今回はクロノ・トリガーの「樹海の神秘」のコード進行を解析していく。
前回の記事同様、ゲーム音楽ならではの教会旋法的な音使いがされている。また、ゲームのメインテーマ曲(「クロノ・トリガー」)との共通項ともなるような、隠れたエッセンスの存在についても紹介する。
- コードは耳コピで採譜しています
※Key = Db
目次
イントロ~Aセクション
[Intro]
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
[A]
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
| GbM7(13) | | Fm7(9) | |
美しいアルペジオが印象的だ。IVM7→IIIm7というコード進行はよくあるが、注目すべきは、IIIm7であるFm7のコードに、9thのテンション(G音)が加わっているという点。これは通常のメジャースケールに含まれる音ではない。結果的に主旋律もDbリディアン・スケールとなり、モード的な雰囲気が出ている。
Aセクションでは、主旋律がGbM7(13)の部分では#11th(C音)、Fm7(9)の部分では9th(G音)のテンション音で長く伸ばしているのが特徴的。これにより、実に神秘的な雰囲気の響きが生まれている。
Bセクション
| Ebm7(9) | B7(9,+11) | Bbm7(9) | |
| Ebm7(9) | B7(9,+11) | Cm7(11) | F7 |
2小節目のB7(9,+11)は、その次のコードに対するドミナントコードだ(半音上から解決するパターン)。
Cm7(11)以降は、次のセクションへ向けたツーファイブだ。主旋律のF音がペダルポイント的になっていて、直前のコードからのつながりが自然になっている。
主旋律のほとんどがテンション・ノートになっているのが見事だ。
Cセクション
| Bbm7(9) | Gm7(9) | Ebm7(9) | Fm7(9) |
| Bbm7(9) | Gm7(9) | Ebm7(9) | Fm7(9) |
| Eb/Db DbM7 Cm7 | Fsus4 F |
トニックのマイナーコード(VIm)から始まり、短三度下のマイナー7thコードへ進行していく。実はこの2小節は、前回の記事で紹介した「クロノ・トリガー」という曲のコード進行と同じ。
「クロノ・トリガー」ではAm7 → F#m7という進行が印象的だったが、この曲ではそれをさらに発展させたものとなっている。作品のサウンド感に一貫性を持たせるための、絶妙な隠し味といえるだろう(意識してやっているのか、それとも無意識のうちにやっているのかは不明)。
このセクションでも、やはり主旋律が全て9thのテンション音を経由する形となっていて、とても美しいハーモニー感が演出されている。
このあとイントロに戻る。最後のFは、GbM7に対してのドミナント的な役割を果たしている(GbM7はBbmと構成音が似ている)ため、イントロへと上手くつながるようになっている。
おわりに
SFCという同時発音数に制約があるハードの中で、これだけの美しいハーモニーを生み出すことができているのは、しっかりとした音楽理論に基づいた作曲の賜物といえるだろう。
これを22~23歳という若さで作曲した光田康典氏。彼の溢れんばかりの才能を感じさせる一曲だ。