーンインストールでは今使っているOSは消えることになるため、万が一に備えて旧環境のイメージバックアップを取った。使用ソフトは「Acronis True Image 2018」だ。

2. アクティベーション解除

DAW関連のプラグインやソフトは、アクティベーション解除を実施した。iLok管理のもの、独自のアクティベーション方式を持つものなど様々なので、事前にメモを取りながら効率的に解除していった。

※当ブログでも参考情報をまとめてあるので、ご参考までに。

DAW環境でアクティベーションを解除すべきソフトのまとめ

3. クリーンインストールを実施

Windows 11のインストーラーをUSBメモリに入れ、UEFI BIOSで起動優先順位をUSBに設定し、インストールを行った。インストールはわずか7〜8分で完了。今さらいうまでもないことだけど、SSDは速くてよい。

Windows 7時代にDVDからインストールし、延々とアップデートを繰り返していた頃を思うと、本当に便利になったものだ。

4. 環境構築

  • マザーボードやビデオカードのドライバ
  • DAWソフト(Cubase Pro 12)
  • VSTインストゥルメント(Serum 2とか)
  • プラグインエフェクト(FabFilterとか)
  • その他、必要なソフト各種

これらを片っ端からインストール。その後、Windows 11の設定を調整し、全般的なセットアップを行っていった。

初めてのWindows 11ということもあり、調べ物をしながら進めた結果、セットアップ全体で5日も費やすことになってしまった。

クリーンインストールで大変だったこと5つ

1. Windows11のライセンス認証が通らなかった

前もってWindows 11に環境移行していた事務用PCでは問題なかったのに、音楽用PCではWindows 11のライセンス認証が通らなかった。

原因は「パソコンとOSのデジタルライセンスが紐づけられていなかった」ことだ。音楽用PCでは事務用PCとは違って、一度もMicrosoftアカウントにログインしていなかったのだ。

以下の流れで対処を行った。

  1. True Imageのバックアップを使って、Win10の環境を復元。
  2. Win10環境でMicrosoftアカウントにログイン。「Windowsは、Microsoftアカウントにリンクされたデジタルライセンスによってライセンス認証されています」と表示されていることを確認する。
  3. 再度Win11をクリーンインストール。
  4. インストール完了後、Win11でMicrosoftアカウントにログインした後、Windowsのプロダクトキーを入力する。失敗するので、「トラブルシューティング」をクリックする。
  5. 「このデバイス上のハードウェアを最近変更しました」をクリックし、ハードウェアを変更したパソコンをオンラインで指定する。
  6. ライセンス認証が通る。

この流れで、なんとかライセンス認証を通すことができた。期せずして、OSのロールバックを行うハメになってしまった。

安全志向の人は念のため、クリーンインストールの前にMicrosoftアカウントにログインしておくのが無難だと思う。

2. OSの細かい仕様が変わっていた

Win10とWin11では、OSの細かい仕様が変わっている。

  • タスクバーのアイコンの位置が中央になった
  • 普段別のホットキーを割り当てている「PrintScreen」キーに、デフォルトでキャプチャコマンドがアサインされてしまっていた
  • エクスプローラーでファイルを表示させる際に行間が広くなった

などなど。

※もっとも、例に挙げたこれらはすべて設定で変更可能だが。

OSの仕様変更に伴い、気に入らない場所を設定から調整するなどの工夫が求められた。

3. Softubeプラグインがブロックリストに入った

Softube製プラグイン(例:FET Compressor Mk II)のVST3版が、Cubaseでブロックリストに登録されるというトラブルが発生してしまった。Steinberg Forumsの情報によれば、iLokのバージョンによっては同様の問題が起きるとのことだ。

(参考)Blacklisted Plugins - What's up? - Cubase - Steinberg Forums

しかし、iLokドライバを前のverに戻しても解決せず。最終的にはSoftubeの最新版プラグインをインストールすることで、問題を解消した。

筆者は普段、互換性を優先し、プラグインの最新版を安易にインストールしないようにしているのだが、こういうこともあるのだなぁ……と勉強になった。

4. Kontakt 6(VST2)がインストールできなかった

Native Instrumentsの「Native Access」の仕様変更により、Kontakt 6はVST3版のみがインストールされ、VST2版はインストールされなくなってしまった。

このことで苦労した。Cubase内部で使うKontaktは、とっくにVST3に移行済み。しかし、彼らの製品開発の都合でVST3への対応が遅れていたVEP(Vienna Ensemble Pro)においては、これまでもVST2のKontaktを使っていた。その結果、既存のVEPのテンプレートが読み込めず苦労することになった。

NIのサイトでKontakt 6(VST2)のレガシーインストーラーを探したが、どうにも見つからない。

結局、旧環境(Win10)のシステムイメージから「Kontakt.dll」を抽出し、現環境のVST2フォルダに配置するというアクロバットによって、VST2版のKontakt 6を復元することになった。

その後、VEP上のKontaktを、VST3版に移植していくことになった。

5. VEPのバグでテンプレートが作り直しになった

VEP×Kontaktの話は、まだこれで終わりじゃない。実はVEPは現在、次のような問題を抱えている。

VST3版のKontaktを、VEPの同じインスタンスに2つロードすると、VEPがクラッシュする

確定クラッシュ時に表示される画面のスクショ。

このことは海外のフォーラムでも報告されている。

Vienna Ensemble Pro 7では、インスタンス内でKontakt 6 VST3プラグインを1つしか起動できません。同じVEPROインスタンスの別のチャンネルで2つ目のKontakt 6 VST3プラグインを開いた瞬間、VEPROがクラッシュしてしまいます。(中略)

VEPro7でKontakt 6と7(両方ともvst3)で同じ問題が発生します(中略)(Kontakt 6 vst2 は今のところ問題なく動作しているので、彼らの側の問題だと思います!)

出典(原文は英語):Kontakt 6 VST3 crashes in VEPRO - Community

この件に関連があるかは不明だが、VSL社としては、すぐにVST3周りの不具合解消をする予定はないらしい。

(彼らに時間がないってどういうこと?どうしてそんなことが分かるの?開発チームの事情や彼らが何に取り組んでいるか、ちゃんと知ってるの?秘密を明かしてくれ!)

iLok/VST3 移行以降に不具合が発生した VEP 7 の一部について、VSL に修正を依頼している私たちの何人か(中略)は、ここや VSL フォーラムで VSL の担当者から同じことを言われました。

出典(原文は英語):Vienna Ensemble Pro 7 Crash Problems | VI-CONTROL

筆者はこれまで、VEPの1インスタンスに複数のKontakt(Vn1~Vcまで4つとか)をロードする運用方式を採用していた。しかしこのバグによって、VEPのテンプレートをすべて作り直す必要が出てきてしまった。

幸いにして、1インスタンスに1つのKontaktをロードする現在の運用方式おいては、特に問題なくVEPを使えている。

6. 予想以上にセットアップに時間がかかった

筆者はミニマリスト志向なので、普段インストールするVSTインストゥルメントやエフェクトは必要最小限に抑えている。

そのためドライバやソフトのインストール自体は1~2日で完了した。しかし実際に作業してみると、環境を整えるためのセットアップには想像以上に時間がかかった。

例を挙げると、

  • Cubaseの環境設定の復元(バックアップしたxmlファイル各種をフォルダに突っ込んでいく作業)
  • 各種VSTのユーザープリセット復元
  • ドラムのキーマップの復元
  • プラグインを起動した瞬間に「自分用プリセット」が即読み込まれる設定づくり

といった「仕込み」の作業だ。これに加えて、前述の、「Kontakt 6のVST2版がインストールされない問題」や「VEPの不具合」の対処にも時間を割く必要があった。

結果的に、Cubaseプロジェクトが問題なくリコールできるかの確認も含め、Windows 11のセットアップ全体に丸5日かかってしまった。日々楽曲制作に取り組む身としては、かなりのダウンタイムだったといえよう。

おわりに

久しぶりにWindowsのクリーンインストールをしてみて、いかにPCのセットアップが大変かが身にしみて分かった。

やはりクリーンインストールには時間がかかる。とりわけ音楽制作環境では、規模にもよるが、セットアップに3日〜1週間は見ておいたほうがいいのかなと思った。

最後になるが、今回も助けられたバックアップソフト「Acronis True Image 2025」を紹介しておきたい。

Acronis True Image 2025 3PC

同製品は一時期はサブスクのみになってしまっていたが、待望の永続版(買い切りライセンス)が、2024年の下半期ころに復活した。バックアップソフトとしては、何だかんだで一番頼れるソフトだと思うし、今回のクリーンインストールでもだいぶお世話になったので、オススメします。

筆者も長らくTrue Image 2018を使っていましたが、Windows 11の導入を期にTrue Image 2025を導入し、快適に使用できています。