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【レビュー】Mix to Mobileでスマホを外部スピーカーにしよう!ミックス作業が捗ります

Mix to Mobileは、Sound on Digital社から販売されている、DAWの出力音声をスマホやタブレットで再生するためのアプリだ。※iPhoneでもAndroidスマホでも使える。

パソコンの音をリアルタイムでスマホで聴く方法は、どこかにありそうなのに、意外と無いものだ。ミックスした楽曲をスマホのスピーカーで聴ければ便利なのになぁ……Mix to Mobileはそんなニーズを満たしてくれるお役立ちアプリだ。

Mix to Mobileの良いところ

操作がシンプルで簡単

Mix to Mobileを使う手順は以下の通り。

  1. スマホとPCの両方で、それぞれMix to Mobileをインストールする。
  2. スマホとPCを同じLANに接続する。スマホはWi-Fiでネットに接続しよう。
  3. DAWソフトのマスターバスの最後に、Mix to Mobileをインサートする。
  4. スマホでMix to Mobileアプリを起動して、転送されてきた音を再生する。
  5. スマホからDAWの音声が再生される!

これだけでOK。DAWの出力を気軽にスマホやタブレットに送ることが出来る。

操作方法はとにかくシンプルで、マニュアルすら用意されていないほどだ。

シンプルなGUI

Mix to MobileのGUIはシンプル。

PC側

StreamとPassthroughの2項目にMuteボタンがある。スマホに送る音声とモニタースピーカーに送る音声を、それぞれミュートすることができる。

スマホ側

音量調節スライダーと、聴くのを止めるボタンだけが付いている。

コスパが高い

Mix to Mobileは現在39ドルで販売されている。競合するアプリであるAudiomovers Listentoがサブスクでしか使えないことを考えると、買い切りで入手できるMix to Mobileの価格設定は良心的だ。

Listentoのような豊富な機能は付いていないが、「ミックスをスマホ環境で確認する」というニーズを満たすためのアプリとしては、必要十分な機能を持っているといえる。自宅スタジオの個人環境ならこれで十分だろう。

MEMO
なお、Mix to Mobileは2023年のBlack Fridayセールにおいて、15%offで販売されていたのを確認済みだ。もともと十分安いMix to Mobileだが、少しでも安く買いたい人は、セールを狙うのもアリだろう。



ミックスを別のスピーカーで確認する意義

そもそもなぜMix to Mobileが必要なのか?それは、ミックスをメインのモニタースピーカーだけではなく、サブの安いスピーカーでも確認することで、ミックスのクオリティを高められるからだ。

スマホならみんな持っている。だからMix to Mobileを買えば、わざわざ小型スピーカーを買わずとも、小型スピーカーを手に入れたのと同じことになるのだ。場所も取らないし、お金もさほど掛からない。素晴らしいアイディアだ。

ミックスを複数の環境で再生することは非常に重要。たとえメインのモニタースピーカーで「これで完璧だ!」というバランスを作ったとしても、スマホのスピーカーで聴けば、どこか直したくなることは多い。

あるいは、メインのモニタースピーカーでミキシングしてるだけだと、歌やリード楽器をどのくらい大きく出すべきか迷ってしまうことがある。※高級スピーカーは音の情報量が多いので。

そんなときもスマホのスピーカーで聴けば、「歌は思ったより大きく出した方が分かりやすいな」という具合に、一定の指針を得ることが出来る。

同じ環境で試行錯誤するよりも、モニターを切り替えてチェックすしたほうが、すんなりとミキシングの指針を得られることが多い。

プロの現場でもラジカセチェックは標準!

僕はアレンジャーとして、スタジオでミキシングに立ち会った経験もある。その際多くのディレクターは、SONY SONY ZS-M5(ラジカセ)でもミックスを確認する。これはミックスチェックにおける、お決まりの展開となっている。

「スタジオにはGENELECの高級スピーカーだって置いてあるのに、なぜラジカセなんかで音を聴くの?」と思うかもしれない。先にも少し触れたが、やはりポップミュージックの主役は歌なので、歌がどのように聴こえているのかを判断するのが大切だからだ。レベル(音量)が適切か、他の楽器に埋もれていないか……これらを確認する上で、あえてナローレンジなラジカセのスピーカーを使うことは合理的だといえる。

Metric ABと組み合わせると便利

以前、自分のミックスをリファレンス音源と比較するためのプラグイン、Metric ABを紹介した。

ミックス作業に必須!音源比較プラグイン「ADPTR AUDIO Metric AB」を徹底解剖

このMetric ABを、今回のMix to Mobileと組み合わせると、より一層便利に使うことができる。DAWの出力をスマホで聴けるのだから、当然Metric ABの出力(=リファレンス音源)も、スマホに送って聴くことが出来るわけだ。

メインのモニタースピーカーで、自分の曲と参考曲を比べる。そして、スマホのスピーカーでも自分の曲と参考曲を比べる。この作業を行うことで、次の事実を知ることになる。

プロのミックスした曲は、再生環境を問わず、良いバランスを実現できている

「それに引き換え自分のミックスは……」と落胆するかもしれない。だけど、その悔しさをバネに成長することが出来る。スマホのスピーカーを通して得られた知見を、自分のミックスにもフィードバックすることができる。これが、Mix to MobileをMetric ABと組み合わせる恩恵だといえる。

この「Metric ABと組み合わせる」というテクニックは、僕が実際にMix to Mobileを使うようになって初めて覚えた便利な技だ。せっかくなのでここで紹介しておきたい。



覚え書き

DAW無しでは使えない(今のところ)

今のところ、Mix to Mobileがスマホやタブレットに送れるのは、DAWから出力される音声だけだ。つまり、wavファイルをメディアプレイヤー等で再生しても、その音声をスマホ等に送ることはできない。

※僕はDAW経由で使えさえすればそれでいいと考えているので、特に問題はない。

公式サイトのFAQによれば、将来的にはスタンドアローンでも使えるようにする予定があるとのことだ。

ごくまれに音飛びが発生する

僕の環境では、ごくまれに再生時に音飛びが発生することがある。Wi-Fi経由で音を送っているのだから、ある程度は仕方ないかなという感じ。

ミックスチェックに使う上では問題にならないため、個人的には全く気にしていないが、再生に完璧を求める人は要注意だ。

おわりに

Mix to Mobileを導入して以来、誇張抜きに全てのミキシングプロジェクトで使うようになった。おかげでミックスのクオリティが上がってくれた。