Windows環境において、USBオーディオインターフェイスの動作が不安定なときの対策方法を紹介します。
目次
RME製品でも100%安定するとは限らない
USBオーディオインターフェイスが安定して動作するかどうは、おおむねドライバの完成度で決まる部分が大きい。
- RMEのオーディオインターフェイス:安定して動作しやすい
- ドライバが低品質なオーディオインターフェイス:たまに接続が途切れたり、音が出なくなったりすることがある
さて、ここでこんな疑問を提示してみたい。
その答えは?というと……実はNo!たとえRMEのオーディオインターフェイスであっても、実は100%安定して動くとは限らないのだ。OSやハードウェアとの相性次第では、挙動がおかしくなることもある。僕は実際にそんな経験をしている。
僕は10年ほどRMEのインターフェイスを愛用している。10年間で計4台のWindowsパソコンを使ってきた。そのうち、デフォルトの設定だと挙動がイマイチなことは2回あった。その体験談を紹介する。
先に結論:USB拡張カードを使えばOK
先に結論を書いておく。「挙動がイマイチな状態」をどうやって解消させたかというと、
- ルネサス(Renesas)のUSB拡張カードを使う
これでOK。2回中、2回ともこれで解決している。
PC本体のUSBポートではなく、増設したルネサスのUSBカードのUSBポートに、オーディオインターフェイスを接続すればOK。これで完璧に動く。
RMEのUSBインターフェイスの挙動が怪しかった2例
1例目:2014年~突然不調に見舞われる~
現象
2013年に新調したPC(Intel Haswell世代)を使って1年が経過しようとしていた。そんな中、突然Fireface(RMEのオーディオインターフェイス)の挙動がおかしくなる。症状は次の通り。
- Cubaseで制作していると、突然プロジェクトがフリーズする
- Firefaceの電源をOFF→ONするとフリーズが解消され、プロジェクトが復活する
思い返せばこの現象、1年前からたまに発生していた。なので実をいうと、PCを組んだ当初から問題があったことになる。とはいえ、2014年になってから頻繁に発生するようになった現象だ。Firefaceも購入してから3年ほど経つし、そろそろFireface本体が老朽化してくる時期なのかな?程度に当時は考えていた。
修理に出すも……
その後しばらく使い続けても、同様のフリーズ現象が収まることはなかった。熱暴走なのか、本体の故障なのか……自分では判断できなかった。そこで修理に出すことにした。
修理に出せば直るものだとばかり思っていた僕は、メーカーからの連絡に驚くことになる。
これが検査結果だった。その後、修理から帰ってきたFireface。点検してくれた方からは「USB通信の滞りが原因では?」というコメントをもらっていた。
そこで、ひとまず次の3つの作業を試すことにした。
- USBセレクティブサスペンドの無効化
- OSのクリーンインストール
- 別のUSBポートを試す
結果はどれも効果なし。僕は大きく落胆した。何より「修理費用は発生しているのに何も解決していない」ことのダメージが大きかった。
そして解決へ
本体に異常がないなら別のインターフェイスに買い替えても意味ないよなぁ……もういっそPCIeタイプのインターフェイス(RayDAT)とかに買い換えようか……と思っていた矢先。修理の方に「最後の手段」として挙げてもらっていた解決策を思い出す。それが、
- USB拡張カードの増設
この方法だ。半ば諦めながらも、ダメ元でPCIeのUSB拡張カードを購入した。購入したのはエアリア SD-PEU3R-2E2ILだ(現在は販売終了)。「ルネサスチップが良い」という話を聞いていたので、ルネサスチップ搭載の製品を選んだ。
もともと諦めかけていたので、あまり期待はせずに、購入したUSB拡張カード経由でインターフェイスを使用していた。だけど、1日使い続けてもフリーズはしない。3日経っても大丈夫。そして、不具合のない状態が1週間、1ヶ月と続いてくれた。期せずして、問題は解決してしまった。
原因は、USBコントローラーとオーディオインターフェイスの相性問題でした。こんなことってあるのか……と、非常に勉強になったのを、今でもよく覚えている。
ちなみに、当時使っていたパソコンのマザーボードは「ASUS H87-PRO」。当時ネットで調べてみると、確かにUSBの認識の不具合の情報が少し報告されていた(当現象との関連は不明だが)。
2例目:2020年~Ryzen搭載のPCを導入したとき~
現象
新たにAMD Ryzenを搭載した自作PCを組んだとき、次の現象に見舞われた。
- バッファサイズが128sample程度でも全く音が出なくなる
今までのパソコンであれば、バッファサイズが128sample程度なら余裕で再生が可能だった。何かがおかしい。
解決方法
2014年のときと同じように、
- ルネサスチップ搭載のUSB拡張カードを使う
という方法により、解決に至った。拡張カード経由でオーディオインターフェイスを使えば、問題は発生しない。
また、パソコン本体のUSBポートを使う場合であっても、USB3.0ではなくUSB2.0のUSBポートを使うことで、若干の改善が見らることも分かった。今回も、USBコントローラーとの相性問題が原因だったと考えられる。
まとめ:不具合に悩んだらUSB拡張カードを試してみよう!
そんな状況の人が、ひとりでも減ることを願うばかりだ。ここではルネサスチップ搭載のUSBカードを2つ紹介してみたい。
ルネサスチップ搭載のUSBカード
エアリア
エアリア社のUSBカードの中で、ルネサスチップ搭載かつ、現在入手可能な製品は「SD-PEU3R-A2L」だ。
※以前入手できたのは同社の「SD-PEU3RB-2L」だったが、2024年現在手に入るのは上記の型番のものだ。
玄人志向
同じくルネサス社のチップを搭載しているUSBカードを紹介しておく。「玄人志向 USB3.0RA-P4-PCIE」だ。
おわりに
もちろんルネサスチップが絶対に良いとは限らない。「相性問題を解消するためには別のUSBコントローラーを試すのが効果的」というのが基本的な考え方だ。このことを踏まえて、お困りの際にはUSBカードを導入してみてほしい。