【レビュー】iZotope Ozoneは必須のマスタリングツール。優秀なAIアシスタントも付いてきます

Ozoneとは?

Ozoneは、iZotope(アイゾトープ)社から発売されている、マスタリングを行うためのプラグインだ。

公式サイト

Ozone 9 - iZotope Japan

主な収録プラグイン

Ozoneには様々なタイプのプラグインが付いてくる。マスタリングに必須のプラグインである、EQ・コンプ・マキシマイザーはもちろん含まれている。

その他にも、AIでマスタリングをアシストしてくれる「Master Assistant」や、2mixのバランスを調整する「Master Rebalance」といった特殊な機能も付いてくる。

収録されているプラグインが多いため、ここで全ては紹介しない。詳しくは公式サイトを参照してほしい。

※上記公式サイトのトップページ>「機能を比較する」をクリックで、エディションごとの比較が可能。

お気に入りのプラグイン

Maximizer

クリアにバランス良く音圧を上げてくれる。特に、IRC IVモードのTransientスタイルでリミッティングしたときの透明感は、他では出せない質感で気に入っている。現代的なマスターに仕上げる上で、最適なマキシマイザーだと思う。

Imager

マスタリングにおいては、ステレオイメージを広げたくなることも多い。OzoneのImagerは、帯域を分割してステレオイメージを調整できるのが良い。低域はステレオ幅を広げないようにしつつ、高域のステレオ幅を広げるようなことも簡単にできる。

Equalizer

マスタリングで使える品質のEQだ。

便利なテクニックをひとつ紹介する。右端の目盛り上でマウスホイールを上下すると、dBの表示レンジを変えられる。マスタリングでは1dB未満のEQ処理を行うことも多いので、拡大表示させておくと良い。

なぜかマニュアルに書いていないのですが、とても大事なテクニック。裏技ではなく表技にしてほしいところですね。

Dynamic EQ

マスタリングで使える品質のダイナミックEQ。各バンドごとにアタックタイム/リリースタイムを調整可能。

Master Assistant

Master Assistantは、2mixのサウンドを解析し、適切なプラグインを組み合わせて自動的にセッティングしてくれる機能。

これに頼り切るのは良くないが、良いところだけ上手く抜粋して使うことで、効率的な作業が可能になる。テクノロジーの進化を感じさせてくれる、AIアシスタント機能だ。

Ozoneの良いところ

音のクオリティが高い

Ozoneに収録されているプラグインは、どれもクオリティが高い。腕のある人が使えば、OzoneのStandard一つで、商用音源レベルのマスタリングは十分こなせるだろう。

長いことFabFilter Pro-L 2を愛用してきた僕だけど、なんとなくセールで買ったOzoneのMaximizerのクオリティが、(音のキャラは違えど)同等のクオリティで相当驚いた記憶がある。

価格が安い

Ozoneはコストパフォーマンスもすごい。他社の製品の場合、マキシマイザー1つでも1~2万円くらいすることを考えると、Ozoneの価格設定は少し不思議なくらい安い。もし他社製品を何も持っていなくて、マスタリングに使えるプラグインが欲しいという人がいたら、Ozone Standardを購入すれば間違いない。

もし気に入ったら、各プラグインを単体のインサートエフェクトとして使える、Ozone Advancedにアップグレードするといい。

Greg Calbiプリセットが勉強になる

Ozoneには、Sterling SoundのGreg Calbi氏によるプリセットが収録されている。Sterling Soundといえば、世界的に有名な、マスタリング界のトップに君臨しているチームだ。

このGreg Calbi氏のプリセット、非常に勉強になる。

マスタリングの学習教材として、これだけでも本1冊分程度の価値はあると思う。

特に、上記動画でも1:04頃にチラッと出てくるが、マルチバンドコンプ(Dynamics)の使い方が勉強になると感じた。

  1. プリセットを自分のミックスに掛けてみる。
  2. 中低域~高域のみがコンプに引っかかっていることが分かる。
  3. つまり、低域と超高域は適度に残した方が、良いマスタリングになるのでは?

例えば、このような仮説が立てられるようになる。他にも、ImagerやExciterをどのように使うのか、EQはどこの帯域をどの程度ブースト/カットすればいいのか、その分量は何dB未満に抑えればいいのか……といった学びを得ることができる。

Greg Calbi氏のプリセットは、どれも自然に掛かるようになっている。変な音に変わってしまうようなプリセットは、一つもない。自分のミックスに掛けてみて、各エフェクトの設定を分析することで、マスタリングスキルの向上につながる。

コラム:Master Assistantについて

最初は信用していなかったのだが、試しに使ってみたところ、Master Assistantが思った以上に良い仕事をしてくれた。ちょっと悔しくなってしまったので、少し長くなってしまうが、Master Assistantについて書いてみることにした。

Master Assistantとの向き合い方

そこそこ音楽制作経験のある人の場合、Master Assistantを使うときは、次のスタンスで行くのが良い。

  • Master Assistantはあくまでもアシスタントとみなす
  • 提案をうのみにせず、良いものだけ採用する
  • 提案を採用するかどうかの判断は、必ず自分で行う

これらを守れば、Master Assistantはあなたの良きパートナーとなってくれるはずだ。

Master Assistantのスゴいところ3つ

1. 自分の耳が疲れているときでも仕事をしてくれる

人間の耳は疲れる。

ミキシングやマスタリングという緻密な作業は、長時間続けでできるものではない。数時間掛けてミキシングを完成させ、そのままマスタリングまでやると、どうなるか。耳もだいぶ疲れてしまっているので、判断が鈍ってしまうこともあるはずだ。

そんなときは、従来は一日寝かせて、聴き直すのが普通だった。翌日、問題点に気づいて、適切に対処できるようになる。こういったプロセスが必要だった。

しかし、Master AssistantはiZotopeのプログラミングによって生み出されたAI機能。いかなる時も判断が鈍ることなく、(良くも悪くも)一つの基準を提示してくれる。マスタリング作業に際して、客観性を持つための、心強い味方となってくれるはずだ。

客観性を持ってマスタリングを行うためのツールとして、以前ADPTR AUDIO Metric ABを紹介したことがある。

ミックス作業に必須!音源比較プラグイン「ADPTR AUDIO Metric AB」を徹底解剖

OzoneのMaster Assistantも、同様に、客観性を持ってマスタリングを行うためのツールだといえる。

2. 自分の引き出しにはない提案をしてくれる

OzoneのMaster Assistantは、これでもかというくらい、ダイナミックEQを提案してくれる。

だけど、「マスタリングでマルチバンドコンプ/ダイナミックEQを使うのは邪道」という考えを持っている人の場合。OzoneのMaster Assistantが出してくれるアイディアに、自力でたどり着くのは難しいだろう。

このように、「自分の引き出しにはない提案をしてくれる」というのは、Master Assistantを使うメリットの一つだ。

3. 複雑な処理でも瞬時にこなしてくれる

Ozoneは、次のような複雑な処理も瞬時に行ってくれる。

  1. 2mixにおいて帯域的に膨らんでいるポイントを検出し
  2. 「ダイナミックEQを適用すべき」という判断を行い
  3. ダイナミックEQの各バンドのQ・スレッショルド・アタックタイム・リリースタイムを適切に設定し
  4. 帯域の膨らみを抑制する

同じ作業を人間がやるとなると、それなりに時間がかかってしまうだろう。

特にこの手の作業の場合、耳で聞いて嫌なポイントと、アナライザーが教えてくれる抑制ポイントが一致することも多い。こういう処理をしたいときは、上手くMaster Assistantに頼ると作業が捗ると思う。

Master Assistantが役に立った事例

生演奏中心のロック系楽曲を作っていた、ある日のことだ。

自分でミックスを行い、マスタリングまで行った。サウンドはほぼ完璧だけど、少し低域~中低域の膨らみが気になるかなぁ……という状況だった。

※ロックでは、分厚いギター・ベース・キックといったパートによって、低域~中低域はせめぎ合いになりがち。

ふと、僕はOzone 9のMaster Assistantの力を借りることにした。Master Assistantが出した提案は、次のようなものだった。

Dynamic EQで中低域の複数のポイントを削ろう

自力でマスタリングする際に、Metric ABも併用していたため、全体的な帯域バランスはそこそこ整っているという自信があった。しかしながら、「時間軸に対して、飛び出た帯域を、適切に抑える」という視点が足りていなかったことが分かった。

僕はこのMaster Assistantの提案を、部分的に採用する形を取った。OzoneのDynamic EQはOFFにし、代わりにoeksound soothe2で同様の処理を施すことにした。そうして、マスタリングを無事に終えることができた。

オススメの使い方

ある程度腕に自身のある人の場合、次の手順でMaster Assistantを活用するといいと思う。

  1. 自力でマスタリングを行い、「もうこれ以上いじるところはない」というレベルまで追い込む。
  2. Master Assistantに2mixの解析をさせる。解析後の音を聴いて、音が良くなっているかどうかを判断する。
  3. もし音が良くなっていれば、解析結果を見て、自分のマスタリングのどこに課題があるのかを探る。 ※音が良くなければ、提案は無視してOK。
  4. OzoneをOFFにする。提案されたことを意識しつつ、自力でマスタリングを調整する。

Master Assistantの傾向

Ozone 9でMaster Assistantを試したときの傾向をメモしてみます。

  • ローからハイまで均一に出ているような、ポップミュージック的な帯域バランスを持つ楽曲のほうが、クオリティの高い提案をしてもらえる
  • 反対にアコースティック系の楽曲だと、Master Assistantの提案はイマイチになることが多い(音がシャリシャリになる)
  • 元の2mixのバランスが優れているほうが、良い提案をしてもらえる
  • Master Assistantによる補正が小さければ小さいほど、クオリティの高い(≒無理のない)提案になることが多い

Master Assistantは、基本的に「まっすぐ線を引いたかのような、整った帯域バランス」にするのが得意な印象。膨大なデータを元に合理的な処理をしていることを考えれば、これは納得の行く傾向だ。