目次
1. 再生音質の比較テスト
- Fireface UCX II(略称:UCX2)
- Babyface Pro FS(略称:BFP FS)
- Fireface UC(略称:UC)
の3機種を比較。※カッコ内はこの記事で使う略称
UCX2からADATやS/PDIFのようなデジタル端子経由で、音声信号をBFP FSやUCに送り、音声信号の入力ソースをモニターコントローラーで切り替えるという方法で比較試聴した。
この方法では、(音質に影響する要素である)ケーブル・モニタースピーカー・内部クロックについては同じものを使うことになるため、純粋にDAコンバーター部分の音質を比較することができる。
結論からいうと、3曲で聴き比べたところ、どの曲でもFireface UCX IIが最も好印象だった。
1-1. Ariana Grande「positions」で比較
24bit/48kHzのハイレゾ音源で比較。UCX2>BFP FS>UCの順で良いと感じた。
UCX2は、
- ハイエンドの伸び
- 音の解像度(音の細部まで聴こえる感じ)
- 音のレンジ(帯域)の広さ/ハイファイさ
- 低域の押し出し感
- 低域の輪郭
といった要素で、他の2機種をかなり上回っているように感じた。
解像度に関しては、BFP FSもかなり良くて、UCX2と戦えるレベルだと感じる。しかし、低域の存在感はUCX2が上。
UCはさすがに10年前以上の機種だけあって、こういうハイファイなタイプの音楽で比較してしまうと、レンジ感や解像度で他の2機種には及ばないように感じた。
DAコンバーターの性能差が分かりやすく表れる結果になった。
1-2. Eric Clapton「Change the World」で比較
16bit/44.1kHzのCD音源で比較。これも同様に、UCX2>BFP FS>UCの順で良いと感じた。
まずド頭のキックを聴き比べると分かりやすい。低域の量感が、UCはだいぶ物足りない。UCX2は重心の低い音で、ずっしりと気持ちよく響いてくれる。BFP FSはUCX2ほどではないけど、なかなか良い。
サビ部分(0:59~)に入ると、UCX2の実力の高さが見えてくる。音のレンジ感・音場の広さが他の2機種を上回っている。同じ2mixなのに、ステレオ幅が広いような錯覚に陥ってしまう。
BFP FSもかなり肉薄している印象なのだが、positions同様、低域の量感でUCX2には及ばないと感じる。その結果、UCX2の方が「上から下まで出ている」ようなサウンドに聴こえる。
UCは音にエネルギーはあるんだけど、解像度やレンジ感で、UCX2には及ばないという感じ。BFP FSは解像度やレンジは広いんだけど、音のエネルギーでUCX2には及ばないという感じ。
トータルで見ると、UCX2が一番良いと思う。
1-3. King Gnu「白日」で比較
24bit/48kHzのハイレゾ音源で比較。
以前書いたBabyface Pro FSの記事でも取り上げた、King Gnuの「白日」で比較。この曲も、UCX2が一番良いかなと感じた。
以前、BFP FSとUCで比較したときは、UCのほうが音に迫力があって良いなと感じた。BFP FSの方が解像度は高いはずなのだが、少しエネルギーに欠ける感じがあった。音は良いけど、なんだか「電圧が低い感じ」というか(抽象的な表現ですみません)。
では、UCX2はどうかというと、解像度・音の迫力ともに申し分ない。BFP FSとUC、それぞれの持つウィークポイントをクリアしてきてくれている印象だ。
この「白日」という曲は、ロック系のサウンドで、中域成分が多い曲。そのため、他の2曲ほどはサウンド面での分かりやすい差は出て来づらいかもしれない。それでも、UCX IIが一番良い音で聴けそうだなと、率直に感じた。
1-4. 再生音質の比較テスト:まとめ
大まかにまとめると、
- UCX2:音の解像度・レンジ感ともにハイレベル。
- BFP FS:解像度もレンジ感も良い。音のエネルギー感(迫力/元気さ)があと一歩。
- UC:音のエネルギー感はあるけど、解像度やレンジ感が最近の機種に劣る。
という感じ。
音の迫力ではUC>BFP FSという傾向があることを考えると、AD/DAやクロックの性能だけでなく、電源設計等の部分も、意外と音への影響が大きいのかなと感じた。
2. 録音音質の比較テスト
録音音質の比較テストでは、特にデジタル端子等を活用することなく、シンプルにUSBケーブルでPCに接続されたUCとUCXでそれぞれ録音を行う。
ここでは、実際に録音したデモ音源を交えて意見を述べてみたい。
※音源はすべて320kbpsのmp3となっている。
2-1. ベースで比較
外部マイクプリアンプで録音
「ベース→マイクプリ(DIイン)→オーディオインターフェイス」というルーティングで録音して比較してみる。録音した各々の素材には、コンプを掛けた後、EQで2.1kHzを3.0dBだけカットしている。
UCで録音した音源。
UCX2で録音した音源。
UCX2のほうが、楽器の持つ低域の太さを、残さずにキャプチャーできていると感じる。比較すると、UCの方は腰高に聴こえてしまう。いずれのトラックも低域へのEQ処理はしていないが、UCX2のほうは、超低域をわずかにブーストしたのかと錯覚する程度の差はある。
オーディオインターフェイス直結で録音
今度はオーディオインターフェイス内蔵のDI&プリを使って、ベースを録音してみる。外部機器がないぶん、純粋なオーディオインターフェイスの性能差が分かるかもしれない。
エフェクトは外部マイクプリアンプで録音したときと同じ。
UCで録音した音源。
UCX2で録音した音源。
低域の傾向については、マイクプリアンプを挟んだときの録音と一緒。UCX2の方が、低域が太く録れていることが分かる。
ハイミッドのピーキーな帯域については、UCの方は痛い成分が少しある。UCX2のほうが綺麗に録音できているかもしれない。
2-2. アコースティックギターで比較
外部マイクプリアンプで録音
「アコギ→マイク→マイクプリ→オーディオインターフェイス」というルーティングで録音して比較してみる。録り音へのエフェクトはコンプのみ。EQはしていない。
UCで録音した音源。
UCX2で録音した音源。
UCX2の方がバランスの良い音で録音できていると感じる。低域はタイトに太く引き締まっている。ミッド~ハイのバランスも良好。
UCの方はUCX2と比較すると、低域が少しだけ不明瞭で、高域のピークが少し痛く感じる。こうして比較してみると、UCの方は思った以上に、シャリシャリ成分が目立って聴こえてしまうなぁと感じた。
アコギを録音する際、UCを使っていた頃は、ハイミッドの痛い成分がミックス時に邪魔になることも多かった。UCX2では、EQでのカット処理を最小限に抑えられるかもしれない。
インターフェイス内蔵のマイクプリアンプで録音
オーディオインターフェイス内蔵のマイクプリアンプで録音して比較してみる。こちらもエフェクトはコンプのみ。
UCで録音した音源。
UCX2で録音した音源。
UCX2のほうが低域の太さ・解像度・帯域バランスに優れていると感じる。これまでのテストと同様の傾向だが、こうして比較すると、UCはどうしても低域の厚みが物足りなく感じる。
比較をしていて思ったが、やはり内蔵のマイクプリアンプだと、どうしても音が味気なくなってしまう。オーディオインターフェイスの差よりも、外部マイクプリアンプの有無のほうが影響力が大きいなと感じた。
※マイクプリアンプについては別の記事でも語っているので、興味のある方はどうぞ。外部マイクプリアンプ導入のススメ。Neveとともに高品質な録音を目指そう:おすすめ製品も6つ紹介
2-3. エレキギターで比較
エレキギター→アンプシミュレーター→オーディオインターフェイスというルーティングで録音している。エフェクトはコンプのみでEQは無し。
UCで録音した音源。
UCX2で録音した音源。
UCX2の方が、やはり低域が太くバランスの良い音で録音されている。重心が低い音という感じ(大きな差ではないけど)。
UCは強くピッキングしたときのハイミッドのピークが、少しだけ気になってしまう。また、低域の量感もUCX2に劣る。EQは掛けていないが、UCはまるでEQで少しだけローを削ったような感じがしてきてしまうほど。
2-4. 2mixのライン録音で比較
ハードウェアのEQに2mixを通す形で、AD/DAの性能を比較している。
「2mix→UC→ハードウェアEQ→UC」と録音した音源。
「2mix→UCX2→ハードウェアEQ→UCX2」と録音した音源。
一聴してハッキリ分かるほどの差はないかもしれないが、UCX2のほうが、
- ローエンドまでしっかりと出ていて
- レンジが広く
- 音に迫力がある
という傾向がある。低域の存在感の違いというのが、最も分かりやすい差だろうか。全体的にUCX2の方がクオリティが高いと感じる。
※慣れればブラインドテストでも十分判別可能です。
2-5. 録音音質の比較テスト:まとめ
録音音質の比較テストを総括する。UCX2はUCと比べて、
- ローエンドまで太く録音される
- 低域の輪郭がはっきりしている
- 帯域バランスが良い
こういった特徴があるように感じた。