目次
RME Babyface Pro FSの良いところ6つ
1. RMEのフラッグシップ製品並みの高音質
RME Babyface Pro FSはとても高音質なオーディオインターフェイスだ。位相の整った正確な低域。にじみの少ないクリアな高域。バランスの良い再生音からは、どこまでもクリアなみずみずしさを感じる。
搭載されているコンバーターの仕様から予想するに、おそらく同社のフラッグシップ機のひとつ、Fireface UFX IIに比肩するレベルの高音質が実現されていると考えられる。※詳細は後述する。
2. 次世代クロック「Steady Clock FS」を搭載
クロック信号は、デジタルオーディオを取り扱う上で、音質に関わる大切な要素の一つ。従来のRME製品には、長らく「Steady Clock」が採用されてきた。
一方で、当製品にはその進化版である「Steady Clock FS」が搭載された。クロックに世代交代が発生し、その新しい世代の最初のモデルのひとつが、このBabyface Pro FSなのだ。今後発売されていくRME製品においても、このSteady Clock FSが搭載されていくことは確実。
オーディオ機器の進化の歴史を考えると、今の段階で当製品を導入するのは、タイミング的にも良い選択だといえるだろう。
3. ADAT端子による拡張性
Babyface Pro FSにはADAT端子が付いているので、アナログ入出力を簡単に拡張することができる。例えば、 Behringer ADA8200 等を使えば、ローコストで入出力数を増やすことができる。
あるいは、仮に将来、Babyface Pro FSの音質を上回るような、それこそ1台数十万円もするような、マスタリンググレードの高級コンバーターが欲しくなったとしよう。そんな時でも、当製品を活用し続けることはできる。
例えばLynx Studio Technology Hilo TB3 が欲しくなった場合。HiloにはADAT端子が付いている。光デジタルケーブルでBabyface Pro FSのADAT端子と、HaloのADAT端子を相互接続すれば、
- Babyface Pro FS:コンピューターに音声を出し入れする役割
- Hilo:アナログ/デジタルの音声変換の役割
と役割分担が可能になる。これにより、
- Babyface Pro FSの「動作の安定性」&「上質なクロック」
- Hiloの「超高音質なAD/DAコンバート性能」
の両方を得られる。こんな風にして、欲張りなセッティングをすることも可能だ。
4. 本体のボリュームをモニターコントローラーとして使える
Babyface Pro FSでは、本体のホイール(真ん中の大きなダイヤル)をボリュームの調整に使用することができる。仮にモニターコントローラーを所有していなかったとしても、スピーカーの音量を自由に調整することが可能。
※とはいえモニターコントローラーの紹介記事で書いたように、僕は精神衛生上、アナログでボリュームを調整するためにモニターコントローラーを使っているが。
DAW作業に必須!おすすめのモニターコントローラーを8つ紹介【DTM】
5. TotalMix FXが使える
RMEのインターフェイスを使っている人にはおなじみの機能、TotalMix FX。Babyface Pro FSにも、もちろん搭載されている。他社の製品のそれを大きく上回る、圧倒的に自由度の高いミキサーソフトだ。
※TotalMix FXについては、別の記事で詳しく紹介している。
RME TotalMix FXの使い方を、5つの具体例を挙げつつ解説してみる
6. DIGICheckが使える
DIGICheckも、RMEのインターフェイスを使っている人にはおなじみの機能。音楽を聴きながらRMSメーターを確認し、おおよその音圧レベルをチェックするようなこも可能だ。
RME Babyface Pro FSの注意点
アナログ入出力数は少なめ
Babyface Pro FSに搭載されているアナログ端子は少なめ。入力端子が4つ、出力端子が2つだけだ。ハードシンセを複数使っていたり、アウトボードのエフェクターを使う人にとっては、入出力数の不足を感じるだろう。
他機種との音質比較
RME Babyface Pro FSの再生音質について、他機種と比較したときの感想を書いてみる。なお当然のことながら、比較に際して、オーディオインターフェイス以外の製品(モニタースピーカー・モニターコントローラー・ケーブル)は同じものを使っている。
vs. Focusrite Scarlett 6i6
Donald Fagen「I.G.Y.」で比較
Donald Fagen「I.G.Y.」を聴いてみた。今までのScarlett 6i6が割と柔らかめの音質だったということもあって、再生ボタンを押した瞬間は、Babyface Pro FSの出音は若干固めに感じた。
だけど1曲聴き終わる頃には、ああこれは慣れ親しんだRMEサウンドだな、と感じるようになった。それにしても音のクオリティが高い。まさに「クロックの整った、解像度の高い、正確でクリアな音」という感じ。
ボヤけていた焦点が、一気にピントが合うような感覚。FS(フェムトセカンド)の二つ名は伊達じゃないなと思った。Scarlett 6i6と比べると、根本的な出音のクオリティはBabyface Pro FSの方が断然上だと感じた。
嵐「SHOW TIME」で比較
サビ部分(0:40~)を試聴比較してみた。
このくらいロー感のある曲だと、もうクオリティの差は歴然としているなと思った。Babyface Pro FSの圧勝。低域の輪郭や押し出し感、音の位相が揃った感じがハッキリしていて、ステレオイメージの中で、すべてのパートが美しく整列している印象。
改めて聴き比べてみると、Scarlett 6i6は音の太さ・解像度・位相感という多くの要素で、Babyface Pro FSには勝てないなと思った。
※Scarlett 6i6についての詳細はレビュー記事にて。
【レビュー】Focusrite Scarlett 6i6 G2は安いのに高音質。コスパの高いオーディオインターフェイスです
vs. RME Fireface UC
FF13-2「ネオ・ボーダム」で比較
同じRME製品ということもあり、音の傾向は同じ。どちらもRME的というか、クリアで硬質な音質。ただし、じっくり細部を聴き比べると違いが見えてくる。
まず低域。Babyface Pro FSの方が、低域の押し出し感が強い。「輪郭がはっきりとしたキックの低域」がキチンと聴こえてくる。これと比較すると、Fireface UCの低域は、ややピントが甘い感じがある。
そして中高域。比較してみると、Fireface UCのほうが1kHz~2kHz前後に「コー」という感じのピーク感があると分かる。「音の分かかりやすさ」を演出する帯域でもあるので、一概に良し悪しの問題とすることはできないが、Babyface Pro FSはこのピーク感が無くて、自然にフラットに高域まで伸びていく印象。
8kHz以上の成分はほぼ互角だけど、前述のピークの印象があるためか、Babyface Pro FSの方がスムーズな気もする。
総合評価をすると、Babyface Pro FSの方が良い音だという印象。
King Gnu「白日」で比較
続いてKing Gnuの「白日」を聴き比べ。意外にも、Fireface UCの方が好印象。
ハイミッドの帯域がきちんと聴こえる分、ロックっぽい暴れる感じが伝わってきて良い。比較すると、Babyface Pro FSは少し大人しい音に聞こえてしまった。
コンバーターは好みの部分も影響して来るのかもしれない。Fireface UCはBabyface Pro FSよりも10年以上前の製品なのに、こうして割と戦えているというのは、さすがRME製品だなと思った。
その他覚え書き
出力レベルについて
Babyface Pro FSの出力レベルは、「+19dBu or +4dBu」のいずれかから、選ぶことができる。
本体の背面には新たに+19 / +4 dBuスイッチが搭載
キャリブレーションができないモニターコントローラーを使うときなどは、インターフェイスのデジタルボリュームを絞って対応することもある。なので個人的には少し気にしているポイントなのだが、十分高出力といえるような、+19dBuでの出力が可能。
というわけで、次の記事で紹介しているような、Audient NERO等のモニターコントローラーでも、問題なく使うことが可能だ。
【レビュー】Audient NEROは新時代の定番を予感させる高品質なモニターコントローラー。値段以上の音質を届けてくれる名機です
RME Babyface Pro FSが高音質であることを示すデータ
Babyface Pro FSが高音質なのには、2つの理由がある。
- 次世代のクロック(Steady Clock FS)を搭載しているから
- 良質なAD/DAコンバーターを搭載しているから
クロックについては前述の通り。新世代のクロックを搭載しているため、純粋に音が良いというシンプルな理屈だ。
さて、ここでは実際のAD/DA性能について見ていきたい。音質を測る上で重要なのが、AD/DAコンバートの性能だ。コンバーターの性能に関してはRMEの公式サイトに掲載されているので、その情報を元に比較表を作ってみた。
(参考)Babyface Pro FS - Synthax Japan Inc.
AD部分について。※音を録音する際に影響する部分だ。
製品 | S/N比 | THD+N |
---|---|---|
Babyface Pro FS(Input1/2) | 113.7 dB | -108 dB |
Fireface UFX II | 113 dB | -104 dB |
Fireface UCX | 111 dB | -98 dB |
DA部分について。※音を再生する際に影響する部分だ。
製品 | ダイナミックレンジ | THD+N |
---|---|---|
Babyface Pro FS | 115 dB | -102 dB |
Fireface UFX II | 115 dB | -104 dB |
Fireface UCX | 111 dB | -96 dB |
見慣れない用語を出してしまって恐縮だが、それぞれ次のような意味となっている。
- S/N比:シグナル/ノイズの比率。大きい方が優秀
- ダイナミックレンジ:音の大小の性能。大きいほうが優秀
- THD+N:「全高調波歪+ノイズ」の値。小さい方が優秀
こうして比較してみると、Babyface Pro FSは、同社のFireface UFX IIに匹敵する性能となっていることが分かる。ひと世代前のFireface UCXと比べると、そのことは明らかだ。
以前の記事でも書いたが、AD/DAコンバーターは半分はデジタル機材。テクノロジーの進化とともに高音質化が進む。なので、同価格帯の製品ならば、基本的に新しいモデルの方が音は良いことになる。
というわけで、今回紹介したBabyface Pro FSは、Fireafce UFX II並みに音が良いと考えて良さそうだ。入出力数が少ないとはいえ、この価格でかつてのフラッグシップ機並みの音質が手に入る、それもRME製品で……という現実に、つい隔世の感を覚えてしまう。