ポップスやロック等、ポピュラー音楽全般を対象としている。僕が実際に制作で使用しているプラグインでおすすめできるものを紹介していく。
目次
EQ編
僕は基本的に、次のようなイメージでEQを使っている。
- アナログ系EQ → 帯域をブーストしたり、音のキャラクターを付加する用途
- デジタル系EQ → いらない帯域を削る用途
アナログEQでは、大幅にブーストしてもいい感じのサウンドになってくれる(実機だとよりわかりやすい)。しかし、Q幅が固定だったりするのでカットにはあまり向かない。
デジタルEQでは、Q幅を自在にコントロールしてピンポイントで帯域を削ることができるし、HPFの傾きも変えられる。しかし、大幅にブーストすると変な音になりやすい。
アナログEQとデジタルEQにはそれぞれこういった特性があるので、それぞれの長所をいいとこ取りして使うようにするのがよい。
それではプラグインの紹介。
「メーカー名: プラグイン名」というという書き方で紹介します。
Slate Digital: FG-N
Neve 1073はアナログEQの代表的な存在。多くのメーカーが1073をエミュレートしたプラグインを出している。Slate Digital社の1073エミュレート「FG-N」は、プラグインの1073の中では出音が良くオススメできる。同社の「Virtual Mix Rack」に収録されているプラグインだ。
Waves: PuigTec EQP-1A
PultecのEQP-1AもアナログEQでは定番。真空管回路特有の倍音付加がある。
多くのWavesバンドルに含まれているプラグインなので気軽に試すことができるだろう。
FabFilter: Pro-Q
FabFilterのデジタルEQ。Q幅の調整、HPFのカーブの勾配の変更、リニアフェイズモードへの切り替え、いずれも簡単に行える。
スペアナ付きのEQなので、飛び出している帯域を視覚的に確認することができる。これが非常に強力。ミックスが苦手な人には特におすすめ。
負荷も軽く、余計な色付けもない。とても使い勝手がよいので、文句なしにオススメできる一品。
コンプレッサー編
Slate Digital: FG-116
コンプレッサーの定番は何と言ってもUrei 1176。どんな設定でも音楽的な音になることから、ロックやポップスの世界では長きにわたって定番コンプとして活躍してきた。アタックタイムの速さと、FET回路による奇数倍音の付加が特徴。
多くのメーカーが1176を再現したプラグインをリリースしているが、僕のオススメは、倍音の付き方が心地よいSlate Digital社のFG-116だ。こちらも「Virtual Mix Rack」に収録されている。
Softube: CL 1B
TUBE-TECHのCL1Bは定番の光学式コンプ。増幅回路で真空管を通るため、偶数倍音の付加が特徴。1176等と比べて緩やかなかかり方をするため、ボーカルのかけ録りで使われることが多い。
SoftubeのCL 1Bは実機に負けないくらいの高いクオリティを誇る。光学式コンプのファーストチョイスとしてオススメの一品。
Waves: CLA-2A
Teletronix LA-2Aも光学式コンプ。アタックタイムやリリースタイムが固定なので、難しいことを考えずに使うことができる。
WavesのCLA-2Aは、このLA-2Aを再現したプラグインだ。倍音の付加は控えめ。軽いので気軽に挿すことができる。
Slate Digital: VBC
Slate Digitalのバスコンプ3種が含まれるプラグイン(画像は「FG-MU」)。マスター用のバスコンプというのはプラグインで良い効果を出すのが難しい部分だが、VBCはかなりクオリティが高い。プラグインが実機に追いつくもの時間の問題と思わせてくれる一品。
Waves: C1 Compressor
Wavesのデジタルコンプ。今まで紹介してきたコンプはいずれも実機のアナログコンプを再現したものなので、挿すだけで倍音の付加による音質の変化が起こってしまう。
しかし、C1はデジタルコンプなので、色付けがなく純粋に音量だけが変わってくれる。アタックタイムやリリースタイム、レシオなども自由に設定できる。
これらのことから、C1はサイドチェインでコンプを使いたいときに便利。
リミッター編
FabFilter: Pro-L
マスター用のリミッターはいくつも試してきたが、FabFilterのPro-Lが一番優秀。
色付けが少なく、2mixの音像を損なうことなく音を大きくしてくれる。どんな音楽にもそつなく対応してくれる素晴らしいリミッターだ。
かなり大幅にリダクションしても破綻せずに音圧を上げることができる。他のリミッターだと音像が崩れてしまうようなレベルまで追い込めるので、音圧の高いマスタリングをやりたい人にもオススメできる。
Sonnnox Oxford: Limiter
こちらも色付けが少なく使い勝手のよいリミッター。インターサンプルピークの除去や、サチュレーションの付加ができるので、マスターで他のリミッターと併用するのもよい。
Sonnox Oxford Mastering Native
Waves: L1
Wavesのリミッター。L2、L3の元になったモデル。後発製品と比較してパンチのある歪み方をしてくれるので、マスターでは使わずにトラックやバスで使っている。
テープシミュ、サチュレーター編
Slate Digital: VTM
テープシミュレーター。派手に歪む感じではなく、上品にかかってくれる。
実機を思わせるようなクオリティの高さで、マスターでの使用も可能。Nativeのプラグインでテープシミュを探すならこれで決まり。
Waves: Kramer Master Tape
FLUXつまみを上げると割と派手に歪んでくれるので、意図的にサチュレーションをかけたい場合に便利。
Sonnnox: Oxford Inflator
元のトラックの質感を変えることなく、クリアに倍音を足して音抜けを良くしてくれる。どの楽器にでも使いやすく重宝する。
空間系、モジュレーション系エフェクト編
Lexicon: PCM Native Reverb
初めてこれを使ったときの感動は忘れられない。アルゴリズミック・リバーブとしては、圧倒的なクオリティの高さを誇る。負荷もそれほど高くない。これさえあればリバーブで困ることはないはず。
Waves: H-Delay
アナログディレイっぽい質感。GUIがわかりやすいので、ディレイタイムやフィルターの設定なども手軽。使い勝手がよく便利。
Waves: Doubler
ダブリングをしてくれるプラグイン。仕組みは単なるショートディレイだが、遅らせた音のピッチをずらしたり(Detune)、揺らしたりできる。
その他
Waves: PAZ Analyzer
スペアナがついていて帯域のバランスがわかる他、ステレオ幅やRMSレベル等を確認できる。マスターに挿して使うと便利だ。
さいごに
プラグインの世界は日進月歩。メーカー名にとらわれず、まずは出したい音や使う目的を明確にイメージする。それを実現するのに最も良いものは何かを考えた上で、プラグインを選ぶのがよいと思います。買う前に必ずデモを試しましょう。