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Auratone 5Cを使う価値とは?
「良いモニタースピーカー」って何だろう。
体に響くような低音から、録音したときの空気感まで感じられるような超高域まで、幅広いレンジを正確に再生できるものが、一般的には「良いスピーカー」と評価されがちだ。
今回レビューするAuratone 5Cは、そういう意味では「良いスピーカー」とは別の方向性を持った製品だ。キックの超低域なんて全然見えないし、空気感を感じるような超高域なんてまるで聞こえてこない。
しかし、このAuratone 5Cはその「レンジの狭さ」からは想像できないほどの潜在能力を秘めている。「コイツでミックスすれば悪いバランスにはならない」。そう言ってもいいくらいの、スゴいポテンシャルを持っている。
ミキシングにおける中域の重要性
Auratoneがミキシングに向いている主な理由は、「周波数帯域が制限されているから」だ。ズバリ、中域しか出ないのだ。
中域にフォーカスしたモニター音でミックスすることで、次のような判断ミスを減らすことができる。
- キックの持つ、図太い低域に惑わされ、キックの音を小さくしすぎてしまう
- グロッケンの持つ、耳に刺さる超高域に惑わされ、グロッケンの音を小さくしすぎてしまう
中域だけをモニターすることで、パート間のバランス調整に集中できるのがミソだ。
一般リスナーはスマホや安価なイヤホンで音楽を聴くケースも多く、その場合の再生音は中域が中心だ。そして、音楽的に重要な情報は、中域に詰まっている。つまり中域のバランスを整えることが、ミックスのクオリティ向上につながっていくのだ。Auratone 5Cをミキシング作業に取り入れる意義は大きい。
ミキシングを行う上では、「木を見て森を見ず」の状態を避ける必要がある。
これはミキシングの初級者~中級者あるあるではないだろうか。リスナーの多くは歌を聴いているのだから、歌をちゃんと聞こえるようにしなければならない。
Auratone 5Cは、ミックス全体のパート間バランスを客観的に評価する上で、うってつけのモニタースピーカーだといえる。
「中域特化」のスゴいやつ
Auratone 5Cは、「フルレンジ」のモニタースピーカーだ。
フルレンジというのは、1つのドライバーユニットしか付いていないということ。通常のモニタースピーカーは、ウーファー(低域担当)とツイーター(高域担当)を両方装備しているため、帯域が混じり合う部分の特性がイマイチになることがある。
フルレンジ仕様のAuratone 5Cは、クロスオーバーが存在しないことによる位相の素直さを持っており、中域を正確かつ、鮮明に映し出してくれる。コンプを掛けた時の音の大小の変化や、トランジェントの見え方などが素晴らしい。
中域表現に限っていえば、全帯域を再生できる高級モニタースピーカー(GENELEC、ADAM等)に勝るとも劣らない能力を発揮してくれると、筆者は感じている。
Auratone 5Cのスペック

Auratone 5Cの周波数特性は次のとおり。
80-15,000 Hz
このように、80Hz~15kHzまでの音しか再生できないスペックだ。前述のとおり、低域や超高域はあまり再生されず、中域中心のサウンドになっている。
Auratoneが低価格のPCスピーカーより良い理由
以前このブログで、安価で人気があり、評価の高い民生用のPC用スピーカーとして、Creative Pebbleを紹介した。
【レビュー】Creative Pebbleはミックス作業で便利!最強の“サブ”モニタースピーカーです
Auratone 5CとPebbleには、「帯域のレンジが狭い」「フルレンジユニットのスピーカー」という共通点があり、人によっては近い用途で使えると思う。しかし、音を正確にチェックする上では、やはりPebbleよりもAuratone 5Cのほうが、断然音に説得力がある。民生用スピーカーと業務用スピーカーの違いを、そのまま感じさせてくれるような出音の違いだ。
この立方体に近いゴツゴツとした密閉型のエンクロージャーを持つ、フルレンジのモニタースピーカーは、素材のトランジェントや各パートの大小関係を正確に教えてくれる。
Auratone 5Cの出音であれば、(もちろん限られたレンジにおいてのみだが)これを聴きながらEQしてもOK!と思えるような信頼を置くことができる。Pebbleだとそれは難しいかもしれない(あくまでもチェック用)。
Auratoneタイプのスピーカーは、かつてマイケル・ジャクソンの名盤「Thriller」で使われたそうだ。そのエピソードもうなずけるくらい、説得力のある音をしていると感じる。
Auratone 5Cはこんな人にオススメ
メインのモニタースピーカーをすでに所有している人
基本的には、「すでにメインのモニタースピーカーを所有している人」だけが、Auratone 5Cを使うべきだと筆者は考える。Auratone 5Cは、モニタースピーカーを買うときの最初の1台には選ばないほうがいい。低域も高域も出ないので、その辺りの帯域の判断ができないからだ。
2台目のモニタースピーカーにAuratone 5Cを選ぶことで、次のような恩恵が得られる。
- モニタースピーカーを切り替えることで耳をリセットできる
- ミックスを評価するための「別の視点」を持つことで、ミックスの精度を上げることができる
ミキシングを行う上では、複数のモニター環境でミックスを確認することが重要。そのための「セカンドモニター」として、Auratone 5Cはベストバイな商品だ。
いわゆる「ミックス師」の仕事をしている人
近年需要が高まっている、(歌ってみた動画の)「ミックス師」の仕事をしている人にも、Auratone 5Cはオススメできる。なぜなら、「歌と2mixのインスト音源をミックスする」という用途においても、やはり中域のバランスが重要になってくるからだ。
※歌は中域の成分を多く含むパートなので。
そして、その音源を聴くリスナーも大抵、歌に(つまりは中域に)フォーカスして音楽を聴くことが予想される。このことからいっても、Auratone 5Cを使って中域の整理をきちんと行うことは有効だと考えられる。
モノラルでの運用もGood
有識者がしばし話すように、Auratone 5Cは場合によっては1台だけで、モノラルスピーカーとして使うことにも向いている。「スピーカー2本(つまりはステレオ)で音を鳴らしたときに、位相の干渉によって左右で打ち消し合う成分が発生する」という副作用を受けずに済むからだ。
価格が1台分だけで済むというのも、お財布には優しいポイント。
筆者がAuratone5C を使って得られた恩恵
ここでは、筆者が実際にミキシングの作業において、Auratone 5Cを使うようになって生まれたポジティブな変化について紹介する。
- 「根本的なトラック間のバランス」を測りやすくなった。
- その結果、「EQより先にフェーダー位置を決めるのが重要」という、ミキシングの基本に立ち返りやすくもなった。
- 各トラックのサウンドに惑わされることなく、適切なフェーダー位置を決めやすくなった。
- ボーカルやリード楽器のレベル決めに迷わなくなった。
- 「再生環境によってはパート間のバランスがイマイチ……」なミックスを作ってしまうことが減った。
- 「EQをすべきかどうかの判断」を適切に行えるようになった。
- 例:「Auratoneで聴けばボーカルの音量レベルは適切 → でもメインのモニターで聴くと音がこもり気味…… → レベルはいじらずEQでハイを上げよう!」みたいな判断ができる。
ローエンドの帯域の住み分けとか、各トラックの音作りはレンジの広いモニターでやったほうがいいと思う。だけど、ミキシングの根幹となるパート間のバランス調整の作業は、Auratoneでやると捗る。
まとめ:セカンドモニターに最適
信頼できる(ステレオの)モニタースピーカーを1セット持つことは大事だ。だけど、それに加えて、Auratone 5Cのようなセカンドモニターを用意することで、ミキシングの強度や説得力は増していくだろう。
実際にAuratone 5Cを使ってみて、筆者はそのことを実感している。

