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iZotope RXはギター録音に必須。超優秀なノイズ除去ツールです

iZotope RXのクオリティの高さに驚いたので記事にしてみます。

RXって何?

iZotope社から発売されている、ノイズを除去するためのソフトウェアだ。最近流行りのOzoneとかNeutronを作ってるところと同じ会社のソフト。DAWのプラグインエフェクトとして起動したり、スタンドアロンで専用のオーディオエディター上で使ったりする。

公式サイト


RX 8 Features




ギターRECに付きものな2大ノイズを除去できるのがスゴい

1. アコギのフィンガーノイズ

アコースティックギターは、弦をはじく音と一緒に、フィンガーノイズ(「キュッ」という音)も発生する楽器だ。ポジション移動やコードチェンジの際、素早く指を動かすので、自然とフィンガーノイズが発生するのだ。

フィンガーノイズは、楽器の性質上、発生するのが自然なこと。なにも演奏者の技術が未熟だから発生するわけではない。

※参考までに、「世界一アコギが上手い」などと評されることもある、トミー・エマニュエルの演奏動画を見てみよう。0:20~0:30のあたりでフィンガーノイズの発生が確認できるはずだ。→ Angelina | Songs | Tommy Emmanuel(YouTube)

とはいえ、アコギは出音が大きな楽器ではないため、レコーディングではフィンガーノイズが目立ってしまうこともある。場合によっては、

  • 静かな曲調のため、フィンガーノイズが目立ってしまう。どうしても消したい。
  • スライドを多用するリードプレイを録音していたら、フィンガーノイズが目立ってしまった。消したい。
  • レコーディングのお仕事の際、クライアントからフィンガーノイズの部分にNGを出されてしまった。

というケースに直面することもあるかもしれない。そんなときに頼りになるのが、このiZotope RXだ。

除去前と除去後の音源をアップした。除去後のほうが明らかにフィンガーノイズが目立たなくなっていることが分かる。これだけ目立たなくなれば、気にする人は誰もいないだろう。

何を隠そう、僕がRXを購入したのも、このアコギのフィンガーノイズ除去が目的だ。それまではCubase上で波形を上描きして除去していたのだが、上手く行かないことも多いし、何より手間がかかる。RXを導入したら簡単に除去できるようになり、満足している。

2. エレキのシングルコイルのハムノイズ

エレキギターのシングルコイルのピックアップは、ハムバッカーと比べてノイズを拾いやすい。特に自宅でギターを録音する場合、PCや暖房器具といったノイズ源が多いため、ノイズが多くなりがち。

エレキギターのノイズも、同様に除去したくなるケースはある。そんなときにもiZotope RXは役に立つ。

上記音源は、シングルコイルPUを搭載したギターを、Fender系のアンプシミュレーターで鳴らしたものだ。除去前と除去後の音源を聴き比べてみると、除去後の音源はノイズが目立たなくなっていることが分かる。音質の変化もほぼ分からないレベルだ。

一般的な曲の場合、曲の終了時には、ギターは白玉で伸ばしてフェルマータで終わることが多い。そんなとき、シングルコイルのエレキギターを使っていると、「サーッ」というノイズが気になることがある。これは、録音の段階でノイズ源をシャットアウトしておかない限り、防ぐことはできない代物だ。

録音時にノイズゲートを使っていても同じことだ。なぜなら、音が減衰していく過程で、いつかはピックアップからの信号はノイズゲートのスレッショルドを下回ってしまうわけで、その結果ノイズは絶対に乗ってしまうからだ。

そのため、ノイズをきれいに消すためには、RXのような高性能なノイズ除去ソフトがどうしても必要になってくる。

実際にノイズを除去する手順を紹介

1. アコギのフィンガーノイズを除去する方法

実際にフィンガーノイズを除去する方法を紹介する。手順は以下の通りだ。

  1. フィンガーノイズを除去したいwavファイルを用意しておく。

  2. RX Audio Editorを起動し、wavファイルをドラッグ&ドロップして読み込む。

  3. Time Selection Toolでフィンガーノイズの部分を選択する。

  4. Spectral Repairを選択し、除去したい強さに応じて、「Strength」を0.5~2.0程度に設定する。

  5. Renderをクリックすると、フィンガーノイズが除去される。波形を見てもノイズ成分が消えていることが分かる。除去部分の音を確認し、問題なければ次の除去ポイントへ進む。  

    ※設定パターンを何個か比較したい場合は、Renderの代わりに「Compare」をクリックするとよい。

  6. すべての箇所のノイズ除去が終わったらwavファイルを書き出す。Save(保存)すると上書き保存されるので、Export(書き出し)するといい。

注意
Spectral RepairはRX8 Standard以上のエディションにしか収録されていないので購入時は注意。

2. エレキギターのハムノイズを除去する方法

エレキギターのハムノイズを除去する手順は、以下の通りだ。

  1. エレキギターをオーディオインターフェイスに接続し、何も演奏せずノイズ成分だけを1~2秒程度録音する。※録音時と同じセッティングにすること。また、アンプシミュレーター等に入っているノイズゲートは外しておいたほうが、ノイズを録音しやすい。
  2. エレキギターが録音されたオーディオトラックに、Spectral De-noiseをインサートする。
  3. Learnをクリックし、手順1で録音したノイズの部分をDAW側で再生する。ノイズが持つ帯域成分がプラグインに読み込まれる。
  4. ThresholdとReductionを調整すると、ノイズ成分が消えてくれる。ギターの信号とノイズの差分を計算してくれるので、非常にナチュラルに仕上がってくれる。

ちなみに、このSpectral De-noiseも、RX8 Standard以上のエディションに収録されている。

「それじゃElementsじゃダメなのか……お金かかるなぁ……」と思った人に朗報。少なくともエレキギターのノイズ除去に限っていえば、Voice De-noiseでも代用は可能だ。

Voice De-noiseでも、同様にLearnボタンでノイズ成分を読み込めるようになっている。下記の画像のとおりだ。

前述のエレキギターの音源ではSpectral De-noiseを使ってノイズ除去をしているが、ここでは試しにVoice De-noiseでノイズ除去した音源も合わせて比較してみよう。

Voice De-noiseでも問題なくノイズを除去できていることが分かる。心なしか、上位版のRXだけに収録されているSpectral De-noiseのほうが音質的に自然な気もするが、ほとんど差は無い。エレキギターのノイズ除去だけが目的なら、RX Elementsを買えば十分だと思う(価格もだいぶ違うし)。



Elements/Standard/Advancedのどれを買えばいい?

結論

必要な機能は人それぞれだが、大まかに考えると、音楽用途であれば

  • 「サー」という環境ノイズ(エアコンやエレキギターのノイズ)を除去するだけでいい人
    → Elementsを買う
  • アコギのノイズ、歌のリップノイズなど、その他のノイズも除去したい人
    → Standardを買う

というスタンスで考えるのがオススメ。

Elementsでもできること

まず、Elementsに収録されている中で一番役に立つのは、やはりVoice De-noiseだと思う(他の機能は割とニッチな用途)。Voice De-noiseは上記のエレキギターの項目でも紹介したとおり、歌に限らず意外と守備範囲が広い。Learn機能によってノイズ成分を読み込み、原音との差分を抽出することができるからだ。ノイズの多い録音素材全般を扱うときに、何かと重宝するはず。

そんなわけで、Voice De-noiseだけで十分な人は、Elementsを買えばいい。

Standard以上でできること

ただし、Elementsに含まれている機能だけだと、「環境ノイズ以外のノイズ」を除去するのが難しい。例えば、歌のリップノイズ、アコギのフィンガーノイズ。こういった類のノイズは、Mouth De-clickやSpectral Repairを使う必要が出てくる。これらの機能は、Standard以上じゃないと収録されていない。

なので、「音楽制作をする上で必要なノイズ除去」を全般的にこなしたいのであれば、Standardを買うとよい。

ちなみに、Advancedは通常の音楽制作の用途であれば、そこまで必要性は高くない。放送のポストプロダクション作業をする人や、サラウンドの音楽を取り扱う人向けのラインナップだと感じる。

エディションごとの機能差は公式サイトに掲載

iZotopeの公式サイト(英語)のページ下部に載っている。→ RX Features

機能の数が多いので全部把握するのは大変。ただ、やはりエース級の働きをしてくれるのは、「Spectral Repair」や「Spectral De-noise」になってくるだろう。