音楽家は、音を出さなきゃ始まらない。作曲家は音楽を作るためにスピーカーで音を鳴らす。演奏家は楽器を演奏して音を奏でる。
だけど、気軽に音を出せる環境は簡単には手に入らない。僕も昔、部屋探しで苦労したことがある。楽器可物件にするかどうか、防音室を入れるかどうか、家賃はいくらになるのか。考えることが多いし、人によって適した環境も変わってくる。
今回は、音楽家のための部屋探しについて記事を書いてみる。集合住宅の賃貸物件で音を鳴らすためにはどうすればいいのか。楽器の音圧レベル等の具体的なデータも交えつつ、部屋探しの際に把握しておくべきポイントについて、僕の経験をもとに紹介していくので参考にしてほしい。
目次
自分の楽器(歌・スピーカー)の音圧レベルを把握する
まずは、自分の楽器(歌・スピーカー)の音圧レベルを把握する必要がある。主な楽器の音圧レベルについては、色々なサイトで詳しくリストアップされている。
こういったサイトをじっくり読み込んで、自分が出そうとしている楽器(歌・スピーカー)が、どの程度の音圧レベルなのかをまず把握してほしい。
音圧レベルを測定できるスマホアプリもある。測定の正確さは業務用機器には及ばないかもしれないが、データが無いよりはずっと良いので測定してみよう。
スピーカーの音圧レベル
スピーカーは音量を好きなように変えられるので、正確に音圧レベルを定義することは難しい。
そこで、作編曲・ミックス等の作業でスピーカーを使う上で、どの程度の音圧レベルが必要なのか、私見を述べておきたい。個人的には80dBA SPL程度の音圧レベルがあれば、ミックス作業を行う上でも困らないと感じる。少なくとも「モニター音量が小さすぎて、ミックス作業に支障が出る」ということはないはず。
プロエンジニアが業務スタジオでミックス作業をしている様子を見ていると、もう少し大きな音を出していることが多い(90dBAは出ていると思う)。ただ、作曲家の自宅作業では、それよりも小さい「長時間聴いていても疲れない音圧レベル」に慣れるのが良いと感じる。そこで、80dBA SPLを目安に考えていきたい。
そして、この80dBAという騒音レベル。「作りのしっかりした鉄筋コンクリート造(以下RC造)のマンションなら、音が漏れない or 生活音レベルの音漏れで済むこともある」という絶妙なラインだと思う。楽器可物件でなくとも作業が可能になるかもしれないので、物件を選ぶ際はじっくり検討する必要が出てくる。
ボーカル(ポピュラー音楽系)の音圧レベル
ボーカリストの声量次第で大きく変わってくるだろうが、少なくとも90dBA程度は発生すると考えたほうがいい。さすがにこのレベルになってくると、作りのしっかりしたRCマンションであっても、音漏れが発生してくる可能性がある。
自宅で本格的に歌う必要がある場合、楽器可物件にするか、楽器不可物件なら防音室の導入も検討する必要がある。
アコースティックギターの音圧レベル
ボーカルより少し小さい、80~90dBA程度の音圧レベルとなる。大きめの音でストロークをすると90dBA程度は出てくる。指弾きのアルペジオとかならそこまで大きくなく、70~80dBA程度だろう。
思いっきりアコギを演奏することを考えると、楽器可物件にするか、防音室の導入が必要になってきそうだ。
グランドピアノの音圧レベル
90~100dBAは出ている。ffで強く弾くと相当音が大きいので100dBA以上出ているかも。
賃貸住宅の場合、多少なりとも音は漏れると思われるので、楽器可物件にすることは必須だと思われる。もちろん防音室導入という手段もあるが、楽器のサイズが大きいので割高になりそう。
その他の楽器の音圧レベル
金管楽器(トランペット)、打楽器(ドラム)、アンプを通したエレキギター。こういった楽器は非常に音が大きい。音圧レベルでいうと、100dBAはゆうに超えてくる。そのため、高い防音性能が必要になってくる。
※ギターアンプは音量調整が可能だが、真空管アンプの場合、良い音を出すにはある程度大きく鳴らす必要があるため、ここで取り上げる。
特に、低音の音漏れを防ぐのは物理的に難しいということもあり、集合住宅でドラムが叩ける物件を探すのは難しい。
※楽器可物件であっても、打楽器は禁止されていることが多い。
部屋の遮音性についての基礎知識
必ずRC(鉄筋コンクリート)造の部屋にする
音を出すことを考えるのであれば、鉄筋コンクリート(RC)造の物件にすること。
構造 | 遮音性能 |
---|---|
木造 | 低い |
鉄骨造 | 低い |
RC(SRC)造 | 高い |
木造や鉄骨造だと遮音性能が低いので、RC造にするのは必須。多少駅から離れていようが、築年数が経っていようが、家賃が高かろうが、田舎にあろうが、RC造にするのは必須。音楽のためには決して妥協してはいけない要素なので覚えておきたい。
RC造でも壁の遮音性には注意
RC造のマンションであっても、2部屋を1セットで作り、後から遮音性の低い素材で壁を付け足しているようなこともある。1K物件などではこういった仕様になっていることも多いが、こういう部屋は、当然となりの部屋に音漏れが発生しやすい。
部屋を内見する際は、必ず壁を叩いてみて素材をチェックしよう。コツコツとした、音が響かない硬い素材ならコンクリートなのでOK。「ボン」と音が響く場合は、遮音性の低い素材の可能性があるので注意。
裏側に響くような高い音がなったら、コンクリート壁ではなく、石膏ボードなど、防音性が低い壁である可能性があります。
出典:【ホームズ】防音性の高い賃貸物件を見分けるポイント! 住んでから実践できる騒音対策も紹介 | 住まいのお役立ち情報
低音の遮音には限界がある
物理的に考えると、低音ほど波長が長くなるので、他の障害物にぶつからずに進んでしまいやすい。そういったわけで、低い音ほど遮音するのが難しい。ヤマハのサイトで防音室の帯域ごとの遮音性能が紹介されているが、やはり図を見ると低い帯域ほど遮音性能が低いことが分かる。
(参考)ヤマハ | AMCC08H - 定型タイプの防音室 - 特長
「集合住宅ではドラムを叩ける物件を探すのが難しい」と前述したが、その理由としては、ドラム自体の音圧レベルが高いというのもあるが、バスドラムの低音を遮断するのが難しいというのも大きい。
楽器可物件について知っておきたいこと
音楽大学の近くによくある
「楽器可物件」とは、部屋での楽器演奏が許可されている物件のことだ。潜在的な需要が高いせいか、音大の近辺では物件を探しやすい。
防音性能はまちまち。音漏れの度合いもケースバイケース
「楽器可物件」と表示されていても、防音性能は物件ごとに異なっている。
- 本格的に防音している物件(家賃がとても高額)
- 軽く防音している物件(音大近辺に多い)
- 特に防音対策はしていない物件(オーナーの裁量で「楽器可」に)
2のタイプの部屋は、2重サッシ&全面コンクリート壁など、簡易的な防音がされている。そのため普通の部屋よりは遮音性が高いが、他の住人の演奏した音が漏れてくることも多い(これを「お互い様物件」と呼ぶ)。一応、気兼ねなく音を出すことはできる。
問題は3のタイプ。防音性能が低いのに大きな音の楽器をOKしているような物件だと、楽器可といえど苦情が来てしまう可能性が出てくるし、逆にこちらが騒音に悩まされてしまうかもしれない。
そんな状況を避けるにはどうすればよいか。正直住んでみるまで分からないことも多いし、運の要素が大きい。ただ、間違いなく言えるのは、音漏れの大きさは、
- 部屋の遮音性
- 他の住人が出す音の大きさ
この2点を元に決まるということだ。そこで、できる限りの対策をするため、僕は次の2項目を意識している。
1. 防音性能を把握する
1つ目は、部屋の防音性能に関する情報をなるべく集めるようにすることだ。まず、木造や鉄骨造を除外して探すことで、最低限の遮音性は確保できる。
それから、きちんと不動産屋さんに話を聞き、
- 壁の厚さ・材質(コンクリートかどうか)
- 「体感的な音漏れの度合い」はどの程度か
- 住人から騒音への苦情が発生することはあるか
こういった生の情報を得るようにするのが大事。
2. 演奏可能楽器を把握する
2つ目は、どういう楽器が許可されているのかを把握することだ。打楽器やギターアンプが許可されているような物件だと、並の防音性能では多少の音漏れは避けられない。
部屋の防音性能が大したこと無さそうな場合は、音圧レベルの高い楽器が許可されているようなことがないか、きちんとチェックする。
演奏時間のルールが明確に定められているか確認する
演奏可能時間がきちんと定められているかは大事なポイント。例えば「9~21時まで楽器演奏可能」というルールがあれば、少なくとも深夜に騒音に悩まされることはない。
「常識的な時間帯で」のようなあいまいな表現だと、人によって解釈が変わってしまうので、次のような不利益を被る可能性が出てくる。
- 本当は20時くらいまで演奏したいのに、18時までに制限されてしまった
- 土日は9時まで寝ていたいのに、隣人の早朝練習に起こされてしまう
集合住宅の楽器可物件だと、防音性能をどれだけ高くしていても、少なからず音漏れの可能性は出てくる。そんな状況では、演奏可能時間を明確に決めておくほうが、入居者にとっては断然メリットが大きいと僕は考える。
宅録(マイク録音)する人は少しリスクもある
マイク録音をする場合、周囲からの音漏れがあるような環境では、音漏れの度合いによっては録音に支障が出ることもある。
歌やアコースティックギター、バイオリンなどは、マイクで録音をする必要がある。こういった楽器を自宅で録音する人は注意が必要だ。仕事で宅録をする必要がある等、確実性を求める場合は防音室を導入すべきだろう。
なお当然だが、ライン録音の場合、音漏れは全く問題にならない。アンプシミュレーターを使ったギターや、DI直のベースはラインで録音することになるので、多少音漏れがある部屋でも録音に支障は出ない。
※とはいえモニタリングの音や、プレイヤーの集中力への影響はある。静かな環境のほうが良いのは言うまでもない。
防音室(防音ブース)について知っておきたいこと
静かな環境を確実に得られる
静かな環境を確実に得られるというのは、防音室を導入する最大のメリット。楽器可物件のように、隣人の騒音が原因で録音に支障が出るようなこともない。
人を招いて録音をするような場合は、特に役に立つ。もし防音ブースを使わずにゲストと同じ部屋で録音する場合、次のような手間が発生してしまう。
- ノイズが入らないよう部屋のエアコンを切る必要がある
- モニタースピーカーの音を消して、自分もヘッドホンでモニターする必要がある
防音室があればそんな煩わしさからも解消される。
大きくて場所をとる
※一部例外あり(後述)
人が中に入るためのものだから当然だが、防音室は自宅に置くとかなり大きく感じる。高さもあるので、狭い部屋だと圧迫感は出てくる。また、使っていないときは、防音ブースのある場所はデッドスペースになりがち。東京近郊など、地価が高い地域に住む場合は少しもったいない。
また、ヤマハのアビテックスなどの一部の防音室は、解体するのにもお金がかかる。
防音部材は重量が重く、安全面及び遮音性への考慮から、解体組立は全て専門業者で作業させていただいております。
引っ越し時に防音室を運搬することなども考えると、「防音室を導入するための潜在的なコスト」は、意外と高いのかもしれない。
暑い(エアコン無しタイプの場合)
※一部外あり(後述)
防音ブースの中は狭い上に気密性が高いので、熱がこもりやすい。そのため、夏場は演奏者やボーカリストが大変かもしれない。電話ボックス状のブースで歌を録っていたことで有名なPerfumeのメンバーも、次のように語っている。
―その後は中田さんスタジオのブースも広くなりましたよね。歌いやすくなりましたか? かしゆか: 暑さが無くなったというか、電話ボックスがすごく暑かったんですよ。(中略) のっち: 電話ボックスは空気がこもって結露するくらいだったよね。
熱中症になってしまってはレコーディングどころではないので、
- あらかじめブースがある部屋をエアコンで冷やしておく
- 休憩(換気)の頻度を多めにする
- エアコン付きのブースを導入する
このように気を配る必要が出てくるだろう。
録音するたびに防音室に入る必要がある
普段、防音室の外でDAW作業をしているという前提で話をする。自分の演奏(or 歌)を録音することを考えると、ブースは意外と不便だ。なぜなら、ブースの中からPCを操作する必要が出てくるからだ。何かしらPCを遠隔操作できるようなデバイス(タブレット等)は必要になってくる。
自分の演奏を録音するなら、正直ブースを使わないほうが手軽だし手間がかからない。「宅録界のマスター」とでもいうべき存在の冨田ラボ氏も、自身のアコギ演奏に関しては、PCが操作できる部屋で、普通にマイクを立てて録っているようだ。
※4:23~くらい
主にゲストを録るのか、自分を録るのか。この違いによって、ブースの存在価値も大きく変わってきてしまうだろう。ゲストを録る機会が少ないせいで、結局ブースが無用の長物になってしまった……そんな展開も想像できるので、導入の際は事前にじっくり検討したい。
また、宅録環境が昔より安価に用意できるようになったこともあり、現在は少なくともデモ段階(仮歌など)の録音は、奏者やボーカリストが自宅で録音してデータ納品をすることが主流となりつつある。そのため作曲家の立場で考えた場合、作業場にブースを導入することの価値は、昔よりも低くなっているといえそうだ。
主な防音室(防音ブース)について
別途記事を用意したので、そちらを参照してほしい。
上記記事でも紹介しているが、ISOVOX Isovox 2という「頭部のみのボーカルブース」もある。歌録りにしか使えないが、「暑い」「大きい」というデメリットを解消できる画期的な商品となっている。歌を録る必要がある人は、部屋を探す前にチェックしておくとよいだろう。
具体的な4つの選択肢
はじめにも書いたが、どのみち遮音性は大事になってくるので、楽器可物件かどうかに関わらずRC造の部屋を選ぶことは必須だろう。それをふまえて、
- 楽器可にするかどうか
- 防音ブースを入れるかどうか
この2点について考えていく必要がある。選択肢は4パターンある。
1. 楽器可物件×防音ブース無し
- 自宅で自分の歌や演奏をたまに録音する作曲家
- 自宅でゲストの仮歌等を録音することはあるが、本番の録音はしない作曲家
- ステージで仕事をしている楽器の演奏家・シンガー
こういった人に適した環境といえそうだ。
メリット
許可された上で音を出せるというのは、精神衛生上良い。あと、移動できる楽器(ギターやバイオリンなど)の場合、部屋のどこにいても音が出せるので、狭いブースの中で演奏するのと比べて断然快適。
録音に関しても、ブースを使わずにマイクを好きに立てて録音できる分、スピーディーな作業が可能。ブースがない分部屋も狭くならないので、広い部屋に住む必要もない。
デメリット
楽器可物件の多くは「お互い様物件」なので、音が漏れてくる可能性もかなり高い。これがデメリットだ。
音漏れの大きさや、音漏れが発生している時間帯はケースバイケース。レコーディング向けの静かな環境が得られるかどうかは、運次第だ。音漏れが大きい場合、「静かな時間帯・曜日を狙って録音する」という工夫が必要になってくることもある。
ゲストを招いて録音をする場合、隣人の音漏れによって録音に支障が出るリスクがある(仮歌等ならさほど問題ないだろうが)。
2. 楽器不可物件×防音ブースあり
- 自宅でゲストの歌や演奏を録音することが多い作曲家
- 宅録で仕事をしているシンガー・演奏家
こういった人に適した環境といえそうだ。
メリット
まず、楽器不可でもRC造の遮音性の高さがあるので、隣人に迷惑がかからない範囲でスピーカーを鳴らせる可能性は高い。そして、RC造が持つ元々の遮音性に加えてブースの遮音性がプラスされることになるため、普通の楽器可物件と比べて、音の大きな楽器を鳴らせる可能性も出てくる。ボーカル程度の音量なら、24時間録音をすることができるかもしれない。
作曲家の立場で考えると、「ゲストを招いて録音する」という作業がやりやすいのが嬉しい。「モニタースピーカーで演奏を聴きつつ、ブース内部のゲストにディレクションする」という伝統的な録音スタイルを取ることができる。エアコンを切ったり、自分自身がヘッドホンをする必要もない。
宅録するシンガーや演奏家にとっても防音室を導入するメリットは大きそうだ。時間をあまり気にせずに、静かな環境で演奏を録音することができる。仕事で録音をする必要があるミュージシャンならば、防音室導入の優先度は高いだろう。
なお余談だが、ブースの中にマイクとPC、オーディオインターフェイス一式をセットしておくという方法もある。多少広めのブースが必要になってくるが、ブースの中で作業が完結するため、前述の「遠隔操作」の煩わしさからも解放される。宅録に特化したボーカリスト等にとっては、検討すべき選択肢だろう。
デメリット
演奏は防音ブースの中で問題なく行えるが、モニタースピーカーはブースの外で鳴らすことになる。楽器不可物件なので、もし「スピーカーの音がうるさい」と苦情が入った場合は対策する必要が出てくる。部屋の遮音性次第ではスピーカーで満足に音を出せない可能性も出てくる。
また、ブースに関してだが、仮にボーカルが録れる程度のブースを入れる場合、1畳程度のスペースが塞がることになる。ブースのスペースを確保するために、少し広めの部屋を選ぶとなると、その分家賃も高くなる。ブース導入の費用も考えると、楽器可物件を選ぶのとコスト的に大差なかったりする。
3. 楽器不可物件×防音ブース無し
- 自宅でマイク録音をする機会がない作曲家
- 気軽に引っ越しができる人(フットワークが軽い人)
こういった人に適した環境といえそうだ。
メリット
コストが低くて済むのがメリット。RC造の部屋なら元々の遮音性が高いので、スピーカーで音を出せる可能性も高い。自宅でマイク録音をしない人には良い選択肢だろう。生楽器や歌が必要になったら、宅録環境があるミュージシャンに外注して乗り切ることも今の時代なら十分可能。
デメリット
デメリットはパターン2と同じで、「スピーカーの音が他の部屋に漏れた場合、苦情が入る可能性がある」ということ。
4. 楽器可物件×防音ブースあり
メリット
楽器可物件が持つ遮音性の高さに加えて、防音室の遮音性も加わることで、よりレベルの高い防音が可能になるというのがメリットだ。音の大きい楽器(金管楽器・打楽器・ギターアンプなど)を鳴らせる可能性も出てくるし、そうでない楽器を演奏する場合でも隣人への音漏れを完全に排除できるという効果が期待できる。
プロギタリストの渡辺香津美氏は「楽器可物件にアビテックスを入れている」とインタビューで語っている。
もともとこのマンションは、防音性のある 「ピアノ可」の集合住宅なのですが、我々は音を出すのが商売ですから、逆に音のことで周囲にご迷惑をかけたくないという気持ちがあります。そこでこの際、 防音室にして万全を期そうということで、アビテックスを入れることにしました。
フリーサイズの11畳ということで、防音工事の代わりにアビテックスを使っているような状況。万全を期すにはこのような方法もある。
デメリット
楽器可物件にした上でさらに防音室を入れることになるため、どうしても割高になってしまう。「防音室を入れるなら、楽器可物件にする必要ないのでは?」と言われればそれまでだし、コストパフォーマンスの観点から考えると今ひとつ。
結局どうすればいいのか
僕の結論
何だかんだで楽器可物件で探すのがスムーズだし、コスパが高いと思う。自宅で本番のマイク録音をしないなら防音ブースは要らない。それに作曲・アレンジ・ミックス・ギター等のライン録音・仮歌録音など、音楽制作の大部分の作業は問題なくこなすことができる。
そもそも「楽器不可だけど遮音性が高い」という物件は、意外と探すのが難しい。僕も昔さんざん探したが、東京近郊の単身者物件の場合、家賃が10万円未満程度だと、RC造でも「片側がコンクリートで、片側が石膏ボード」という部屋が多かった。壁の材質がどのようになっているかは、内見時に壁を叩いて音を確認してみるまでは分からない。そのため、地道に足で物件を探す場合は、時間や交通費といったコストがかさみがち。
※特に遠方に引っ越すような場合、無駄な内見はなるべく避けたい。
だけど楽器可物件なら、家賃が同程度でもすべての壁がコンクリート壁になっていることが多かった。同じ家賃なら「楽器可」を明示している物件のほうが、「遮音性が高そうな物件」の割合は大きい印象だ。
もっとも、これは僕の体験談に過ぎないし、2LDKとかのファミリー・カップル向け物件だったり、単身者向け物件でも家賃が高ければ、話は変わってくる可能性もある。あくまで参考までに留めておいてほしい。
プロのインタビュー記事を読んで情報収集する
雑誌やWeb記事などで、ミュージシャンのプライベートスタジオが紹介されることがある。そのときに「音が満足に出せない環境だったので引っ越しました」的なことを語っている人がしばし出てくる。物件の仕様についても話していたりするので、部屋探しをしたい人にとっては貴重な情報だ。
※ちなみにサンレコ2013年1月号ではそんな話をしている人が複数いた。僕にとっては役に立つ情報だった。→ サウンド&レコーディング マガジン 2013年 01月号(Amazon)
おわりに
良い物件に出会えるかどうかは、運に左右される部分も大きい。だけど、良い物件を探すための努力はできる。 楽器の音圧レベルと部屋の遮音性について徹底的に勉強して、できる限りの情報を集めて真剣に部屋を探せば、良い物件に巡り会える確率も上がるだろう。
一人でも多くの人が、快適な音楽ライフを送れることを願っています。