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SMAP「gift」のコード進行を徹底分析。フュージョン的な浮遊感が気持ちいい一曲です

SMAP「gift」のコード進行を分析してみる。この曲は、SMAPの20thアルバム「GIFT of SMAP」のリードトラックだ。フュージョン的なコード進行の、オシャレでスタイリッシュな曲になっている。

作曲は菅野よう子氏。編曲はCHOKKAKU氏。両氏ともに、日本の音楽シーンを牽引してきた巨匠だ。彼らの手がけた作品らしい、レベルの高い楽曲になっているので要チェックだ。

  • コードは耳コピで採譜しています

コード進行

イントロ(Key = Db)

| EM7(9,+11) DM7(13) DbM7(9) |  |  |  |
| GbM7(9)/Ab |  | EbM7(9)/F |  |
| GbM7(9)/Ab |  | EbM7(9)/F |  |

(Degrees) 
| IIIbM7 IIbM7 IM7 |  |  |  |
| IVM7 on V |  | IIM7 on III |  |
| IVM7 on V |  | IIM7 on III |  |

まず最初の4小節を見てみる。ディグリーで考えると、「IIIbM7 → IIbM7 → IM7」。非ダイアトニックコードを経由しながらトニックに向けて着地していくような流れになっている。

付加されているテンションの数も多く、フュージョン的なサウンドを演出するのに一役買っている。特にド頭のEM7(9,+11)は、かなりジャジーというか、アッパーストラクチャー感があるコードではないだろうか。

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なお、最初の4小節ののコード進行については、似たものがBメロでも登場することになる。

後半の4小節では、「IVM7 on V」タイプのコードが出てくる。このコードは、役割的にはドミナントの代理コードだ。普通のV7と比べて、浮遊感があるサウンドが特徴。フュージョン系の楽曲では特によく出てくる。

この浮遊感のあるコードを平行移動させる形で、「GbM7(9)/Ab」と「EbM7(9)/F」の間を行き交うような展開になっている。この「平行移動の感じ」がフュージョンっぽい。

Aメロ(Key = Bb)

| BbM7(9) | Bbm7/Eb | AbM7(9) | Cm7/F |
| BbM7(9) | Bbm7/Eb | AbM7(9) | Cm7/F |

(Degrees)
| IM7 | Im7 on IV | VIIbM7 | IIm7 on V |
| IM7 | Im7 on IV | VIIbM7 | IIm7 on V |

AメロもM7のコードが多く登場し、オシャレな響きになっている。注目すべきは2~3小節目。いずれも非ダイアトニックコードで、部分転調感がある。

2小節目の「Bbm7/Eb」は、3小節目のAbM7(9)に対するドミナント的な役割になっている。ディグリーで考えると「Im7 on IV」。これは比較的珍しいコードかもしれない。

4小節目はCm7/F(IIm7 on V)。ドミナントの役割を果たすコードなので、その後のトニックに向けて、自然に解決していく流れができている。

「浮遊感がありつつも、きちんと落ち着いたところに戻ってくる」。Aメロのコード進行は、ひとことで言うとこんなところだ。

Bメロ(Key = Bb)

| BbM7(9) AbM7 GM7 |  | EbM7 | Ebm7 |
| Bb/F | F#aug | Gm | Cm7/F |

(Degrees)
| IM7 VIIbM7 VIM7 |  | IVM7 | IVm7 |
| I on V | V#aug | VIm | IIm7 on V |

注目すべきは、はじめに出てくるM7コードの3連発。この曲の中でも、特に特徴的な部分だ。

ディグリーで考えると、「IM7 → VIIbM7 → VIM7」となっている。度数は違えど、イントロのコード進行と流れは全く一緒。※イントロ始めのコード進行は、Bメロから持ってきたことが分かる。

VIM7は珍しいコードだが、理論的には、「ピカルディの三度」と解釈できる。

※VImのマイナーコードが、メジャーコードに変化したもの。

なお、実はこの進行、前回の記事で紹介した「射手座☆午後九時Don't be late」という曲でも出てくる。作曲者は同じ菅野よう子氏。もしかすると、「菅野よう子の必殺技」的な進行なのかもしれない。

その後の部分は比較的ノーマルな進行だが、5小節目以降が上昇系のクリシェになっているのがポイント。「Bb → Bbaug → Bb6……」という一般的な上昇系クリシェについて、変化する音をルートに持ってきたような形になっている。さりげなくこういった進行を挟んでくるのがハイセンスだ。

サビ(Key = Db)

| Ebm7 | Ebm7/Ab | DbM7(9) | Bbm7 |
| Ebm7(9) | Ebm7/Ab | DbM7(9) Cb6-5 Bb7-9 | Bb7 |
| Ebm7 | Ab/Gb | Fm7 | Bbm7 |
| Ebm7(9) | Ebm7/Ab | Cb6(9)omit3 Db |   |

(Degrees)(簡略化)
| IIm7 | V7 | IM7 | VIm7 |
| IIm7 | V7 | IM7 VIIb | V7 |
| IIm7 | V7 | IIIm7 | VIm7 |
| IIm7 | V7 | VIIb | I |

サビではKey = Dbに転調する(短3度上への転調)。転調する瞬間のコードの流れは「Cm7/F → Ebm7」となっているので、自然につながっている。

※Ebm7はGbM7の代理コードであり、GbM7はBbmと音型が近いコード。ゆえに、「Cm7/F → Bbm」という一般的なドミナントモーションと同じ感覚で聴ける。

サビのコード進行は、2-5-3-6のいわゆる「王道進行」の別バージョンがベースになっている。ただ、IIIm7のところを同じトニックであるIM7に変えたり、ふた回し目ではドミナントを「Ab/Gb」のようにオンコード化したりと、丁寧にリハーモナイズが行われている。

最後の「Cb6(9)omit3 → Db」が良い。あえてVIIbのコードを挟んで、変化をつけるという終わり方が実にキャッチーだ。

Dメロ(Key = Db)

| GbM7(9) |   | Db/F |  |
| Eb7sus4 | Eb7 | Ebm7/Ab |  |
| GbM7(9) |  | Db/F |  |
| Eb7sus4 | Eb7 | Ebm7/Ab |  |
| Em7/A |  |

Dメロには特に変わったコード進行はない。セクションの終わりでは「IIm7 on V」型のコードを平行移動させることで、次のラストサビで半音上に転調させるため仕掛けを作っている。

エンディング(Key = D)

| GM7(9)/A |  | EM7(9)/F# |  |
| GM7(9)/A |  | BbM7(9)/C |  |
| FM7(9,+11) EbM7(13) DM7(9) |

(Degrees)
| IVM7 on V |  | IIM7 on III |  |
| IVM7 on V |  | VIbM7 on VIIb |  |
| IIIbM7 IIbM7 IM7 |

エンディングのコード進行は、基本的にはイントロと同じもの。ただし、キーが半音上がって、Key = Dになっている。

このセクションで見事なのが、7~8小節目の部分。「IVM7 on V」の平行移動で展開を作っているのはイントロと一緒だが、イントロと同じように下降するかと思いきや、逆に上昇するような展開になっている。

そうしてたどり着いたコードが、「BbM7(9)/C」。このコードが挟まれるおかげで、次の「M7コード3連発」の始めの、「FM7(9,+11)」というコードに自然につながるようになっている。

曲の最後は、イントロの最初でも出てきた「M7コード3連発」。この曲のキーポイントでもある進行が、ラストでも登場する。冒頭のアイコンが最後に形を変えて登場するというのは、なかなか熱い展開といえるだろう。



まとめ

この曲のポイントをまとめてみる。

  • フュージョンを感じさせるような、曲全体のコード進行
  • 「菅野よう子印(?)」な「M7コード3連発」。
  • 曲のアイコンでもある「M7コード3連発」を、巧みにフィーチャーしたアレンジ(イントロ頭&エンディング終わり)
  • イントロ&エンディングで登場する、「IVM7on V」の平行移動の浮遊感

こんなところだろうか。分かりやすいポップさと、玄人好みな要素。これらをバランスよく両立させた、良質な一曲だといえる。

SMAP 25 YEARS/SMAP